
「ちょっと怖い」ようなお話を集めた荻原さんの短編集。
ホラーとミステリーを交えた短編ですが、どれも荻原さんらしいユーモアとスパイスがきいていて楽しめました。
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お母さまのロシアのスープ
荻原さんらしいブラックさが際立ちます。短編だから軽くて浅いんですけど。コメントしにくい作品。
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コール
男性2人が同じ女性に恋をし、片方が死んでしまったというお話。これもちょっとひねりのきいた文で楽しめます。やさしいホラー。
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押入れのちよ
ここまで読んで、「この短編集かなり面白い」と思いました。想像がつくと思いますが、ちよは幽霊。それをコミカルに楽しく描いていて、ちょっとほろっとさせられて心が温かくなるような素敵な作品。
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老猫
ふとしたことで相続した古いけれど広くて洒落た家。そこに居着いていた老猫にまつわるお話。
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殺意のレシピ
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介護の鬼
この2作は共通点が多いのでまとめて。
ユーモアたっぷりに描かれているけれど、実は1番怖い2作品。
それぞれ冷めた夫婦と老人介護を取り上げているのですが、人の深層心理に迫っているというか、とても冗談ではすまされないし人事とは思えない。怖〜。
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予期せぬ訪問者
これはちょっとありえなさすぎというかふざけすぎというか、明るすぎるというか。ちょっと合わなかったかな。
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木下闇
ホラーではないのですが、閉鎖的な田舎の古い家や大きな木や梟といった演出が、なんともいえない雰囲気を醸し出していました。
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しんちゃんの自転車
30年前の回想という形式で綴られる、幼馴染の男の子のお話。この話は泣けました。せつないお話なんですが胸が温かくなります。
読み始めの感想は、「浅くて軽い」でした。短編だからこんなものかな、と思ってたのですが、2話3話と読み進めていくうちに、ハマりました。
「押入れのちよ」と「しんちゃんの自転車」は特によかったのですが、他の作品も上手いです。
どれも少し現実とは離れていながら、ありそうなお話ばかり。
いくつかの作品に出てくる幽霊が優しくて温かいのに対し、生きてる人間は恐ろしいというのも洒落てますね。

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