1985年、御巣鷹山に未曾有の航空機事故発生。衝立岩登攀を予定していた地元紙の遊軍記者、悠木和雅が全権デスクに任命される。一方、共に登る予定だった同僚は病院に搬送されていた。組織の相剋、親子の葛藤、報道に対する姿勢を克明に描いた作品。
初横山作品。
文章も構成も心理描写も上手くて感心しました。
日航ジャンボ墜落事故から21年。記憶の中で薄まりつつあった大事故。
当時受けた衝撃以上に、新たに胸に迫る臨場感。
複雑に絡み合う組織の人間関係や、個人個人の思惑も、元新聞記者ならではのリアルさで描かれています。
ですが、読むタイミングがすごく悪かったようです。
ストーリーの中心は日航機墜落を扱う地元新聞記者についてなのですが、ここには山登りも出てくるわけです。
日本ではかなり難関とされている山らしいのですが、先日読んだ「凍」が頭にあるものだから、この部分がちっとも面白くない。
それでメインテーマが違うにもかかわらず、全てを比べて読んでしまったのでした。あーあ。
そうやって冷めた位置から読むと、入り込むことができなくなって時間もかかりました。
比べた結論からいうと、こちらの作品の方が断然完成度は高いと思います。しかし「凍」には、続きがどうしても気になってやめられない魅力があります。
もし違う順序で読んでいたら、と考えても、「凍」のインパクトの強さにはかなわない気がします。
ちなみに母は逆順で読んだので、どちらも楽しめたようです。感想は似たようなものでしたが。

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