精密測定器メーカー大手のミツトヨが核開発に不可欠の三次元測定器を不正に輸出していたとして社長が逮捕された。経産省はイラン、イラク、リビア、北朝鮮を大量破壊兵器
の開発懸念国として、これら4カ国に対する高度技術の輸出を厳格に規制してきた。
ミツトヨはわざと性能データを規制数値以下に低く見せかけて許可申請を不要にしたり、現地法人に大量輸出して、そこから懸念国に迂回輸出したりして約1万台を売ったというから極めて悪質である。他にも無人ヘリコプターや凍結乾燥機を北朝鮮に不正輸出したメーカーも摘発されたが、まだまだ氷山の一角であり、この種の話はいくらでも有る筈だ。
大量破壊兵器の開発は2-3流国家単独では絶対に無理であり、必ず先進国特に日本、フランス、ドイツ、アメリカ、ロシアのの技術が不可欠である。中でも日本の高度技術なくしてはアメリカの軍事力さえ成り立たない事は専門家の間で常識となっている。
因みに湾岸戦争勝利の最大の貢献は多国籍軍でも日本の120億ドルの拠出でもなく、日本の精密技術だと評価されている。特殊半導体、精密工作機械、加工研磨技術、鍍金技術等が無ければ、パトリオットもトマホークも役に立たなかった。
大量破壊兵器の拡散を防ぐ基本は日本の高度技術がならず者国家に流れないようにする事である。ヤマハの無人ヘリコプターが台湾経由で北朝鮮に不正輸出され、生物化学兵器製造に必要な凍結乾燥機も北朝鮮に流れていたと言う事は、北朝鮮が無人ヘリコプターを使って東京上空からサリンやポツリヌス菌を散布する意図があったことを意味する。
考えるだけでも恐ろしい話であり、脅威はミサイルの比ではない。
不正輸出は国家の安全を脅かす重大犯罪である。経産省は不正輸出監視にもっと注力すべきである。
イラン、イラク戦争真っ盛りの頃、ホンダは携帯発電機を民需としてイランに輸出していたが、通産省がアメリカの要請を受け経済制裁の一環として発電機の輸出を禁止すると突然通告してきた。大量注文を受けて船積寸前の案件を抱えていた私は抗議の為通産省に乗り込んだ。課長補佐や係長が数人居たが、彼らの言い分はホンダの小型発電機がイラン兵の砂漠地のキャンプで照明用として、又調理用として使われているから、一種の兵器であり、規制の対象になると言う。私は兵士が使っているから兵器だと言うのなら、軍服も靴も食料も全て兵器になる。こんな筋の通らぬ理屈は無い。禁止するなら損害賠償の行政訴訟を起こすと脅してやると、余りの勢いに恐れをなしたのか、例外として許可してくれた。元々役人は節操が無いから脅すと直ぐ引っ込むものである。通産省の決定事項を覆したのは後にも先にもお前だけだと上司に呆れられた。

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