にわかに全国の関心事となった上関町長選挙。
結果は原発建設に積極的な姿勢をとるK氏の圧勝となった。
福島原発の事故を受けてこれまでの選挙とはすこし違った形になるかと思っていたが、票だけ見ると前回選挙とほとんど変わらない結果となった。
はたして今回がマスコミの言うように原発の是非を問う投票だったのか、それとも対立の構造から脱却できない町民のジレンマなのか、それともあきらめに近い意思だったのか、やはりその気持ちは30年の年月を体験した人でしかわからない感情なのかもしれない。
原発事故によって日本の国土の多くが汚染された。人体に影響はありませんと根拠のない理由で汚染された食品も全国に流通しており被曝者は拡大しつづけている。
東北の人々はいまだに苦しみ、事故の収束のメドもいまだ流動的だ。
それでも上関町は原発建設を望む町長を選択した。
しかし変わらないことによる絶望より、これからは一人一人が変わっていく希望を見つけていきたい。
原発交付金に変わる代案などない。しかし多大な交付金などなくとも人一人、自分自身やその家族が希望を持って生きていく方法はいくらでもあるはずだ。その希望はおそらく他人の希望ともなりうる道となる。人がどうのこうのではない。今からは自分自身が行動に移すときだ。
3・11以降、僕も生き方を考えさせられた。呑気にカヌーなんか漕いでいて良いのだろうかと悩んだこともある。しかし「自然の案内人」としての仕事は現代人の価値観を少しでも海や自然に向けてもらうという、この時代においてはとても重要な生業だとも思えるようになった。自然なしでは我々は生きることができない。そんなあたりまえで、簡単なことを我々は身をもって再認識している。そのことをなによりも教育として子供達に伝えていくことは今を生きる者としての責務だ。
土に触れ、海に浸り、自然をあたりまえのように享受するささやかな生き方。争いが終わり国家や権力に翻弄されることなく穏やかに生きてゆきたい。
それが僕の願いだ。

33