□平野啓一郎の「スロー・リーディング」
「日々発行される本を次々と読みこなし、必要な情報、知識をを効果的に身
につけたい...」このご時勢、学生、社会人を問わず多くの人がそんな風
に思っているのではないでしょうか?実際、本以外にも新聞、雑誌、メール
にブログ、と「読み物」は膨大、ほとんど無限ですからねぇ。
そんな「速読重視」に「10冊を闇雲に読むよりも、1冊を丹念に読みこむ方が
人生にとってはるかに有益」と異論を唱えるのが芥川賞作家、平野啓一郎氏
の「本の読み方 スロー・リーディングの実践」(PHP新書)。
「量の読書から質の読書へ」、「書き手は、スロー・リーディングを前提に
書いている」、「読書は作者という名の他者と向かいあうこと」...その
主張は流麗な筆致とあいまって共感せずにはいられませんでした。
□「スロー・ゲーミング」の勧め:ウロウロする
平野氏が書いているように、「小説の利点は、読むペースを自分で調節でき、
一時停止や巻き戻しが自在なこと」。これは作り手の設定した時間で鑑賞す
る映画、舞台、アニメなどと大きく異なるところでしょう。ゲーム(ここで
いうゲームはストーリーがあり、自由な移動ができるRPGやアクションアド
ベンチャーに限定)の場合ちょっと巻き戻しはシンドイですが、ムービー場
面でなければ自分のペースで進めたり、立ち止まったりできます。
RPGではストーリーを進めたり、謎解きのヒントを得るために町や村の人々
と「会話」するのが必須ですが、そんなことに関係なく漠然とウロウロする
のが私は好きです。お気に入りの場所で夕日をながめたり、エポナ(「時の
オカリナ」に登場する名馬)にのってわけもなく疾走したり、民家に侵入?
しておじさんの自慢話をきいたり...
私にとって良いゲームは、製作者の愛情が「ゲーム世界」の隅々まで行き渡
り、ウロウロしながらその世界にどっぷりとつかれるゲーム。なので必然的
に「スロー・ゲーミング」になってしまいます。でもそれこそがゲームを
理解し、堪能する最良の方法だと思うのです。
(後編へ続く)
※「おとゲー」2006/9/8号掲載

0