政府は2030年度の電源のベストミックスを有識者会議で月末から夏にかけて決める予定であるが、大体の構想が明らかになった。原発の比率を20%を軸にして検討し、再生可能エネルギーと同程度にする方針である。
政府は新しいエネルギー計画で電源比率を曖昧にして原発の比率を敢えて示さなかった。衆院選挙を控えて原発反対の世論に配慮して先送りしてきた。安倍政権が圧勝した余勢をかって漸く具体的なエネルギー計画が立案されることになる。
政府は世論に配慮して原発依存を出来る限り減らす方向を打ち出さざるを得ない。それを埋めるのが太陽光等の再生可能エネルギーである。それが出来ればそれに越したことはない。然し理想と現実は違う。2030年までには無理だと思う。現在2%程度の再生可能エネルギーの比率を20%に引き上げるのは不可能に近い。たとえ出来ても電気料金の高騰でスペインやドイツのように後遺症が残る。ヨーロッパはフランスの原発から電気を買えるが日本はどこからも買えないので直ぐ電力不足になる。
世界の方向性は逆である。今後も途上国のエネルギー需要は増え続ける。それを化石燃料で賄うのは資源に限りがあって無理である。又CO2の削減が必須であるから成るべく化石燃料は減らすべきである。産油国でさえ原発導入を計画している。
現在世界では500基以上の原発が稼働しているが、これが近い将来1000基に倍増すると見込まれている。中国、インド、インドネシア、ブラジルなどで原発計画が目白押しである。
日本国民が福島原発事故に懲りたのは理解できる。然しチェルノブイリのロシアでもスリーハンドレッド島のアメリカでも原発は増やす方向である。日本も何れ原発恐怖症は風化する。何事も長い目で見なければ駄目である。アメリカのGEやWHはもう原発は駄目だと読んで原発子会社を日立と東芝に売り渡した。今後は日本から技術を買わざるを得ない。
「桑の根っこを引き抜くな」という教訓がある。絹の生産が世界一になった日本も合成繊維の登場で絹の輸出が止まり、農家は桑の木を引き抜いた。その後又絹ブームが来た時は対応出来なかった。原発は逆である。GEとWHを買収したおかげで日本の原発技術が世界一になった。これを活かさない手はない。インフラ輸出こそ成長戦略の要である。
安倍政権は原発の再稼働は推進するが新設には一切触れない。然し他国への原発輸出を熱心に推進しているのは矛盾である。特に次世代型原発の高温ガス炉は軽水炉より遥かに安全である。40年以上たった原発を廃炉にしてそのあとに高温ガス炉の原発を新設するべきである。

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