安部総理の所信演説原稿全文を読み終えたところである。役所の作文は参考にした程度で、自らスタッフと一緒に起草したと言う。派手さは無く、総花的ではあるが無難な出来だと思う。小泉さんが長岡藩の米百票精神を引用して、改革の痛みに耐えるよう訴えたが、安部さんはアインシュタインが訪日時賞賛した日本人の美徳に触れて、謙虚、質素、純粋を忘れず美しい日本を築こうと訴えた。古の昔から脈々と引き継がれてきた日本人の美徳を保ちながら、魅力と活力ある国にする事は十分可能であり、日本人にはその力があると信じると言い切った。イノベーション、アジアゲートウエイ、カントリーアイデンテイテイ、フレンドリーソサイアテイとか矢鱈カタカナが多いのが不満であるが、若い総理らしいとも言える。所信表明の中で重点的なものは、憲法改正、教育再生、財政再建、行政改革、経済成長、日米同盟、アジア外交などであるが、どれも異議は無い。
経済財政諮問会議の民間委員も内定した。御手洗経団連会長、丹羽伊藤忠会長、伊藤東大教授、八代ICU教授の皆さんで、いずれも経済成長路線をリードする論客であり、規制緩和や自由貿易推進論者である。きっと役人は戦々恐々としているだろう。
自民党税調会長に与謝野さんが、小委員長に町村さんが就任した。両氏とも安部さんに干されたかと思っていたが、ちゃんと起用策を用意していた。町村さんはいずれ森派の会長になりそうである。額賀さんも津島派の次期会長に納まるだろう。こう観ると、安部さんは結構抜け目無く周囲に気配りしているようである。自民税調は今までのインナー委員が絶大な権力を持って密室協議していた時代に決別して外血導入を図った。泉下の山中さんが声を荒げてぼやいている事だろう。奢れる者は久しからずである。
安部内閣の人事で気になることは高市大臣の担当分野が6つもあって重過ぎることである。如何にやり手とは言え無理だろう。北方、沖縄、少子化、食品安全、男女共同参画、技術革新、イノベーションと今まで3人の大臣で担当していた事を一人で受け持つのだから一寸おかしい。逆に言えば今迄の大臣は余程暇だったということになる。これは一時的なもので、人選が固まり次第、分割すると思う。
安部さんの所信はたまわった。後は実行して結果を残す事である。

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