□映画「永遠の0」の「凛々しい」
太平洋戦争に零戦の特攻隊員として出撃した祖父・宮部久蔵。祖父を知る
かっての戦友たちの元を訪ねた孫の健太郎は「海軍一の臆病者」を呼ばれ
た祖父の真実を知るのだった...
百田尚樹のベストセラー小説を岡田准一、三浦春馬、井上真央の主演で
映画化した「永遠の0」。現在と過去を行き来する大部の原作を映画の尺
におさめた脚本、迫力のVFX、田中泯、山本學らのいぶし銀の演技...
見ごたえがあり、心を揺さぶられる映画でした。
そしてなんといっても岡田準一の凛々しいこと。家族のためになんとして
も生き延びることを願いながら還らぬ人となった名パイロットの魂がのり
うつったようでした。その姿をみるだけでも十二分の価値がありますね。
□小説「永遠の0」の「祖国と家族を守れるなら」
映画を見終わってすぐ原作(講談社文庫)を買って読みました。589ペー
ジの長編ですが、ほぼ一気に読み終わりました。
太平洋戦争のことを全く知らない若い読者を想定したのでしょうか?
単に宮部久蔵の思い出を語るというより、詳細な「太平洋戦史」の解説を
読んでいるようでした。
そしてその中から浮かびあがってくる祖父の生き様、特攻隊の真実は凄惨
の一言。生きて帰る可能性はない、「十死零生」の「特攻」。
「祖国と家族を守れるなら、その死は無意味ではない、そう信じて戦った。」
その言葉に涙せずにはいられませんでした。
□父と「特攻」
今年87歳になる私の父は旧制中学4年のとき学徒兵として出征。配属され
たのが海軍の「震洋」の部隊でした。
「震洋」はいってみれば爆弾を満載したモータボート。特攻のためにつく
られた兵器でした。長崎県大村湾での訓練を終えた父は中国の厦門に派遣
され「特攻」のときを待っていたそうです。敵艦に発見されれば終わりな
ので襲撃は当然夜。夜間の訓練を重ねたせいでやたらを目がギョロギョロ
して夜目がきくようになったといっていました。
父の「最初の特攻」は誤報で不発、二度目のまえに終戦を迎えました。
父は幸運でした。厦門ではなく、フィリピンに派遣された戦友たちは皆
潜水艦の攻撃で撃沈され還らぬ人となったのですから...
「永遠の0」が、多くの若者の目に触れることを強く願います。
※「おとゲー」2014/1/12号掲載

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