円が続伸して76円台に突入した。これは日本経済にとって大震災に輪をかけた様な災難である。犯人は言わずと知れた基軸通貨米ドルに対する信用不安である。勿論ユーロ危機も影響している。日銀が単独で円売り介入しても効かないだろう。
米連邦政府の債務上限引き上げ問題が与野党協議の難航で米国債が債務不履行に陥る危険性すら孕むに至った。債務上限引き上げ法案が議会を通過しなければ米政府は国債を発行出来ず資金繰りが成り立たなくなる。事実格付け会社は米国債の信用度をトリプルAから引き下げる事も検討している。これは前代未聞の出来事であり、私はまさかと思ったので単なる民主党と共和党のじゃれ合いで直ぐ収まると楽観していた。然し期限が8月2日に迫っている。まさかがまさかでなくなるかもしれない。万が一米国債がデフォルトになれば世界恐慌に陥るだろう。
米国もご他聞に洩れず上院と下院で捩れている。与党の民主党は上院で過半数を占めるが下院は共和党が優勢である。日本では特例公債法案が人質にとられて参院を通らないのと同じである。捩れ国会が機能しなければ政治も経済も動かない。やはり二院制は止めた方がよい。
二大政党制の元祖アメリカでは民主党と共和党が常に政権交代を繰り返してきた。重要法案がぎりぎりの攻防を経て最終的には妥協するのが常だった。然しオバマ政権後の与野党攻防は少し様子が違う。共和党はオバマ政権の二年間で財政赤字が急激に拡大した事に深い懸念を抱いている。リーマンショックと言う不幸な出来事もあって金融機関やビッグスリーに巨額の税金をつぎ込んだ上にオバマ政権が国民皆保険を推進したのが将来の増税に繋がると猛烈な反発を買った。二年間債務上限を大幅に引き上げたがそろそろ歯止めをかけようと言うのは尤もな主張である。
共和党はボストン茶会に因んでティーパーティー運動を繰り広げ国民の大きな支持を獲得した。
共和党の主張は簡単に言えば政府は放って置いてくれと言うもので、減税して小さな政府を作り内向きの政治に変えようと言うものである。イラクもアフガンもアメリカの知った事ではない。そんな事に多大の犠牲を払う必要は無い。不法移民の急増で福祉費用が足りないなら移民を追い出せという過激なものである。自立したアメリカ人にとっては当たり前の理屈である。
次期政権は共和党になると予想しているが何でも良いから基軸通貨ドルの信頼性は確保して貰わないと不当な円高で日本がとばっちりを食う。

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