※以下の内容は例のごとく、ネタばれありありです。これから
「宇宙兄弟」を見る方、読む方は、ご注意を!
■映画「宇宙兄弟」の「笑顔」
幼いころ「2人でいっしょに宇宙飛行士になろう」と約束したムッタとヒ
ビトの兄弟。19年後、ヒビトは宇宙飛行士になり月に旅だとうとしていた。
一度は夢をあきらめたムッタも弟に背中を押され、再び走りだす...
小山宙哉原作のコミックをムッタ=小栗旬、ヒビト=岡田将生で映画化。
スケールが大きい原作を2時間の尺に入れ込むのはたいへんだったでしょう
が、兄弟の思い、宇宙へのあこがれがしっかりつめこまれていました。
特に印象に残るのが、岡田将生のくったくのない笑顔。月に旅立つ直前、
見送りにきたムッタに「ムっちゃんはいかねーの?」と二ヤリと笑いかけ
るシーンで思わずニンマリしてしましました。
「天然コケッコー」以来、この端正な顔立ちの俳優に注目してきました。
「告白」「悪人」「プリンセストヨトミ」...なかでも「重力ピエロ」
は主人公の危うい浮遊感を表現した彼の代表作ですね。
■「閉鎖環境訓練」の「過酷」
映画「宇宙兄弟」のみどころの一つが宇宙飛行士の候補生になったムッタ
が経験するすさまじい訓練の数々。知力、体力、精神力。同時に大量の情
報を処理し、どんなトラブルも克服する能力...毛利さん、向井さん、
野口さん、宇宙飛行士の皆さんはみな「スーパーマン」ですね。
映画のクライマックスになるのが「閉鎖環境訓練」。文字通り外部と隔絶
した狭い空間の中で、候補生(映画では6人)が共同生活をおくりながら
高難度の課題を次々に与えられる。しかも24時間の監視下で。
さらに過酷なのが「グリーンカード」。課題の進行を妨害する指示が極秘
で特定の候補生にだされる。指示を受けたことを口外すれば即失格。ただ
でさえ高いストレスに加えこの仕打ち。
候補生の中に疑心暗鬼が広がりチームワークが崩壊寸前に。その時、ムッ
タの暖かくて熱い思いが皆を動かしていきます。「オレたちはもっと宇宙
の話をしよう」、そう呼びかけたムッタは輝いてみえました。
■「子どものころからの」
映画を見たあと、原作のコミックを1巻から17巻までほぼ一気読みしまし
た。映画では2時間で「大団円」となるのですが、原作では候補生になっ
たムッタが宇宙飛行士になってさらにその先に進む道程が、月から帰還し
て「英雄」になったヒビトを襲う苦悩が克明に描かれていきます。
兄弟の夢を幼いころから応援してきた天文学者のシャロン、ムッタに空を
飛ぶ素晴らしさを教える飛行教官のデニール、障害を得たヒビトの復帰を
後押しするロシア人宇宙飛行士のイヴァン...「宇宙飛行士になって、
いっしょに月に立つ」、兄弟の遠大な夢を支え、応援していく人々とのか
かわりが素敵です。
小学6年生の時の文集。友人の一人は「内閣総理大臣」と書き、私はちょっ
と遠慮して「日本と海外の人を結ぶ外交官」と書きました。和菓子屋さん
になったその友人はすでに亡くなり、私も全く違う職業につきました。。
私が外交官になることはもうないでしょうが、それでも娘たちの「夢」を
これからも応援しながら自分の今の「夢」に向かって少しずつ進んでいき
たいと思っています。
※「おとゲー」2012/5/27号掲載

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