20年間原発の現場で働き、その間の放射能被曝で癌を患い、最近死去した平田憲夫さんが残した手記を読んで私の信念が根本から揺らいだ。原発に事故はつき物であるが、化石燃料に替わるエネルギーとして原子力の平和利用は不可欠だから、安全性を徹底して追及すれば安心でクリーンなエネルギーになる筈だと信じていた。然し実態はお寒い限りだという。簡単に言うと原発の設計は立派だが、施工と検査が杜撰だから何時でも重大事故が起こりうると言う事である。
平田さん自身は配管技術者であるが、原発建設現場で監督も勤めたし、事故現場で収束作業にも度々携わったので今日の状況を語るには最適である。遺書として残した手記に嘘はないだろう。
昔は工事現場には叩き上げの職人が居て現場を指揮していたので、設計どおりに施工が出来ていたが今や素人に毛の生えた程度の臨時職人ばかりだと言う。原子炉の中に誤って針金を入れたまま黙っていた作業員も居たが、危うく大事故になるところだったと言う。ボルトを締める強度がばらばらだったり、配管を間違えたり単純ミスは限がないという。実に恐ろしい話である。
杜撰な施工は検査でばれれば良いが、検査するのが素人であり、書類さえ揃っていれば簡単に通ると言う。原子力安全保安院は原発を推進する立場の経済産業省の天下り先であり、原子力の専門家の集まりではないと言う。農水省から来た余剰の米検査員が多いと言うからいい加減なものである。
原発から出る核廃棄物の処理についてもお寒い限りらしい。今はドラム缶につめて置いてあるだけである。ドラム缶が放射性物質でいつぼろぼろになって外に漏れるかも知れない。今考えられているのは地中深く埋める事だけである。
日本が推進しようとしているプルサーマル方式の原発は問題だらけだという。日本はイギリスやフランスで再処理されたMOX燃料を多量に抱えているが、MOXには最悪のプルトニュームが含まれている。
プルトニュームは半減時間24000年と言われ、被曝すると簡単に癌になる事で知られている。
福島原発の原子炉6基は何れ廃炉せざるを得ないと思うが,1基の廃却に1000億円を要すると言う。それも数十年間にわたって管理し続ける必要がある。東電は多分存続できず国有化せざるを得ないだろう。原発はコストが安いと思ったが一旦事故を起こすと物凄いコストになる。
あれこれ考えるとエネルギーを原発に頼るのは最悪の選択かもしれない。かといって化石燃料は何れ枯渇するから火力発電にも頼れない。やはり脱ダム宣言を撤回して水力発電に戻るべきかもしれない。或は海底のメタンハイグレードの資源化を促進して火力発電所の燃料にするべきかもしれない。
良くわからなくなった。

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