□想像を絶する「教室の悪魔」
昨年、頻発した「いじめ」に対して「辛かったらすぐに逃げろ」といった
趣旨の文章を書きましたが(本誌2006/11/24号)、「教室の悪魔 見えない
『いじめ』を解決するために」(山脇 由貴子著、ポプラ社刊)を読んで、
私の考えは全く甘かったことを思い知らされました。
作者の描写する「今のいじめ」は、ただ一人をターゲットして徹底的にいた
ぶる疫病のような陰惨なものでした。ターゲットになった被害者は、無視さ
れ、いたぶられ、精神を破壊され、それこそ「死んだほうが楽」な状態まで
追い込まれる。いじめに加担しなければ今度は自分がターゲットになってし
まう。例えは悪いですが、まるで子供たちがゾンビか吸血鬼になってしまっ
たような錯覚を覚えました。
□凄惨な「オンとオフ」の拷問
その手口も巧妙。教師や大人の見ているところでは決して尻尾をださない。
親は教師に言えばもっとひどい目にあう、学校を休めばさらにいじめはエ
スカレートする。その恐怖からいじめられる子供自体がいじめを必死で隠
すので「完全犯罪」がやすやすと成立してしまう。
吐き気をもよおすような「実例」が続くなかで、最も凄惨なのが「オンと
オフ」の話。
毎日続いていたのが、ある日急に止む。突然みんなが自分に優しく声をか
ける。いじめは終わったんだ、とホッとした次の日、以前よりひどいいじ
めが再開し絶望の深淵へつきおとされる...極悪な心理的な拷問の手口
です。読み終わったとき目の前が暗くなりました。
□逃げなさい、逃がしなさい
親にもいえない、学校も休めない。こんないじめはそれこそ悪質の伝染病と
同じで我慢したり、抵抗したりするようなものではないです。一刻も早くそ
の場から逃げなくてはいけないし、親はわが子を逃がさなくてはいけません。
著者はいじめの事実はいじめられる被害者にしかわからない、いじめられる
側に原因なんてない、だから親は何よりも子供の様子を丁寧にみて、いった
んいじめに気がついたら子供を100%信じて直ちに家庭に保護しなくてなら
ない、と説きます。
巻末にある「いじめに気づくチェックリスト」の一例をあげると
・最近、よくものをなくすようになった
・学校のノートや教科書をみせたがらない
・話題に友達の名前がでてこない
・体をみせたがらない
思春期の子供にはよくあるような状態なのですが、私も二人の娘の親として
目をよく見開いておこうと思います。そして「いじめ」というこのとてつも
ない「疫病」が少しでも減るよう声を上げ続けていくつもりです。
※「おとゲー」2007/2/16号掲載

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