必殺仕分人による事業仕分作業が終了した。仕分されたのは国の全事業の15%に過ぎないが、一応1,8兆円の無駄を洗い出した事は大きな成果といえる。何よりも予算編成が国民の目の前で行われた事で国民の関心が高まり、傍聴人も2万人を越え、ネットのアクセスが280万回もあったと言う。3000を越える事業全部を仕分けるのは無理であるが、この結果を踏まえて他の事業に仮定の水平展開を図れば更に大きな金額を捻出出来ると思う。最終的には行政刷新会議で政治的判断が下される事になる。
仕分人は民間人が主体だったし、テレビで公開されるので皆さん張り切って官僚虐めのパフォーマンスに流れた傾向は無きにしも非ずだが、私はそれで良いと思う。官僚は事業と予算額の必要性を必死で弁じ、仕分人は事業と予算額の廃止、中止、縮減を必死で論じるのだから元々敵対関係にある。自分達の利益を守ろうとする官僚と国民の税金を守ろうとする仕分人とでは仕分人に正義があるので上から目線になるのは当然である。
民間の仕分人に国家事業の廃止や中止、縮減を判定する資格があるのかという疑問の声もあるが、何を言っているのかと思う。仕分人が最終的に決めるのではなくオピニオンリーダーとして招かれた以上自分の意見を言うのは当たり前である。
77事業が廃止、22事業が中止、その他殆どの事業が縮減された。科学技術予算もばっさり大鉈を振るわれたので学者からの反発が強まった。9大学学長やノーベル賞受賞者による集団抗議を無視出来ず、刷新会議で一部は復活するだろう。然しこれは地方や業界の陳情団が族議員に率いられて復活折衝で大蔵省に押し寄せた構図と同じである。
学者が圧力団体になるのは見苦しい。
事業仕分に依ってやっと政治主導の予算編成が出来ると民主党もマスコミも言っているが私はそうは思わない。従来も財務省主導で予算編成をやっていたならば、900兆円に喃々とする財政赤字が累積するはずが無い。財務省は官庁の中の官庁で権限も実力も並外れている。まともな財務官僚なら財政規律を保つ事こそが最大の目的であり責務である。況や先進国最悪の財政赤字を抱え、赤字国債の発行額が税収を上回る異常事態を早急に是正するのが財務省の最優先の仕事である。主計官は予算要求を出来るだけ削るのが仕事のイロハである。従って官僚主導の予算編成なら財政再建はとっくの昔に出来ていた筈である。ところが自公政権では業界の利益代表の族議員が蔓延り予算獲得に奔走した。特に建設族や農水族が利権と票を得る為に無駄な公共事業や補助金を推進したのが財政悪化の最大の原因である。詰まり従来の予算編成は政治主導で行われたから無駄が多かったのである。政治と行政は官僚主導だったが予算編成と消化は政治主導だったと思う。財務官僚も議員に睨まれると地位が危なくなるので族議員に逆らえない。昔の大蔵官僚と違って今の財務官僚には志がない。国の将来より自分の今が大事である。
民主党議員には今のところ族議員は居ない。コンクリートから人へと言うキャッチフレーズの通り、無駄な公共事業や補助金は大きく削られるだろう。従って政治主導で財務省と協力しつつ財政再建に取り組むだろうと期待している。然し目先の景気がお先真っ暗だから大幅な補正予算を組む必要が出てきた。当面財政再建はお預けにせざるを得ない。あちら立てればこちらが立たずで頭の痛い問題である。
先にも書いたが抜本的解決には消費税の前倒しアップと公務員給与の2割削減で大きな財源を確保する事以外に無い。3年間消費税を上げないと公約したが、拘る必要は無い。国民の6割は消費税のアップを容認している。公務員給与の削減には支持団体の連合特に自治労が反対するので先送りしているが、これをやらずに財源の確保は無い。

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