安倍首相とオバマ大統領の首脳会談で合意した事については昨日のブログで粗方書いた。マスコミは一面トップでTPP参加と大書した。アメリカの公式な承認を得る為には二国間の事前協議で合意した後アメリカ議会の承認を得る必要がある。議会の承認までには3か月もかかるので来月にも大筋決着する必要がある。昨年2月から米国との事前協議をしているが自動車と保険分野で意見の隔たりが大きい。政府は特定テーマを事前協議から切り離す方針で協議を加速する。
安倍首相は民主党が立案した原発を2030年代までにゼロにすると言うエネルギー政策をゼロベースで見直すとオバマ大統領に確約した。同時に火力発電用にシェールガスの対日輸出を要請した。オバマ大統領は重要な同盟国の要請を受けるだろう。これはTPPに勝るとも劣らぬ大切な合意である。
アメリカはスリーハンドレッドマイル島の原発事故以来、原発の新設は見送ってきた。然し原発技術の進化に鑑み改めて原発新設の計画が目白押しである。原発技術の元祖GEやWHが日本の東芝と日立に買収されたので、日本が原発を止めると忽ちアメリカが困る。中国もインドもブラジルも将来のエネルギーを原発に頼る計画である。サウジでさえ原発新設に乗り出した。日本の最大の成長戦略は原発の輸出にあると言っても過言ではない。
何度も言うが私だって放射能のリスクを回避出来ないならば将来原発を失くす事には賛成である。然し飽く迄自然エネルギーが原発にとって代わる見通しがなければならない。太陽光も風力も地熱も精々数%では話にならない。原発停止の間火力発電に頼った結果、昨年は7兆円近い貿易赤字を記録した。円安の今年は一か月で1・3兆円近い赤字であり、年間では15兆円を超えるだろう。此の侭推移すると大変な事態になって日本は三流国家に転落する。アベノミクスなどはすっ飛ぶほどの事態である。貿易赤字が拡大すれば円安が加速する。燃料、食料など輸入品価格が高騰する。ガソリンを使う物流費も上がるのでデフレ脱却どころかインフレになる。ガソリン価格の高騰を観れば判る話である。インフレになれば国債の金利が上がって財政は益々悪化する。国債が売れなくなって第二のギリシャになる恐れすらある。アベノミクスだと浮かれている場合ではない。金融緩和と財政出動は劇薬であって匙加減を一歩間違うと地獄に落ちる。
安倍首相が原発の再稼働に舵を切るのは当然である。7割の国民が原発反対であるが民意を尊重していると日本が潰れる。原子力安全委員会は慎重過ぎて再稼働は難しい。羹に懲りて膾を吹いている。何十万年前に遡って活断層を調査する必要はない。ここは政治判断が要る。福島の原発事故のお蔭で原発の安全技術と備えは格段に進化した。
当面の対策は原油や天然ガスの仕入れコストを下げることである。アメリカのシェールガスに切り替えれば3割は下がる。これを武器にしてロシアやクエートとの値下げ交渉に乗り出すべきである。
将来の夢のエネルギーである核融合の実用化に取り組む為にも現行核分裂技術の維持、継続は欠かせない。原発を廃止すれば技術も人材も風化する。何事も長い目で見て判断しなければ間違える。

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