謹賀新年。
明けてしまったけれど、年末に起きた事を少しずつ。
東京ドームでのザ・タイガースリサイタル。
遂にトッポが戻ってきて、往年のメンバーが揃った。再結成の類には基本的に触手が伸びないのだけれど、タイガースだけはやっぱり観ておきたかったのだ。
第一部はカヴァー曲のみ。
タイムイズオンマイサイド、ノーウェアマン…ストーンズやビートルズのカヴァーをタイガースの演奏で聴く、という至高の贅沢。今でも歌唱力の衰えないジュリーは勿論、超低音のサリー、煌びやかなトッポの高音、本人達も当時からハーモニーだけは絶対の自信があったのが納得できる。齢を重ねていても…なにしろ40年以上である!…レコードで聴かれるあのハーモニーになるのだから感激である。タローが振り分けたパートがそれぞれの役割を持ち、誰が欠けてもダメ、5−1=0ってのはテンプターズのアルバムタイトルだけれど、いいバンドというのはこういうことなんだろう。
シローも車椅子で登場。イエスタデイを歌った。涙してしまう。周りの客もみんな泣いていた。宇宙一美しい、イエスタデイだった。タイガースの情報源だった彼らしく、ロックのウンチクも言ったし、ワイドショーの司会時代みたいにボヤきギャグも披露。病状はキビしそうなのにあっぱれであった。
演奏そのものの揺らぎも生々しく、当時のリサイタルの再現がなされたのではないか。レコードではすぎやまこういち氏により芸術的に装飾されたアレンジメントで世界観を提示してくれたけれど、出発点は今回ステージで演っていたようなガレージコンボなのである。選ばれし者達のスター性は唯一無二であるが、ロックに憧れた少年達が楽器を持ち寄って集まった当時の姿が浮かび上がり、親近感を覚える。それにしても解散時から冷凍保存されて解凍したばかりのようなピーのドラムの躍動感といったら!先日、アランメリルのインタビューを読んだけれど、彼が当時、日劇ウェスタンカーニバル前夜に観た、ピーのドラム個人練習が鬼気迫るものだったらしい。ピーは、やりたいこともやれない息苦しさで去ってしまったのだが、ただひたすらロックバンドでドラムが叩きたかっただけなんだろう。努力しないと叩けないドラムである。
第二部。オリジナルナンバー中心。
席が遠くて音響が良いとは言い難かったが、やっぱりサリーに釘付けである。後に名優岸部一徳に転身する彼が、世界に誇る名ベーシストであった事実。開き目の足を踏ん張り、身体を揺らしながらヘフナーをピックでブンブン弾きまくる姿にシビれた。ツェッペリンが褒めたんだもんね。やっぱり「美しき愛の掟」が最高だった。
タイガースの後、日本の歌謡界を揺るがす活躍をした伝説のシンガー、ジュリーも、勿論輝いているのだけれど、後から入ってきたバンドの一メンバーの枠からはみ出る事がなく、他のメンバーを立てる後輩、みたいな…おそらく当時のパワーバランスってこんな風だったんだろうなぁ、と思って、そういうものが透けて見えるようなステージを観られたのは本当に貴重だし、素敵な事だと思う。
才能と品を兼ね備えて、日本のロック創世記に綺羅星の如く登場した若者達が誰一人として欠ける事なく40年後にこうやって目の前に現れて、まるで神話のようにしか思ってなかったから、兎に角、目に焼き付けなきゃ、と多少力が入りすぎた感があり、なんだかあっという間に終わってしまって、やっぱり夢だったのではないか、と思ったくらいで、…遠目のシュールな白昼夢、という表現が正しいのかもしれない。やっと憧れの先輩に会えた感じもある。
興奮やらいろいろ混じり合って自分でも何を書いているかわからなくなったけれど、ここまでにしとうございます。おわり。


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