山中正竹著「小さな大投手」-東京六大学48勝サウスポーの超野球論-(ベースボール・マガジン社新書)が11月に刊行された。本当は買う気はなかったが、知り合いが持っていたので購入した。山中さんへ失礼にならないように「はじめに」から「あとがき」まで全て読んだ。
読んだ感想としては、前半は山中氏が「あとがき」で「自伝的野球論」と述べているように、自身の自分史的要素の濃い内容となっている。
この著書全体の中心的叙述時期は、山中氏の学生時代の4年間と法政大学野球部監督時代の9年間の計13年間であったと思われるが、これは本のタイトル上致し方なかったのか?この著書ではあまり触れられていない山中氏の住友金属選手監督時代、ソウル五輪全日本コーチ時代、横浜ベイスターズフロント時代等も、詳しく述べて欲しかった。
著書の前半部分である山中氏の少年時代、高校時代は知らないし、大学時代も私は山中氏のプレーを観ていないので、この時代について詳細な書評は出来ない。しかし、著書全体を通して感じられるのが、山中氏は過去の自身の球歴に誇りをもっているということだ。
私は過去ブログで山中氏が非常にプライドの高い方である事を書いたことがあるが、この著書にそれが伺えるわけだ。
著書の内容については、大変共鳴出来る点や参考になったところも多くあった。が、しかし、法政大学野球部監督時代については、当時外から野球部を見てきた人間として、違和感を感じを得ないところもあった。
著書では山中氏が大学監督時代の教え子の名前何人かが出てくる。出てくる名前は現在プロ野球で活躍している選手(稲葉、安藤、廣瀬、G・G・佐藤等)、引退後フロントに残った選手(福山、福本、新里)、社会人野球で活躍している選手、高校野球の指導者になった者、その他一般社会で活躍している者等であり、概して言えば今現在社会で一定の成功をおさめている教え子たちだけを紹介しており、言葉は悪いが良いとこどりといった感が否めない。
山中氏が監督時代の前半期のエースであった矢野英司の名前が一箇所しか載っておらず(福山龍太郎の話のついで程度の扱い)、後半期のエースであった土居龍太郎の名前が全く載っていなかったのは驚きである。
山中氏は著書で法政監督時代の教え子は400人と書いているが、全員を書くことが不可能なことは理解出来る。が、しかし、今現在社会で成功している教え子たちだけを著書に並べることは、自身の教え子たちは、あたかも「全員社会で成功している」とも受け取れ、違和感を感じられずにいられない。また、そこが前述した山中氏のプライドの高さの著れなのかもしれないが。
400人もの教え子がいるのなら、今現在社会で苦労している者や悩んでいる者もいると思う。そんな教え子たちに今一度勇気を与えるような、励みになるような著書を書いていただきたかったと、外の人間の立場から思う感想だ。