中国政府は人民元相場の弾力的運用を漸く国際社会に約束した。G20で人民元切上げ圧力を交わすためのジェスチャーであって大した効果は無い。変動相場制にするなら明確に上下の巾を示すべきである。中国政府が完全にコントロールしているから変動幅は極めて小さく小出しになるだろう。
過去10年間人民元は事実上の固定相場制の下で過小評価され続けてきた。お蔭で中国製品の国際競争力が不当に強くなり世界中に輸出されて他国の産業空洞化を招いた。世界のリーダーアメリカが今も金融危機から立ち直れず、失業率10%で不況に喘いでいるのも、元を糺せば中国からの低コストの資本輸出にあった。米国民は中国の低コストの資本供給と言う麻薬に溺れて中毒になり、低金利の住宅ローンを借り捲って破綻した。
アメリカ政府は前から中国政府に人民元を切上げるように要請して来たが、アメリカ国債を大量に買ってくれる中国に対して遠慮しがちで強く出られなかった。
人民元の意図的な過小評価は輸出産業への補助金と何ら変わらない。本来は国際社会が世界貿易機関に提訴して、それでも中国が言う事を聞かなければ報復関税をかけるべきであった。然しアメリカの指導者はそれは保護貿易主義に繋がるとして避けて来た事で最早手遅れになった。世界同時不況の中で中国だけが高成長を謳歌しているのも低い人民元の御蔭である。何事も独り勝ちは良くない。経済で独り勝ちをした中国は余裕資金を軍事力の拡張や資源の買い漁りに振り向けている。アメリカ始め国際社会がイラクとアフガンに膨大な人員と金を注ぎ込んでテロリストと戦って消耗しているのに中国はそ知らぬ顔で自国の軍事力増強と資源確保にに邁進する事は許されない。
中国は間もなく日本を追い越してGDP世界第二位の大国になる。何時までも途上国だと自己弁護する訳には行かない。日本も巨大な中国市場のお蔭で中国向け輸出が伸びているし、中国人観光客が大挙して訪日してくれるようになったので景気回復は中国次第と言われている。然しだからといって言うべきことを言わないで中国に媚びるのはアメリカと同じで情け無い。中国が真にアジアの盟主になれるように日本が手助けする必要がある。その第一が人民元の切上げであり、第二が軍事力の透明化であり、第三が資源外交に節度を弁えさせる事である。
かって日本も国際競争力が強くなり過ぎて1ドル360円の固定相場制から308円に切上げられ、続いて200円台100円台へと突き進み、終に78円まで5倍近く円高になった。中国も少なくとも人民元を二倍程度切上げて真の国際競争力を身につけるべきである。

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