ただ、ただ綴っていくだけ。波のように。

2008/7/14

スキムミルクのように微笑んで〜後編    

「行ってきます。」と
手を振るあなたの優しさに
糸を引っ掛けておいた
出張続きで新婚生活もままならず
もし遠い何処かで
甘い行動に走ろうとしたら
ピンピンと引けるから

呑み過ぎたバニラアイスなあなたが
隣の席の純日本風抹茶アイスを口説いて
混ざり合いそうになっても
1回くらいは許すよ
そんな窮屈な女ではないのよ

でも
あなたのその華奢な骨の隅々にまで
入り込んでいるわたしの存在には
まだ気づいていないでしょう

絶好調なあなたの知らないところで
お皿10枚ほど割っちゃったから
請求するね 後で
安いの選んで割っていたから 大丈夫
今度は言ってみようかな

今は引かない
もっと大事なとこで糸引っ張るから
痛いと思うけどその時は辛抱してね
それでも帰って来てくれたなら
いつも通りの笑顔で迎える
何もなかった振りさえできる





そう わたしは結婚して
いつのまにかウエハースになっていた
アイスの傍に寄り添い
静かにそっと適温を保つのが生きがいだった
あなたにも随分助けられた真夏
ヒンヤリして愛おしく頼もしくも思えた

やはりあなたがいないと駄目だということもわかった
本当はわたしが嫉妬深かったなんて予想外だった
冷静を装うことも大事なことだと知った
そんな時 
苦い珈琲に浸っていた過去も
役に立っているのかなと思えてくる

あなたには
ただお願いがある ひとつだけ
死ぬ間際に
俺は幸せだったよと言って欲しい
たったその一言で
365日は何とか生きられると思う

もっと生きたらごめん

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3

2007/3/30

とじて といて  

とじて
といて

忘れる為にとじて
許すように解いて

とじて
といて

目を閉じても
諭すように説かれて

とじて
といて
とじて
といて

心を閉じても
閉じて縫われた糸は
いつしか意思の浮力で
とかれて

とじて
といて

気付けば
何年も
そうやっているような気がする
繰り返しているだけなのは
何故

とじて
といて
とじて
といて


今朝は念入りに
髪を梳いて
出掛けていく

昨日までとじていた私が



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2007/2/9

遠回り  


グレープフルーツだって
蜜柑の皮を剥くように
剥いて
ガブリと食べたら
スキリとするのに
ふたつに割ってスプーンで
なぜだか少し焦りながら
の食べ方をするのが
不思議だ

あなたにだって
抱いてと言って
抱かれてしまえば
スキリとするのに
両手で丸めて
林檎の皮を剥くように
剥いて
切らすことのないように
少し焦りながら
そして わたしの身体中に
くるくる巻き付けてしまう抱かれ方
をするのが
不思議だ


大切なものほど
近くに置いておけば
安心していられるのに
わざわざ
10年先に飾ったりしてしまうのが
不思議だ

食べ終わったあとに
100%果汁絞り
一気に飲み干せる幸せ感じたいから?

あなたの中で
窒息死できるかも知れないから?

月とか星とか太陽とかの
確実な位置に
確実に存在していて欲しいから?

