土曜日。K嬢のお誕-joviであった。彼女は誰もが認めるアウト・ドアー派、自然大好きっ娘であり、動物はおろか、森の木々とも話ができる程の神通力をも持っている。先日もピクニックの折、手を滑らしてオニギリがコロコロ、ネズミの巣に転がり、腹を空かせていた彼らにたいそう喜ばれたのだが、彼女があまりにも流暢にネズミ達と話すのを見て、ビックリした。あまりにも軽妙に会話しているのを見て、適当にチューチュー言ったら通じるのでは無いか、と思い、会話に横入りしてみたら、ネズミに軽く舌打ちされた後、肩をすくめて、目を丸くし口をへの字にされ、いわゆる西洋人のやる「ちょっとこいつ何やってんのかわからない。第一、海苔みたいな悪魔色の黒いものを口に入れるなんてクレイジーだ」みたいな顔をされて、さっきまで海苔を巻いたオニギリに感謝していた獣とは思えないリアクションだとは思ったが、まぁ、それは彼らなりのジョークかもしれないから、飲みこんでおいた。えっと…、そう、K嬢はそれ程のネイチュアー・ガールだから、自然の恵みをふんだんに盛り込んだパッフォーマンスで祝おうと、去年からコツコツと準備していた。勇気を出して、駅前のカルチュア・スクールの門を叩き、ポリネシアン・ダンスを習い始めた。特に、ヤシの実を二つに割って、両方の乳にあてがう、そのルックスに惹かれたのである。習得した暁には、全国のYO-SA-KOI仲間達がそうしているように、自分のテイストを加えたい。衣裳に煌びやかな金や銀のテイストを融合させる、カゲロウ・オギニズムを見習いたい。楽曲は三味線をフューチャーしたロック調にして、第二のヨシダ・ブラザーズになりたい。破壊無くして創造無し!どうすれば、ファインド・マイセルフ、いわゆるジブン・サガシィなテイストを出せるのだろうか?どうすれば、世の中、結果より、過程や涙の数だけ強くなれる事の方が大切かを、ほっこりcafeのフリーペーパー風に伝えられるのか?いろいろ熟考(もちろん、「う〜む、ロダンの考える人〜っ!」等とおどけつつ)の結果、ヤシの実を二つに割ったものは、両方の乳にだけとどまってはいけない、という神の啓示を勝手に受信した。もちろん、外人の男性の声で「ユーガッタメ〜イル」というのが鳴った。腰ミノを捨てて、ヤシの実を割ったやつを局部にも当てがう。移動手段は、同じく腰ミノスタイルの高橋名人を見習ってスケボーの予定だから、ヤシの実を割ったやつを両肘、両膝にも装着。転んで怪我したら大変だからね。マッドMAXも好きだから、両肩にも着けておこう。ここで一つ、問題が生じた。ポリネシアン・ダンスの、あの特徴的な「カッカッカッカカッ…」というリズム。あれが無いと踊れない。誰かに頼めば良いが機動性を重視して、何とか自前で済ませたい。テープでは駄目だ。生音、生演奏じゃないと。私、週に3回はライヴハウス行ってるし、野外フェス、最高〜っ!…まぁ、兎に角、踊りながら演奏をしなければならない。その時、ヒラメイタ(頭上で電球…もちろんLEDが、ピカっ!)!新たに股間に設けた、ヤシの実を割ったやつを、棒切れで叩きながら踊るのである!おれ天才!天才馬場の元気でゴメンね!よし、練習してみよう。「カッカッカッ(ビクん!)カッカカカッカ(ビクん!)」…時々、鈍痛がするけど、まずまずの仕上がりだ。準備は完璧!当日を迎えた。以前、天空のアフタヌーンティーが素晴らしかったので、そこに出向いたが、土曜日で満席だったので、次の機会にという事にして、同じフロアーのレストランへ。肉や魚をいただく。さすがのお味!うみゃー!場所を某・甘味ランドへ移し、チョコの美味いところでケーキをいただいた。時として、高級なチョコレートには食べ辛さが伴う事があるけれど、ここのは素晴らしかった。甘さ、苦味、酸味…ふるえが止まらない。おっと、ふるえるのはダンスの時にとっておかないと。某・服屋にてプレゼントを買う。気に入ってくれたら幸いである。いろいろ歩き回って、最後のお店に行くまでの道…、チャンスである。多少の人混みで、周りの目が、オレを欲する獣のような視線が集まるのは、この際、仕方が無い。寧ろ、その奇異なモノを見る軽蔑の眼差しがオレのネイティヴ・ダンスをより昂ぶらせてくれるだろう。よし、彼女がそこの門を曲がったら…、3、2、1…チェスト〜!…それからどの位の時間が過ぎたのだろう。しばらく気を失っていたようだ。K嬢によると、服を脱ぎ捨て、予め着けていた例の「ヤシの実を割ったやつルック」になったオレが奇声一番、「カッカッカッカカッ…」の一発目の「カッ」を打った途端に失神したのだと言う。力が入り過ぎちゃったのだ。ダンスはうまく踊れなかったが、オレの熱い、誕生日祝いのソウルは伝わったハズだ。ダンスの続きは、また、来年にとっておこう。K嬢、お誕生日、おめでとう!いつもありがとう!おわり!(この文章には、ほんの少しの誇張・脚色が含まれている事をご了承くだちゃい。)

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