年明け早々、あの細木数子様に、
楯をついた
ケチをつけた
刃向かった
毒づいた
逆らった
弓を引いた
言いがかりをつけた
のが悪かったか、祟ったか、災いしたか、悪いことが続いている、というより良いことが全く無い!
@携帯をタクシーに忘れる!
AレンタルDVDを紛失!
B風邪をひく!
C年賀状の出来上がりが機械の故障で更に延びる!
DカーナビのDVDが失くなっていた!
Eハラ電気とまだ揉めている!(HDD録画消失の件)
Fブッシュから麻生にイラク派兵を感謝する親書が!
G派遣切り続く!
H(ここには書けないトンデモナイこと)にもなっている!
ま、幾つかは時間と共に悪い方向ばかりでなく進展はしているのだが、どうも気が塞ぐことの多い2009年なのだ。
細木数子の妖力は本物かもしれない。元々悪魔なんだからそらそうなんだろうけど。
とはいえ年は改まったのだ、いつまでも去年の事を書いているのは些か考えものだ。製作日記、漸くの最終回となるか!
■12月22日(月)■
東京公演初日!
12時半、ホテルを出る。雨を持ち堪えているような空だ
蒲田駅前からタクシー。およそ10分、1時前に大田区民プラザに着く。
会場の周辺は都内とは思えない寂しさだ。ビルの影は無く民家も密集はしていない。ここまで足を運ぶには相当の理由がいる。僕の芝居はその理由たり得るかどうか。不安が増大する。
因みに、東京のチケットは前売り(ピア扱い)で200枚と少々しか売れていない。3ステージに換算したら一回当たり70人だ。500の席に70!呆然の数字である。 勿論、その分、収支も厳しい。
玄関から中へ。
警備員さんに教えられて舞台裏へ向かう。
「おはようございます!」
塾生がおり、プラザの大道具さんもいる。
せめて挨拶ぐらいは元気に!
楽屋へ向かう。今度は次々と役者陣に遭う。「おはようございます」が飛び交う。
楽屋は三つ。男性用と女性用とメイクさん用。
男性用は30畳はあろうかという広さだ。哲ちゃんもこっち。
大道具、小道具、照明、音効のスタンバイが出来しだいりハーサルだ。
大阪以来、短くしたところ、変えたところが数か所あるが、全員でやるのは今日が初めてだ。
先ずは音効照明のきっかけ合わせとからである。道具の出し入れと位置の確認=通称場見りだ。仕切るのは城田と僕。その終了時間次第でゲネプロができるかどうかだ。
最大の難関はWキャストだろう。これは大阪ではやれていない!その荷重はノブシコブシの肩にのみ重い。
そのWキャストで吉村くんと徳井くんが役を交替するのは明日のマチネー。つまり、東京、大阪全公演を通じて一回限りなのだ。あからさまに言えば、その為の労は多いと言わねばならない。一回の為に、それ以外の五回と同じ労力を注ぎこまねばならないのだ。
しかし、芝居の在り方として、企みとして面白いし、何より、お客さんがそれを楽しみにしてくれるなら、それに勝るものは無い。ふと思いついた遊びだが、自己満足ではない感得がある。
只、大変なのはふたりだ。
それで、今日の稽古はどうする?役を交替しての稽古はやりますかと聞くと、今日はこれまでどうりでやらして欲しいとの返事。Wキャストの稽古は明日だけにし、今日は今日の役だけに集中したいと云う事であった。
その意と覚悟を汲み、僕もそれを了承した。
そしてリハーサル開始。
台詞がカットされたところ、音楽が変わったところ、動きを無くしたところ、全ての変更点を確認しつつ、台本に沿って修正し仕上げていく。
そんな中、ノブシコブシのふたりは、今日は交替しての稽古はやらないとはいえ、相手が役を演じている時は、その横で、同じようにその台詞を言い、動きを覚えようと懸命の努力だ。
一方、止む無き大道具の変更もある。大阪ではしゃぼん玉を飛ばした六幕だったが、しゃぼん玉製造機の使用不可で、風船を使う事になった。ガスボンベを持ち込み、手作業でのヘリウム(?)注入だ。ま、20個ぐらいですが。とは言え明らかに慣れぬ手つきの塾生達がワイワイとやっている。
役者にとっては更なる問題も生じていた。舞台の広さだ。大田区民プラザ大ホールは間口、奥行きともに15m!大阪amHALLの5倍はある!
――これについては大阪公演前の稽古の時から、東京は舞台が広いから動きが変わることになりますとは言って来たのだが――為に、最奥の中幕ははなから閉め切りにして、舞台の前部分七割を使っての芝居にした。とはいえ、広い。お蔭で椅子やソファーなどの間隔が広く、同じ台詞を言いながら歩いても大阪とは違って相手のいる所まで行きつかないと云うような事態が生まれもした。対抗策は早く動くか、大きく動くか、芝居を変えるか、まいろいろだが、その都度役者が体で対応しなければならなかった。
小返し、繰り返し、やり直しの連続だ。仕方がない、芝居作りの基本は「もう一回」だ。
果たして、そうこうしている内に、あっという間に開場時間。今回もゲネ出来ず!