それっぽっちのおまけの為に
わたしは
回りくどく
生きてしまう



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2006/11/30

雨の夜のセレナーデ  


力強い旋律で 窓を叩く雨音も
気にならない夜は
繋がる二人の感情だけを ただ感じ
暗闇の中でも
怖くはないと 思った

永遠じゃないから
今を大事にする
未来なんて約束できないよ
そうつぶやく
あなたの顔が 窓ガラスに映し出される

握り締めている手を
ゆっくり 開いてみると
雨が止むよ
いつもそう言ってた あなたが
すぐ隣にいるように思えてくる

決まりをつくらない あなたと
今夜の雨は
何処か似ていて
止まないで と願えば
また 強い雨音聴かせてくれる

わたしはあなたの何?
と尋ねると
迷路だとか 背骨だとか
訳のわからない言葉 並べるから
もっと好きになる

この雨脚が ひどく新鮮に感じた夜は
そう
永遠なんていらない
約束なんてしない未来がいい
ひとり静かに思う

雨の夜のセレナーデ



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2006/11/13

子宮t u n a g a r i  

母性の香りのする女だと君が言った
目を閉じていても
吸い寄せられて口が求める
乳飲み子の勘みたいなものが
無意識に作動するのだと言う

わたしが甘えたいがゆえに
あなたが甘えられる環境を
わたしがつくっていたなんて
一人笑い

母乳は
乳飲み子の嗜好に合わせて
作られている味だから
大人のあなたには向かないのよと
甘えたがりのわたしが言っている

暫く続くおかしな会話のあと
真面目なトーク突然よこすね
そんな時わたしは甘えたいと
思ってみたりするのだけれど
それは無理だということは充分承知していて
ほんとはしっかりぬくもり欲しくて
言葉だけでは哀し過ぎると感じた瞬間
自分の弱さを感じ
切なくなる

そしてわたしは
爪を切ったり
前髪切ったり
さよなら言ったりして
まぎらわす

母乳など出るはずもないのに
胸が張っているような
不思議な感覚おぼえながら
皿をひたすら洗っている


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2006/11/12

チョコレート色のブルー  

は ちょうどいい
固めて携帯したいくらいだ

満ち足りて
また削られていく
そんな摂理が愛おしく

三日月のシッポに
close の札掛けて

ジャズが仕掛けたムードに
酔い潰れて眠るまで
あなた傍にいてくれるの?

こんな色を見つけた日は
眠ることさえ惜しいよで
時計の針を壊してしまおう

ただ
悪戯に


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2006/11/12

スキムミルクのように微笑んで  


手を振る
意識した優しさは塗りつぶして
ありのままのわたしが
ありったけに
手を振る

粉っぽくて 甘さが足りないくせに
芯の骨の太さに憧れて

吸われていくのを夢に見ていた
あなたの骨の隙間に 入り込みたいから
液体になったのに
どこから入り込んでいいのか
見つからない日々が続いた

タイミングが 掴めない

疲れて
わたしは 無糖珈琲に浸る
真っ暗で 苦かった
けれど少しだけ 大人になれたような気がしてくる

幸せそうな練乳は
日々 濃度を高めて
奇しくも自滅したという噂を聞いた
濃すぎてもいけないことを知る

わたしは少し 生き方を変えてみた
たやすい事ではなかったけれど
練乳のような真似だけは したくなかった

あなたから貰ったひとつの言葉を
ゆっくり 噛み締めるように 融けていった

たったひとつの言葉を生きがいにして
自分ひとりだけで 融けていく
そういう事を
365日、ゆっくり積み重ねることができるようになっていた

366日目
やっと逢えたというのに
あなたは
くしゃみをして骨折
「やっぱり、お前がいないと駄目なんだな。」

太いと思っていた あなたの骨に対する想いが
くつがえされたと同時に
その一言で
また365日生きられるとも思ったんだよ

その瞬間
本当に完全な液体となった
わたしは
一気に吸われるように骨の隙間に入り込んでゆく

ありのままのわたしが
ありったけの姿で
あなたの中に入る

手を振っていたのは
小さな固体の 自分自身にだったということに
ようやく気づいたのだった



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2006/11/11

ポジアンテ  

だから 目を閉じて

優しい音を入れて指先を広げる
心臓より高い位置に
伝わらせて下すには 背筋なんかは
すとろーのように伸ばさないといけない

するとパキパキと音がして
ポジアンテが身体のあちこちから
弾んで芽を出す
犬がワンワンと吠え出すから
シーっと言い聞かすと
そろそろと寝床に戻っていく

ポジアンテは ずんずん伸びて 伸びて
昨日までの私を覆う
心の中で凍っていた薔薇にも
こわばっていた唇にも
優しい蜜を落とす

とろけたアイスクリームの下敷きになっても
伸びて それでも伸びて
赤ピンク色した禁色のこすもす畑に
薔薇は季節はずれの舌を出しながら
ひょっこり顔を出す

エクスタシー似の鋭い素振りは見せているけど
無邪気で陽気なエネルギー連れて
おもむろにやってくる
ポジアンテ

pianoで弾いたら衝撃的なメロディー
一瞬の価値感が踊りだす白と黒の鍵盤は
極端なようだけれど境目は半音
美しくてたくましいところがいい
今から変わると思える瞬間だ

