□ 「バケモノの子」の「三年周期」
2006年 時をかける少女
2009年 サマーウォーズ
2012年 おおかみこどもの雨と雪
そしてこの夏、「三年周期」の細田守監督の長編アニメ映画
「バケモノの子」が公開されました。
「おおかみこども」が「おおかみおとこ」の子どもを産んだ
「普通」の人間の母親が二人の「おおかみこども」を育てる
「子育て」の物語。
対して「バケモノの子」はその名のとおり、巨漢のバケモノ
「熊徹」が人間の少年「九太」を育て、そして育てられる
物語なのでした。
□ 「渋谷」と「裏・渋谷」
物語の舞台は現在、現実の渋谷。主人公の九太は交通事故で
母親を亡くし、行き場をなくして渋谷の街を彷徨ううちに知らず
入り込んだのがバケモノの街「渋天街」だった。。。
毎度のことながら細田映画の圧倒的な「美術力」には驚きのほか
ありません。無数の人混みも含め現実の渋谷の再現がお見事です。
私もちょくちょく渋谷にでかけますが、映画の中の渋谷の路地裏
はそのまま歩いて入っていけそうでした。
そして「裏渋谷」ともいうべき「渋天街」。「表」の渋谷の
雰囲気を濃厚に残しつつ、それでいて「バケモノ」の街、異世界
を感じさせる「美術力」。 熊徹の家は特に魅力的でみたとたん
「ここに住んでみたい」と一目ぼれするほど。
□ 「誇らしいのう」に「涙腺決壊」
親として子供を、師匠として弟子を育てることは同時に未熟な
自分を見つめなおし、育てられること。。。
9歳のちっぽけで生意気なガキだった九太が、熊徹やその仲間
百秋坊、多々良たちの不器用でそれでも思い切りの愛情で育ち
一人前になっていく姿に自分と自分の子供たちの姿を重ねた
お父さんは多かったでしょう。
重症を負った熊徹を百秋坊と多々良にたくして決戦の地へ一人
向かう成長した九太をみて百秋坊がこうつぶやく。
「誇らしいのう。」
もう、涙腺決壊です。そう、父親は誇らしいんです。半端もの
の自分が、たいしたこともできずオタオタしているうちに、
我が子が一人前になってくれて誇らしいんです。
そうして「ありがとう」とか言われたら泣くしかないんです。
細田監督、すばらしい作品をありがとう。日本にアニメ業界に
あなたがいてくれて「誇らしいのう」。
※「おとゲー」2015/7/26号掲載

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