メタボリック症候群の診療指針が公表された時、私はこの基準は世界の基準に比べて厳しすぎる、屹度医療機関や製薬、医療機器業界が厚労省をけしかけて売り上げを増やす為に仕掛けた陰謀に違いないと指摘した。因みに男性の腹囲が85CM以上でメタボリックだというなら日本人の平均的成人男性は皆該当する。アメリカの成人男性のメタボ基準は102CM以上である。血圧も140そこそこだったと思うが、これで高血圧というのも可笑しい。後は忘れたが確か血糖値が120以上だったと思うが、これら三項目のうち二項目が該当すればメタボリック症候群だと言われると成人の半数以上が不安になって健診を受け、血圧や糖尿の薬を服用し、ダイエット食品や健康機器に大金を払うだろう。
厚労省はメタボリックシンドロームの判定基準を発表した時、メタボリックになるのを事前に予防して医療費を削減するのが目的だと言ったが、私はとんでもない見当違いであり、健診料だけでも医療費は大幅に増えるだろうと予言した。膨大な薬代を加えると考えるだけで腹が膨れると茶化した。
読売新聞社の調査によって今日やっと謎が解けた。診療指針を作成していた国公立大医学部の医師の90%が製薬企業から寄付金を受領していることが明らかになった。それも半端な額ではなく’06年度は48の国公立大学の医師や口座に262億円が支払われた。メタボの診断基準の場合は11人の作成委員に計14億円の寄付があったという。1人1億円も貰えば製薬企業に有利になるような診断基準が出来る筈である。腹囲を100CMから85CMに下げるだけで薬の売り上げが数倍にもなるだろう。何たる茶番劇かと呆れ果てた。
全くどいつもこいつも金の為なら平気で良心も魂も売り渡す時代になった。日本の最高の知性の集まりである国公立大の医局が業者に買収されていた訳である。
尤も国公立大も独法になって公的資金は少なく、医局には年間300万円しか出ないから秘書も雇えないという。研究には企業からの寄付が不可欠だというのも良くわかる。殆どの医師が収支の全てを大学に届け出て適正に処理しているだろうから収賄とは言えない。然し中には私的に流用している場合もあるだろうから透明性は欠かせない。
責められるべきは製薬企業である。日本の薬価は世界一高いと言われている。昔から薬九層倍と言われているように薬のコストは極めて安いが売値は高い。開発費に相当かかるが、一旦保険薬に指定されて大学医局に採用されると、後は儲かる一方である。因みに日本の製薬会社は無数にあるがどれも皆倒産もなく経営は健全である。その巨大な利益を流用して厚労省の天下りを受け入れ、薬価や許認可を自分達に有利になるように暗躍して来た。非加熱血液製剤やタミフルやフィブリノゲンの様に薬害があっても厚労省に庇って貰って来た。一方で貧乏な国公立大の医局に巨額の寄付をして手足をがんじがらめに縛り、自分達に有利な診療指針を作成させてきた罪は大きい。
日本の政官業癒着体質が大学にまで及んでいる事を思い知らされた。息子には絶対に国立大の医局には残るなと忠告する積もりである。

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