犬もよく眠っている
ポジアンテを枕にして



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2006/11/11

不思議な仕組み  

息をのむ
幻想かと疑うほどの

恥らうように
紅葉していた
見たこともない
色、色、色
森の奥で

一瞬の出来事
雨から雪に変わる場面は
スローモーション

そっと舞い散る雪
パウダーのように
ふわっと掛けられ
異次元の空間となる

妖しくて
泣きそうになるよ

温和な褐色の ブナやケヤキの葉
おしゃべりな赤色の モミジの葉
気ままで黄色の イチョウの葉も
魔法にかかったかのように

空から降りてきたものには
身をゆだね
雪の毛布に包まることを
心待ちにしていたかのように

森の気配が変わった

残された色艶やかな
グラデューションだけが
色褪せることなく
拡がっている
右に 左に

この瞬間に
わたしを連れて来てくれたのは
神様の意図的なもの
だと
思えてくる

幸せも不幸も
わたしに
何かを気付かせようとする
罠のようなトリック








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2006/11/11

モノ  


真空パックにして冷凍保存にしておいたの
そうすれば生きているって
でも、10年なんて無理でしょ?
「無理ではないけれど
確かに鮮度は落ちるね」
近所の八百屋のおばさんが言った
「わたしゃ、やったことないけどね」
そして言葉を付け加えた
「モノがモノだしね」

わたしが本当にそれをしそうだという心配からなのか
買い物をしている間中
後ろにくっ付いてきて
まだぼそぼそ話してくる

「せめて5年くらいにしといた方がいいんじゃないの?」
5年と10年とではそんなに違うのですか?
「もしもって場合の時さァ〜」
ふ〜ん
わたしはその後すぐに引っ越したのだった

2年が経った
わたしは冷凍保存にしていたことを
忘れた日など一度もなかった

3年が経ち
新しい食材をまとめ買いすることが多くなっていた
すると、時々アレは冷凍庫の奥の方に追いやられる
そんなことが続くと
いっそのこと処分してしまおうか
などと考えた日もあった

4年後
遊んでいる時だって
仕事をしている時だって
眠っている最中にだって
突然ひょっこり
その姿、形、感触、音などが現れること度々で
心地よさを感じる反面
かなり辛いなと思って
何度も挫折しそうになる
本当に生きているのか心配になると
夜も眠れなくなってきた

5年が過ぎ
あの八百屋のおばさんに無性に会いたくなり、出掛ける
「決心はついたかね?」
ねえ、おばさん
本当は経験あるんでしょ?
「わかってしまったんだね。
そうだよ。10年後に解凍して後悔したクチだからね」



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2006/11/11

イヴズ ストーリー  

あれは
幻のような物語だったと
独り言を言いながら
足早に駆け抜けていく うさぎが
時計を落とす


一方で
白雪姫を追いかけて
魔女が毒林檎を落としていく
ボロボロの服を着たシンデレラが
毒林檎拾い集めて せっせと磨いては
ねずみたちと祈っているよ
これを馬車に変えてくださいと


7人の小人たちは
アリスの落とした魔法の薬を 拾い集めて
身体中に振り掛け 王子となり
イルミネーションで飾られた街に くり出していく
魔女には気をつけるのよ
遠くから シャンパンに浮かんだ親指姫の声


ダンボの耳をして 
長靴を履いた猫が駆けつける
街角に落ちていた林檎の傍から拾ってきた
ガラスの靴に履き替え 踊りだす
お髭に生クリームついてますけどいいの?
飛ぶんだね


