□「この世界の片隅に」の「昭和20年8月」
昭和20年(1945年)、太平洋戦争の戦禍はその激しさを増し、
すずの暮らす軍港の街、広島の呉も連日のように空襲を受ける。
そして8月。すずは右手を失い、広島に原爆が投下された。。。
戦時下の広島、呉で暮らすすずと周囲の人々を描いたこうの史代
のコミック「この世界の片隅に」。
水くみ、洗濯、畑仕事といった日常生活のこまやかな描写が本当
にリアル、戦時下の広島にタイムスリップしてその暮らしぶりを
みているようでした。印象に残るのがすずの笑顔。電化製品に囲
まれた平成の時代からは考えられないような重労働をこなし、時
に好きな絵を描く、そんな笑顔も戦争が奪っていきます。
□「遊郭・二葉館」のテル
闇市からの帰り道、道に迷ったすずは、「遊郭・二葉館」の遊女
、リンと偶然知り合いになる。そして赤毛の遊女テルとも。。。
小学校には半年しか通えず、口減らしのために売られたリン。
スズが雪の上に描いた南の島の絵を喜んだ赤毛の遊女テルは、
心中未遂に巻き込まれたあげく肺炎でなくなる。すずの絵をみて
「よかねー」と九州弁で喜んでいた彼女たちの身の上を思うと切
なくなります。
そしてしっかりもので器量よしのすずの妹、すみ。女子挺身隊の
一員として陸軍の軍需工場で働いていた彼女は広島に投下された
原爆の二次被ばくで、原爆症を発症。。。
平成30年8月15日。73回目の終戦記念日。何年たどうが、直接
戦争を知る世代がいなくなろうが、その記憶を忘れてはいけな
ない、「この世界の片隅に」はそう語りかけているようです。
※「おとゲー」2018/8/12号掲載

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