先週。K嬢と後輩のR嬢を両手に花で、気になる風景を観て廻る試み。
都会の旧い面影を残した風景というものは誠に魅力的で、東京はいわゆる都会であるところの面積が広いから、つまり未だ見ぬ魅力的な風景だらけ、これは普段世界を出張で飛び回っているR嬢も痛感しているとの事。
昼過ぎに新宿で待ち合わせ、まずはドヤというか簡易宿が少し残る辺りへ。若い人やバックパッカー向けにシフトチェンジしたような宿も、やはり面影はどことなく残っている。シティ感覚で飾っていても造りが小さかったりする。昭和のまんまの宿も1、2軒残っていて、磨りガラスの向こうにぼんやり灯りが点いていたり、洗濯物が干してあったりして、生活の匂いもちゃんとあった。
四谷荒木町あたりに移動。入り組んでいて高低差があり、昭和の家屋、呑み屋が多い。基本的に昭和から大きく変わっていないような感じである。野坂昭如の回想に出てきそうな雰囲気。つまり、大好きだ。R嬢がナイスですね監督の事務所として使われていたザッツ・バブルなマンションを教えてくれた。監督の事を描いた回想小説をまた読みたくなった。
ちょっと休憩しようと、喫茶を探す。国鉄四谷近くに、もうそれはそれは素晴らしい純喫茶を見つけ、2階を貸切状態で、すげーすげー言いながらお茶。古いけど清潔で繁盛もしている感じである。
近くに来たついでに迎賓館を観にいく。栄華の粋を集めたような風景にクラクラする。オレはこういう建物も、風が吹いたら倒れそうな建物も両方いけますの。
ロイヤルな御子息も通う、かの学校を通過し、かつては貧民窟だったという辺りへ。いまは勿論、そんな場所はないけれど。
谷底故の高低差、旧い街並み、寺社、まるで我々の為に用意されたと思い上がってしまうような綺麗な夕暮れ。わずかに平成を感じるような箇所もあったんだろうが、夕暮れにマスキングされて、初めて観る景色には違いないのだが、絶対にいつか観た景色にも違いなく、もう心底ウットリしてしまって交わす言葉少なくフワフワと歩き続けた。夢で無かった事を証明できないくらい、境目が曖昧だった気がする。
各所でウットリし過ぎて、西新宿の裏路地に着いた頃にはすっかり日が暮れてしまい、またの機会に再訪問しよう、と言うことで、美味いトンカツを食べに行った。
おおよそ新宿近辺だけで、しかも識ってる範囲内でこれだけあるのだから、未だ未だあるはずである。今迄何をしてたんだ、という後悔と、明日はもう無いかもしれない、という焦燥感、素晴らしい景色を観られた多幸感、いろいろなものがグルグル渦巻いたまま、バンドの練習に向かった。東新宿のスタジオ。また新宿か。素晴らしいお休みでした。おわり。


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