うさぎが落とした目覚まし時計で
起こされた白雪姫の


君がキャンドルの向こうで
笑う
イヴだけに見える物語と一緒に
閉じ込めた
R e a d O n l y M e m o r y


               
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2006/11/11

どうしよう  

恋と炭酸 シェイクして
ストローで吸ってみたけど
やっぱりだめだ

恋がひっかかって
吸えないよ

間違っても
ジューサーにはかけたくない

ヒトツブ ヒトツブ
ひっかかった恋を
華奢な白い皿の上に 拾う

まだ動いている
どうしよう
冷蔵庫はいっぱいだし
今は夏だから
傷んでしまうじゃない

悩んだあげく
小さなクーラーBOXに入れたけど

気になって眠れないから
傍に置いてみた

綺麗なビーズに似ていた
それは
大きさこそ違ったけれど

夢の中での
あたしの心の隙間に 
ちりばめられ
敷き詰められて

明日のあたしを作ってくれてる
と感じた時から

何故だか ぐっすり
眠れるようになったよ


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2006/11/11

穴  



つれない素振りを
わざとしてみたって
左肩の下あたりに
直径5センチくらいの
穴が開いてしまっていて
全部 お見通しというワケ

いつから穴が開いてしまったんだろう
わたしがあなたに心 奪われている
スキを狙って
巧妙な手口でヤラレタ
わたしは洗脳されたのです

いつしか 左の鎖骨付近が
プラスチックになっていたの
それから 熱をジワジワ感じて
慌てて鏡を見に行った

------穴だ

きっとアミノ酸か
何かが不足しているんだと
単純なわたしは そう思い
あなたに相談したとき
ニヤリと笑ったでしょ
心の中 全て 俺のものだと

このまま 少しずつ
プラスチック的な部分が増えていき
何十種類ものサプリなんてものでは
追いつかなくなり
最後には
跡形もなく消えちゃうのですか
わたし


俺の中で生きていれば よい
その言葉に
妙に納得している わたし
は あなたに洗脳されてしまった
ロボットなのです


助けて

  たすけて


  ス 
 ケ

       テ


自分の声で
目が覚めた

ちょうど
左胸の上で
犬がスヤスヤ眠っていた


ヤラレタ。

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2006/11/11

遭遇  



突然
森の隙間に落ちて
迷子になったの

萌黄色の中に
埋もれたあたしの心は
何故か麗らかで

目の前をさえぎる
一筋の光を掴み
ポケットへしまい込んだの

新緑の萌黄色が
川の水に流れ込み
もっと深く冷たい緑が生まれ
反射させ
空気を凛と澄み渡らせる

ここには時間というものがなく
あるのはただ
圧倒される存在感と
もしかしたら
生まれ変われるという希望

森閑の中
意識しながら息をする
緑色した気体が
あたしの血管を通って流れて
そのまま
スルスルと
要らないものだけが
指先からこぼれ
サギがシュッとくわえて飛んでいったよ



あたしは
時々ここに来ている
夢の中で
そして 深い眠りの中
さっきのサギに起こされて
目を覚ますの

夢と現実との境に
ポケットから出した光の線を張り
つま先でゆらゆらしながら
歩いているんだ
どちらに転んでも
後悔したくないと思いながらね

引きずっている荷物の中には
ちっぽけな夢が氾濫していて
時々もみくちゃにした夢の折鶴を
綺麗に開いては
飛行機にして飛ばしているけれど

本当に大きな夢は
平和という
漠然としたものなのかも知れないことを
夢というカプセルを使って
サギが伝えようとしているような
気がして


               

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2006/11/11

新しい星のもとで  

パイナップルの真ん中くり抜いて
あなた うずめた
キーウイの真ん中くり抜いて
あたし もぐり込んだ


少し経って
コルク抜かれるように飛び出す
あなた少しだけ黄色に染まって
あたし少しだけ緑色に染まって
手を繋ぐと
空気がはじけた


どうしようもないほどの
新鮮な酸素や水素が
生まれてきて
水星になりそうで


息を止める
苦しみとか哀しみとかは
ちっぽけで せっかちで
小さな気泡となり流れ出る


光もちくちく
射し込むものだから
涙の元素は
怯むように流れ落ちる





温め続けていた春が
パイナップルと
キーウイに開いた穴で
今は昼寝しているけれど


滑り降りてきたら
あちらこちらで
花が咲くよ


水星で
キスを重ねているうちの
あっという間に



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