6月の初旬にかかった一本の電話。受話器の向こうからは英語が聞こえてきた。
「シーカヤックを教えて欲しいんだ。ペラペラペラ。」
電話ではよく詳細がわからないのでとにかく会ってみることに。
やってきたのはまだ若い白人のアメリカ人。名前はマイクといった。
挨拶もそこそこにマイクは本題を切り出した。
「シーカヤックで角島から韓国までわたりたいんだ!可能だろうか?」
あまりにも唐突な質問だったが、なかなか面白い提案だ。
「できると思うよ。ただトレーニングが必要だね。」
マイクの顔がパアッと明るくなった。
聞けば彼は現在山口市に在住している英語塾の先生。
美しい日本海の海に感動して足しげく通っていたが、膨大な漂着ゴミに驚いた。
なんとかしたいという想いでビーチクリーンを開催して漂着ゴミアート展など関心を持ってもらうためにイベントも開催しているという。
ゴミのほとんどはハングルや中国語のゴミ。でも逆に韓国には日本のゴミが漂着していることも彼は知る。
「手漕ぎのシーカヤックで外人が海を渡れば、この問題に人々の興味がわくのではないか?」
そんな純粋な思いからこの遠征を思いついたのだという。
そんな面白い発想が僕は大好きだ。だが韓国までは直線距離でも150kmをゆうに超える。角島からなら対馬海流にも逆らっての航行だ。生半可ではない。
「毎週通ってトレーニングするよ。一年後、来年の今頃にスタートしたい。今日ほどエキサイティングな日はない!!」
そんなこんなですでに4回目のトレーニングを数えた。マイクは25歳。体力は絶頂期。30kmはひとまず楽に漕げるようになってきた。そしてインストラクターとしての親心か、いやいや単に自分が興味があるからなのだが本番はダブル艇でのマイクと僕、2人で挑戦しようということになった。
僕の最後の長距離遠征はもう9年前。僕も41歳になった。僕も再び鍛えなおさなければならない。しかし若いマイクと思い切り漕げるトレーニングの日は楽しい。
漕げれば良いというわけではない。国家間の微妙な問題もあるだろうし様々な問題課題をクリアしなければこの遠征は成功しないが逆にその作業はとても気持ちの踊ることでもある。
シーカヤックの遠征を通じて海の環境問題を人々に喚起できればまたそれも本望だ。
みなさんマイクの応援よろしくお願いします!


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