2009/11/22
街にはいわれがあります。いわれを知っていると、その街を見る目も違ったものになってきます。特にお寺は古くからそこに存在していることが多いから、お話を聞くだけでイメージが膨らみます。
名古屋市中村区の一角。下町です。十一面観音と書かれた赤いのぼりが並んでいます。お寺を訪ね、ご本尊のいわれをうかがいました。高さ8メートルという大変立派なご本尊でした。
中村観音は正式には「瑞龍山白王寺」といいます。訪ねたら、印刷物が用意されていました。ここに全文を書き写します。
「中村観音(瑞龍山白王寺)の現在のご本尊十一面観世音菩薩様は、無縁様のご供養と地域の発展の為に、その尊いご遺骨を練り固めて建立された、高さ八メートル重さ四千貫の観音様です。
昭和の始め、米野火葬場に放置されていた、無縁のご遺骨を供養する為と、地域の発展守護を願い(風水の青龍の方位にあります)初代住職鬼頭旦舟師が、フランス留学から帰った仏師花井探嶺氏を招いて、昭和四年に着工しました。
花井氏は毎朝水ごりを取られ、左手に念珠を右手にコテを持って精魂を傾けられ、慈悲深いご尊顔の包容力あふれる観音様として、昭和八年に完成いたしました。
ご本尊の前に安置してあります如意輪観世音菩薩様は、尾張徳川家の別荘(熱田神宮前のお浜ご殿)に祭られていたもので、当初のご本尊です。
境内にあります芸人塚は、松竹新喜劇の藤山寛美さんの発案によるもので、名古屋に在住した芸人さんの皆様の足跡を称える為に建てられました。『芸』の字は御園座の前社長谷川栄一氏の筆によります。
こうした由来によって、昔より習い事成就の観音様として、また思い事叶う不思議な観音様として、道行く人々の心の支えとなり、今も観音様のご体内に納骨される方が絶えません。」
遺骨を体内に納骨することを「骨仏(こつぼとけ)」といって、各地にそうしたお寺はいくつかあります。中村観音のご本尊様にも、いろいろな思いが込められていることと思います。
中村の地元に住むお年寄りに聞いたら、空襲で本堂は焼けてしまったが、十一面観音様と如意輪観音様は残ったとのこと。強い思いが災厄を跳ね返したのかもしれません。

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