時々しか行かない居酒屋があるのだがここの
女将さんは80を越したおばあちゃんで一人で
切り盛りしている。
この前行った時「あらっ、珍しいわね、先週
来たばかりなのに・・・」と言われ、来た記憶
がなかったから「そうだったかな?」と思いつつ
ビールを飲んでいると、僕の横に来てビールを
注ぎながら「ホントに久しぶりねぇ、二ヶ月
くらい来なかったんじゃない?」と言う。
「何言ってるの、さっきは先週来たばっかり
と言ってたじゃないですか」と言うと「あれ?
そんなこと言った?」なんて涼しい顔をしている。
もしかして認知症かも・・・と心配になってきた。
それからしばらくテレビを見ながら飲んでいると
「おつまみ何にする?}と聞くので「何がありま
すか?」と聞くと「何でもあるよ」と言うから
「アジの塩焼きください」と注文すると「ごめん、
今日アジ買うの忘れちゃった」と言うから
「じゃぁ、ヤッコください」と言うと「ごめん、
お豆腐売り切れてたの」という返事だった。
仕方ないから、すき焼きのお品書きが目に
はいったので「すき焼きでいいです」と言うと
「ごめん、今日いい肉がなかったのよ」と言われ
てしまった。 こうなると、もう何も食べなくても
いいや!!と思うが、そうはいかない。
「では、何が出来るの?」と聞いてみると
「何が食べたいの?」と逆に聞かれる始末だ。
だから〜食べたいものは今言ったでしょうが
と言いたかったが我慢して「野菜の煮物なんか
出来ないかな?」と言うと「茄子があるから茄子の
煮物を作るね」と言って厨房に戻って行った。
またテレビに視線をやって飲んでいた。テレビは
料理番組で美味しそうな刺身が映し出されゲストの
芸能人が満足そうに食べていた。
おばあちゃんも茄子を切る手を休めてはテレビを
見ていた。
しばらくして、おばあちゃんが「お待ちどうさま」
といいながら茄子の煮物を持って来てくれた・・・・
と思ったのだが何と持ってきたのは刺身の盛り合わせ
なのだ!!思わず「なんでやねん!!」と
叫んでしまった。 おばあちゃんはじっーと刺身を
見てからテレビに視線をやり「テレビ見てたら、
頭の中がいつの間にか茄子がお刺身になっちゃった」
と理屈にならない理屈を言っている。
挙句の果てに「茄子はどうする?」と聞くから
「もういらないです」と答えたが、かまわず鍋に
入れて作ろうとするから、「もう作らなくていいですよ」
と念を押すと「私が食べるからいいよ」と言って
鍋に火をつけていた。
またテレビを見ながら飲んでいると、またおばあちゃんが
「お待たせしました」と何か持ってきた。
何も頼んでいないのに??と思って出されたものを見て
ビックリしてしまった。
目の前には茄子の煮物が置いてあった。
こんなにあきれたのは人生、最初で最後かも知れない。
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