安倍首相は今日から欧州6か国を歴訪する。フランスではオランド大統領と会談するが、日仏で高速炉の共同研究を進めることで合意文書を交わす見込みである。フランスは2019年までに高速炉の実証炉であるアストリッドの基本設計を終えて2025年に運転開始を目指している。世界最大の原発大国フランスが高速炉の先輩である日本に技術協力を求めてきたのだから光栄な話である。
日本の高速炉もんじゅはトラブル続きで運転が大幅に遅れているが、高速炉では世界で唯一の研究機関であり、高速炉に関する知見の蓄積がある。政府は安全委員会の承認を待って日本原子力研究開発機構の組織改革を急いで再稼働に漕ぎ着ける意向である。
高速炉は夢の原子炉と言われる通り、発電しながら使用した核燃料以上の燃料を産み出す。天然ウランに限りがあるが、高速炉を使えば原発の将来は資源の制約がなくなる。ウランは勿論、天然ガスや原油というエネルギー資源に乏しい日本に取っては絶対に実用化するべき技術である。
高速炉は燃料の放射性物質が核分裂した際に飛び出す中性子を、減速させずに高速のまま用いて分裂反応を継続させるので高速増殖炉という。ウランを燃やした後に出来る核のゴミからプルトニュームを取り出してMOX燃料を造れるシステムである。日本は使用済み核燃料を英仏やロシアに依頼してMOX燃料に加工して輸入し、既に相当量のMOX燃料を保有している。MOX燃料で発電する原発も数基持っている。
高速炉には他にも核廃棄物を大きく減らす機能もある。核廃棄物に含まれる放射線を出し続ける物質を燃やすことが出来るからである。更に通常は核廃棄物が人体に及ぼす影響は10万年と言われているがそれを最終的には300年に短縮する技術も確立されている。
フランスの高速炉も核のゴミ減量が表向きの理由である。原発を廃棄しようが継続しようが核廃棄物の処理問題は残る。高速炉は人類の未来にとって不可欠の巨大科学なのである。
日本は2025年に稼働するフランスの高速炉に技術協力することを約束した。トルコやベトナムにも原発を輸出する約束をした。他にも日本の原発技術に頼る国は一杯ある。日本がアメリカのGEやWHを買収して原発技術で世界最高水準となった経緯がある。千年に一度の福島原発事故でこの技術を見捨てるのは大いなる背信行為である。
もうそろそろ脱原発の議論に終止符を打たなければならない。脱原発は欺瞞である。三年前まで日本のエネルギー政策は50%を原発に依存すると言うものだった。それがいきなりゼロということは逆立ちしても無理である。ちゃんと順序立てて考えなければ大きな間違いを起こす。
脱原発論者を観ると天動説を唱える中世の無知蒙昧な大衆を思い出す。地球が時速10万キロの猛スピードで太陽の周りを回っていることに気が付かないで、太陽が地球の周りを回っていると信じていた。確かに毎朝太陽が地平線から上ってくるが、あれは地球が沈んでいるのである。

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