「大阪で三回やってるから、大丈夫!」と誰かが慰め気味に言った。
役者陣は楽屋へ戻り、メイクと着替えだ。
今回の楽屋にはモニターがあり、客席と舞台の様子が分かる。準備をしながら、客の入りが気になる。
開場して数分。まだ五人ほどだ・・・・
十分、まだ二十人・・・・
二十分、三十人・・・・
三十分、・・・・
楽屋に溜息と諦めが・・・・
五分押し、七時五分に開演!!!!!
客は少ないが、芝居に影響は無い!
プロローグ。青く黒い闇の中、芝居の初台詞は中村譲演ずる驚異の男刀力(とうりき)の広東語だ。
対する、藤原君もゆっくりと渋い。
ふたりの交渉が終わる。笑い声が響いて、出来も格好もいい(自画自賛)タイトルVTRがスクリーンに!
音楽はシルクドソレイユの「KA」より「BATTLEFIELD」!
僕等はこれをステージ裏から見る。毎回、これは見た。VTRではあるが映像は無い、『牛馬頭のゲーム』というタイトルから始まって、後は役者名だけが次々と出てくるだけだ。だが、僕はこれに鼓舞され、武者ぶるいして出番を待つのだ。
僕等はと書いたのは、裏方である塾生達もこのタイトルVTRのカッコ良さには納得し、僕と一緒に毎回裏から見ていたからだ。
さて、一幕、五人が板付きで始まる。水野くん、讓くん、哲ちゃん、帽子屋、そしてカオルコさん。
途中、教祖の為に命を張る青年・棚衣が走り込んで来る。徳井くんである。
ここから八幕までで、この六人が何故死のロシアンルーレットをやることになったかその事情や理由や背景が描かれる。時に宗教の館で、時に総合商社吉超の邸宅で、時に真っ赤なウソとして。
その為の場面転換が一仕事、大仕事、大童だ。それは大道具の出し入ればかりでなく、役者の着替えも関わってのことだ。
だが、大阪に比べれば、舞台袖が広いと云う事があって、東京は随分とやり易かったはずだ。ただ、どう頑張っても必要最低限掛かるものは掛かる。
その合間をどう繋ぐか。
そのアイデアの出来と、テンポの良さが芝居をかっこ良くし、観客を飽きさせなくするのだ。芝居の評価の大きな部分でもある。
今回はそこを、ニュース番組、ロケ映像、緊急漫才などでカバーしたが、格別新しいと云う手法ではなく、時間をもっと掛けていればもっと出来の良いVTRが出来たのにと思うばかりである。
そこに少し執念が足らなかったかという反省である。
東京初日。舞台は破綻無く進んでいく。淡々とと言えば言えなくもない・・・恐らく観客の少なさが、反応の小ささがそうさせているのであろう。
初日、観客数、100未満だったはずだ!!!激痛!メチャ痛っ!
舞台裏で赤字の額が僕を襲う!それを打ち消して、四回の出番に挑むかわら長介だった!涙。
因みに、その四回の役どころは、
〔一〕 新興宗教今日現在教幹部・荷駄了燕61歳(二幕)
〜塾生製作の教団の制服
〔二〕 総合商社「吉超」長男・木津晴彦43歳(四幕)
〜自前のズボン、シャツ、カーディガン。全部ピンク、に男性用かつら
〔三〕 カトリーヌの先祖の亡霊・鬼貫ルイジアナ享年33歳(七幕)
〜オカマさんなので真っ赤なドレス。大阪ミナミで4000円。ハイヒールは新宿で2000円。あたまは地で。
〔四〕 同上(十二幕)
〜衣装を変えて登場。ミニスカ、フードジャンパー、パンスト、ブーツ。に、女性用金髪ストレートかつら
でした。
そして九幕からはメインの六人が芝居を作り、客を引っ張る!
愈々ロシアンルーレット開始!
