2006/1/5
母の肖像しづかにかたし寒の入り
日脚伸ぶやや湿りたる手触りも
探梅や散骨するように来てしまい
金柑やうまれたような黄と緑
早春の廊下精霊とすれ違う
ことしまた形見のように梅が咲き
囀りやきれいに剥がす包装紙
さようならが自然に言えて春ショール
芽柳やうしろの正面誰かしら
踏青や足の裏の総合力
返信の茎立つよう無地便箋
廃屋は大地に生えて花大根
ベートーベンは掛けないでさくら散る
つばくろや北鎌倉を一列に
うぐいすや音なくすべる秒針の憂愁
痛む日はそっと遠くに卯の花が咲く
愛されてしまう結局湯剥きのとまと
行き暮れし女医のおもかげ蛍袋
笑みをたたえてアナーキーな山椒魚
気ままなる読書ノートは夜濯ぎなり
死なぬから服がいるという姉立葵
うつ伏せて髪の吹かるる合歓の花
三伏や万象じわり黄に染まり
夏鶯朝からずっと半旗上げ
梅雨明けて白い洋服直しおり
揚羽蝶地面に伏して非戦の夢
桃喰みて子宮はうすきひかりなり
ファスナーを閉め忘れてる星月夜
四つ割の梨剥く唇を拭くように
からすうりの花反戦歌呟いて
きょうだいはすぐ寄ってくる赤とんぼ
追悼の霧中を走る列車かな
秋雨や軒に流れる砂時計
昼の虫わたしを黄身にしてしまう
神無月野良猫(のら)の集まる夕まぐれ
作務僧の山水に溶け十一月
立冬や歌を忘れて竹林へ
葱きざむ時さびしい顔が寄ってくる
日は急に傾きやすきラグビー場
生牡蠣喰みて毛沢東がうずくまる
泣いた跡があるさくら照葉かな
笹鳴やいっしょに居たいときに居る
風花やみんなはじめて合同歌集
最後までお読み頂きありがとう。感想を頂けましたら、この上なくしあわせに存じます。

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2006/1/5


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