シリアのアサド政権が化学兵器を使用した根拠については米国政府は自信満々である。国境なき医師団の報告が化学兵器であることを断言するのは確かであるが、問題は政府側か、反政府側かである。常識的に考えても反政府側が化学兵器など保有しているわけがない。反政府側が一般市民に対して無差別に使用するわけもない。碌々飛行機も戦車も無いから運搬も出来ない。
米当局は電話傍受によってシリア政府が使用したことを確信したと言う。イギリス、フランスもアメリカと同じ見解であり、アサド政権が一線を超えた以上軍事制裁は必然だとしている。
一方ロシアと中国は軍事制裁に反対である。安保理決議を経ないで軍事行動に出るのは国連憲章違反だと騒いでいる。安保理決議にロシア・中国が拒否権を発動するから出来ない事を棚に上げている。ロシアはシリアに軍事基地を持っている。シリアへの武器輸出は巨額である。ロシアにとってはシリアの内戦が続けば儲かるから内戦を終わらせたくないだけの話である。
イギリスのキャメロン首相は軍事行動に前向きだった。然し下院が僅差で否決した以上参戦できない。どうも最近のイギリス国民は利己本位である。EUには加盟しようとしないのも、独仏に主導されることが気に食わないのと、財政危機のギリシャ、イタリア、スペイン等に税金をつぎ込むことになるからである。シリアへの攻撃も金はかかるし英国の兵隊がリスクにさらされるし、イギリスにとって良いことは何もないと言う発想だろう。よその国の事など知ったことではないと言う利己本位である。
パックスブリタニカ時代の英国は世界全体を考えていた。今や自分だけというのは二流国に落ちぶれた証拠である。日本と同じ島国だから島国根性が抜けない。原発再稼働に80%が反対する日本国民と似ている。軍事行動が嫌なのも、原発が嫌なのも現在最適、部分最適の発想である。正しい判断は将来最適、全体最適の観点に立って初めて得られるものである。
フランスのオランド大統領もシリア攻撃に前向きであるが、議会の判断が気になる。然しフランス国民はイギリス国民よりずっと増しだと思う。リビア攻撃にも真っ先に参加した。
アメリカ政府は単独でもシリアを攻撃する構えである。アメリカ国民も大半が軍事行動に反対している。ベトナムで懲りたし、イラク、アフガンでも懲りた。膨大な戦費が何れ自分の懐を直撃するからである。然し世界の警察たるアメリカが内政優先となれば世界平和は保てない。化学兵器使用を罰しなければならず者国家は好き勝手をやるだろう。

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