□「時をかける少女」1983
1983年、当時隆盛を誇っていた角川映画が薬師丸ひろ子に続くスターして
売り出したのが原田知世。ちょっと濃い目の薬師丸に対して、スッキリ系の
原田知世は好対照。薬師丸の「探偵物語」と同時上映された初主演映画「時
をかける少女」を大ヒット。私も友人と新宿まで見に行きました。
映画はいかにも大林宣彦監督らしい叙情的な映像が見事で、舞台となった
尾道の風景がすばらしかったのをよく覚えています。主題歌は松任谷由実作
の「時をかける少女」。薬師丸ほどの声ののびはないものの原田知世の歌声
は初々しくこちらも印象的でした。キャッチコピーの「いつも青春は時をか
ける」とともに長く記憶に残る佳作ですね。
□「時をかける少女」2006
時は流れ、23年後の新宿へ細田守監督のアニメ版「時をかける少女」を「エ
ヴァンゲリオン」の貞本義行氏のキャラクターにひかれ見にいきました。
21世紀の「時をかける少女」、紺野真琴はとにかく元気でボーイッシュな女
の子。常に走り回っていてまさに「いつも駆ける少女」。偶然身につけた
「タイムリープ(過去への時間跳躍)」の能力でちゃっかりプリンを妹より
先に食べたり、カラオケを何度も楽しんだり、しまいには後輩の恋までお手
伝いするおせっかいぶり。そのあげく、ボロがでたのを修復しようとタイム
リープをさらに繰り返すはめに...
この真琴のハチャメチャ・ドタバタぶり実にテンポがよく涙を出るほど笑っ
てしまいました。絶妙のセリフ回し、キャラクターの動きを支える背景、特
に真琴が通う下町の高校の描写が圧巻。実写をはるかにしのぐリアルさをみ
せてくれます。そしてドタバタの末に訪れる予想外の展開と哀しみ。いつの
まにか真琴と全く同じ目線で高校2年の夏を体験している自分に気づきまし
た。それはまさに「過去も未来も星座も越える」ような感覚でした。
本当に良い映画は「いつだって時をこえる」、そう確信した、たぶんこの夏
で最も幸福なひと時でした。
※「おとゲー」2006/8/4号掲載

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