今日TBSの記者が隣のご主人の逮捕について取材に来た。実は二日前隣の若奥さんから新聞沙汰になるかもしれないからと断られていた。思いつめた表情で相談に乗って欲しいと頼まれたので今晩8時にどうぞと承知した。爺とはいえ一人暮らしの男を訪ねてくるのは余程切羽詰った悩みに違いないと思った。奥さんは主人のDVで悩んでいると切り出した。父親に反対されたが家出同然で結婚して13年間、ずっと亭主の家庭内暴力に耐えてきたという。この間二度も浮気された上、奥さんや子供名義の貯金まで勝手に使われて愛想が尽きたと言う。最近子供にも暴力の危害が及び始めた事で我慢も限界に達したので離婚を前提に警察に訴えたと言う。警察も度々の訴えと医師の診断書を揃えられて保護を願い出る奥さんを無視出来ず、千秋楽を待って明日大阪で逮捕する予定だと言う。
御主人は相撲協会の下っ端の行司でテレビにも下位の番付戦で映っていると言うが私は観た事が無い。私の部屋にも子供をつれて挨拶に来られたが、外面が良く、ごく普通の亭主に観えた。時々子供達を連れて散歩していたし、まさか子供を虐待しているとは思わなかった。私が奥さんの事を働き者でしっかりした優しい人だと褒めると、女房には頭が上がらないですよと不貞腐れて応えたのが印象深かった。
奥さんとはベランダで会った時に話す程度の淡い付き合いであるが、34歳で子供3人を育てている上に、猫を4匹も飼っているしベランダで草花を育てているので凄い働き者だと思った。優しい人で捨て猫を見ると放っておけないと言う。私のブログも読んでくれて的確なコメントを述べるので知性も教養もある美人である。
奥さんから3時間に亘って赤裸々な告白を聞く内に、この御主人は二重人格者で、男の風上にも置けない最低の人間だと思った。浮気は兎も角、女房子供の貯金まで勝手に降ろして使い、挙句に暴力を振うのでは救いようが無い。奥さんも自分に対する暴力だけなら耐えられるが、子供にまで及ぶのは耐えられないと仰った。奥さんは相撲協会の上司にも相談して諌めてくれる様頼んだが、三度目には家庭のいざこざを協会に持ち込むなと突き放されたと言う。亭主の母親にも相談したが新興宗教に凝っている義母は風水に問題があるといったそうで埒が明かないという。この母にしてこの子ありで、御主人は甘やかされて育った極度のマザコンだそうである。この亭主は豪い母親にも賢い女房にも頭が上がらず強い劣等感の裏返しの反作用から暴力を振るうのだと分析出来る。
奥さんは怖くて二度と一緒に住めないと言うので私は家裁に協議離婚の調停を依頼するように奨めた。問題はこの亭主が刑事事件で逮捕されて解雇されると忽ち路頭に迷う事に成り、子供の養育費どころか自分も食えなくなって逆恨みする事である。普通なら養育費代わりにマンションのローンを払い続けて貰えると思うが、失職すれば不可能である。奥さんもアパートを借りたいと言うが、子供三人と猫4匹では貸し手はないだろう。生活保護は受けられても住居が無ければ生きてゆけない。それでも猫を見捨てる訳には行かないと悩む奥さんを、私も見捨てる訳には行かなくなった。
万が一住む所が無ければ私のマンションを只で提供すると申し出た。私は何時でも本宅に戻れる。奥さんは爺の親切が身にしみたのか泣き出したので慌てた。34歳で子供を3人も産んだのだから表彰ものである。少子化の折柄、子供は社会の宝物だから、社会全体で育てるべきである。微力ながら爺に出来る事はやらなければいけないと持ち前の正義感が頭を擡げた。
TBSの朝ズバのスタッフが私にインタビューしたいと言うので、奥さんを守るためなら何でもやる気になって応じた。ひょっとすると、みのもんたの番組で私が写るかも知れない。勿論顔はボカシを入れて欲しいと注文した。多忙な一日だった。

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