先ずは六人が幕前に出てサスライトの下で次々と現下の心境を吐露する。
バックに流れるのはまたまた「シルクドソレイユ」、「アレグリア」より「IRNA」だ。
このシーンへの導入曲として、僕はこの芝居で二番目に好きな曲だ。
舞台前面に並んだ六人の台詞。
●しなだ(カオルコ)
「どうしよう!やっぱり最初に行くべきか。でも今までに最初に攻めに出て上手くいったこと無かったし・・・ううう、先を越されるのも嫌だし・・・やっぱりこれ私に向いてないんだって!」
●棚衣(徳井)
「非夢。不夢。無夢。人夢全夢今臨現夢教!OH%3hu$EX#“<‘!(お題目を唱える)」
●時折(帽子屋)
「くそおぉぉぉ!やるで!何やボケ!行けるっちゅうねん!それも一人目に行くで!確立同じことあるかい!早い方が有利やっちゅうねん!ま、言うても、六人目にならんかったらええねん。そうや・・・」
●カトリーヌ(今里哲)
「そうね、いきなりは品が無いわね。ご先祖様もそれは喜ばないわ。失敗するにしても鬼貫(おにつら)家のプライドはキープしないと。呪われた人生におさらばするなら、気高さと余裕と、そして少しの諦め。ま、三番目ぐらいでいいんじゃない」
●刀力(中村讓)
「順番か、最初に行くのは吉超か宗教ボーイか。いずれにしても私に一番は無い。それは私の美学に反する。ベストは五番目なのだが、果たしてそこまで弾が出ないで来てくれるかだ。ふふふ。悩む。そしてインタレスト!」
●樫須(水野透)
「ロシアンルーレット、やっぱ、最高!」
それぞれの意志の強さ或いは弱さ、そして置かれた立場と事情に左右されながら引き鉄を引く六人の思惑が交錯する。
結局、最初に引き金を引いたのは棚衣。
次いで、しなだ、
そして、カトリーヌ。
迫真(?)の演技で引き鉄を引くのだが、どうせ死なない事は判っている話だ。万が一、滝沢修、杉村春子、仲代達矢、大竹しのぶを超えた迫真の演技であっても、音だけで本物の弾丸は出るはずがないことは判っている。
観客の拠り所は、誰の時に弾が出るのかという芝居の流れの緊張と予測のせめぎ合いだ。
そして三人は見事に成功する。弾が出ないのだ。ひとり2000万円の権利を獲得して、後は残った三人の誰に弾が飛び出すのかを見守るだけだ。
残った三人とは、刀力、樫須、そして時折。
ここで予想外の事が起きる。物語の基本、(起・承・転・結)でいうところの「転」だ。
時折がロシアンルーレットを否定し、皆を罵倒してその部屋を出て行く。
東京での演出を変えたと書いた。初日、帽子屋お松、上々の出来でした。多分、彼も手応えがあったはず!
さて、その事により、とんでもない事態が現出することになった。残り三回の内、二回を刀力が引き受けなければならなくなったのだ。それは予め主催者「牛馬頭」と彼との間で決められていたことなのだ。無論、彼は全く怖気づくことなくそれに従う。
いずれにせよ刀力か樫須、どちらかが死なねばならなくなったのである。
その事態にさらに拍車を駆けるように、油を注ぐかの如く、もしくは逆に水を差すかの如く、金の亡者しなだが人に在らざる一計を思いつく。
だがそれは彼女からではなく、それを見破った刀力の口から語られる。
「カトリーヌ、彼女はね、私と樫須、どちらが生き残るか、あなたと賭けたいんですよ」
「何を言い出すと思ったら、この女。どこまで業突く張りなの。自分の命を賭け終わったと思ったら、今度は人の命で金儲けをしようなんて!」
と、飽きれるカトリーヌだが、彼女もその賭けに乗る!
そして、そこに棚衣もしゃしゃり出て来るのだった。
実は、時折社長がいなくなったことで、一億円を五人で分ける分配から四人で分けることになり、今や分け前はひとり二千五百万円になっていたのだ。
それを三人で賭け合うのだから、勝てば七千五百万円という大勝負が成立したのだった。
さあ、芝居の装置と設定は当初の想定から格段に派手で緊迫したものになった!人間の欲と得と毒が噴出し、狂気の臭気が五人の感覚を更に非人間なものに仕立て上げてしまった。
もう、この先は地獄しかあるまい!
前回、僕がこの芝居をコントバージョンでやった時、僕は樫須役を演った。狂気の自殺願望男だ。
今回は演出を重く見てメインの六人には業と入らなかった。それが効を奏したとかではなく、六人の遣り甲斐は相当ではなかったかと、呆れた手前味噌だが、察する。
無論、その分、僕には荷が重いわけで、よくぞ演出に回りにけりという心境だが、殊に、ここからクライマックスに向けての、水野くんが演じる樫須の狂気・奮闘・突出・独悪ぶりには拍手と感謝である。これも我田引水ですいません。
さて、この後の賭けの結果、そして何よりロシアンルーレットの結果は、流石に芝居を見に来て頂いた方の特権とさせて頂く事にして、東京初日、恙無く終了であった。
会館の公的性格上、10時には完全撤退しなければならず、終演後の挨拶も先ずはお松さんによる役者紹介、そして僕から「明日はノブシコブシがWキャストです!お知り合いにこの芝居を是非にとお勧め下さい!」とお願いして、「希望の轍」で終幕。
会場の目の前の駅、東急多摩川線下丸子からで蒲田へ出て、飲みましたが、今夜はそれぞれにでした。
疲れと安堵と不安の入り混じった酒でした。
明日の入りばかりが頭をよぎる。
無論、期待薄だ。
ははははは、また終われませんでした!

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