□ジブリの「次世代」
日本アニメ界の「巨人」宮崎駿。既存のアニメの枠を超えた
「ジブリ」という一つの「産業」を築いた功績の大きさは誰
もが認めるところでしょう。
しかし「巨人」が「引退」した今、それを継ぐ「次世代」の
苦悩もそれに比例して深く、大きいようです。
NHKのドキュメンタリー「宮崎駿の後を継ぐもの」は「次世代」
の筆頭といわれる宮崎吾郎と米林宏昌の二人の葛藤と苦闘が
克明が描かれていて感銘を受けました。
宮崎駿の実子ながら40歳前までアニメとは無縁だった宮崎吾郎。
初の監督作品「ゲド戦記」、第二作の「コクリコ坂から」の後、
「脱ジブリ」をかかげ手がけているのが3DCGのテレビアニメ
「山賊の娘ローニャ」。
そしてマロこと米林宏昌がジブリ伝統の手書きアニメに磨きを
かけ、挑んだのが公開中の「思い出のマーニー」。
□「思い出のマーニー」の「美景・美少女」
「崖の上のポニョ」の作画で宮崎駿をうならせ、「借りぐらし
のアリエッティ」の監督に抜擢された「アニメ職人」米林宏昌。
「思い出のマーニー」で誰もが目を奪われるのがその「美景」。
ヒロインの少女、杏奈が療養に訪れる湿地帯の湖の煌めきは実写
をはるかにしのぐ出来栄え。実写映画で数多くの実績をもつ
種田陽平を美術監督に迎えた効果がズバリ的中というところで
しょうか?
そして美少女。従来の宮崎駿作品のヒロインたちが凛々しくて
愛らしかったのに比べて杏奈もそしてマーニーも素晴らしく
美少女。小学生の女子にしては完成度高すぎですが、孤独な二人
の心の交流に思わず涙腺が緩くなりました。
とはいえ、原作は内面心理の描写に重点があり、宮崎駿自身も
「難しくてアニメ化できない」といっていた難易度。米林監督
の苦心が随所に感じられる「マーニー」でした。
□「巨人の背中」を仰ぎながら
「崖の上のポニョ」のころ、当時66歳だった宮崎駿は「出てく
る蛇口が細くなる、才能は日々磨耗していく。」と嘆きながらも
こう語りました。「名声はただの幻影。今、向き合っているこの
作品が全て。」そして「この1本で世の中を変えてやろうと思っ
てつくるのが映画作り」だと。
こんな「巨人」「天才」に「凡人」は追いつけない、かなわない。
ただ「巨人の背中」を仰ぎながら自分を信じて前に進むしかない。
米林監督もそれは十分わかっているようです。
「僕は宮崎さんのように、この映画一本で世界を変えようなん
て思ってはいません。ただ、『風立ちぬ』『かぐや姫の物語』
の両巨匠の後に、もう一度、子どものためのスタジオジブリ
作品を作りたい。」
子供たちのために、そしてかって子供だった大人たちのため
に素晴らし作品を産み出していってほしい。
「次世代」に拍手を!
※「おとゲー」2014/8/10号掲載

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