女房が体調が悪いので病院に行ったらパーキンソン病の疑いがあると言われて気が滅入っている。脳神経の病気はCTスキャンやMRIだけでは簡単に判らない。パーキンソン病の診断には甲状腺ホルモンの徹底分析が必要なのに検査された覚えが無いと言う。医者の卵の息子からも診断は早過ぎると文句が来た。病院の脳神経科は暇だから患者を増やしたいに違いないと思ったので別の病院でセカンドオピニオンを聴く予定である。
若し本当にパーキンソン病であっても幸か不幸か73歳の高齢での発症だから大した心配はないと思うが、女房にとっては不安だろう。医者から認知症になる確率が高いし、手足が麻痺して車椅子になる恐れもあると脅されて、何れ介護が必要になるので今から介護付き老人ホームを探すと言い出した。私はパーキンソン病の進行は遅遅としているから、73歳の今からなら呆けるのも普通の人と変わらないので早まるなと引き止めた。然し進行が速い場合もあると言うので老人ホームの物色を始める事にした。困った事はペットと住める老人ホームが滅多にないことである。後二年で息子が医者になれば犬達を引き受けて貰えるので女房に後二年は頑張るように頼んだ。女房は自分ひとりで入るから大丈夫だと言うが,そんな訳には行かないから老人ホームに入る時は一緒だと言った。ペットと暮らす事を選んで女房と別居中の怪しからん爺だからせめて女房が介護が必要になれば一生懸命面倒を看る積りである。
オードリー・ヘップバーンもデボラ・カーもボクサーのカシアス・クレーも皆さんパーキンソン病だった。身近では永六輔氏がそうである。手足が震えると惨めであるが命に別状はない。
日本の老人の9割以上が病院か施設で死ぬ時代である。誰もが自宅で死にたいと望むが在宅介護は容易ではない。私のお袋も施設に入るのを嫌がるので数年間も姉が在宅介護で散々苦労した。労労介護だから一人では絶対に無理で共倒れになる。私も兄貴も女房と代わる代わるで毎週のように紀州に手伝いに行ったが、終に行き詰まって嫌がるお袋を説得して施設に入れた。
恨めしそうなお袋の顔が今でも忘れられない。今も後ろめたい気持ちで一杯である。98歳のお袋はまだ認知症にもならずしっかりしているが、もう長くはないだろう。今死なれたら私は親不孝を悔いる余り号泣すると思う。
介護の苦労を子供たちに味わせたく無いので、女房とどちらかが介護が必要になれば老人ホームに入ることは前から決めていた。

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