「地検は、時効を完成させる手続きだけをやればいいのか」。98年冬、青森地検。検事正が弘前支部長の若手検事に問題提起した。
83年6月に青森県車力村(現つがる市車力町)で、お年寄りの女性(当時73歳)が殺害された。県警は3日後には、女性の養子で調理師の男(同42歳)を全国に指名手配した。しかし、男は事件直後JR青森駅で目撃されたのを最後に、時効半年前になっても足取りが途絶えていた。
検事は、男を所在不明のまま起訴し、時効の成立を阻止する秘策を検討した。刑事訴訟法254条は、公訴提起(起訴)で時効は停止すると定めている。しかし、起訴状が2カ月以内に被告に届かなければ、再び進行を始める。つまり、その間に逮捕できれば、時効の壁を突破できる。
起訴を繰り返して、時効を長期間停止させる捜査手法は、殺人ではほとんどないが、有罪に追い込む証拠が確実な脱税事件などでは、「逃げ得」を許さないために使う場合がある。前橋地検は99〓07年の8年間に、健康食品販売会社社長を約3億3000万円の法人税法違反(時効5年)の罪で43回も起訴。長崎地検佐世保支部も96〓01年の5年間に、元衆院議員秘書の女を公職選挙法違反(買収、時効3年)罪で27回起訴を繰り返し、いずれも最終的に容疑者を発見し逮捕にこぎ着けた。
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