M−1準決勝報告、大阪の部。勝手で悪いけど、書きまくるぞ!
【1】 ストレートタイム(アマチュア)
〜何でも、ホームランにしてしまう、馬鹿パワー。恐れを知らぬ素人芸も、流石に準決勝は畏縮したか、3回戦のほうが勢いがあった。来年以降への試金石として収穫は十分だったのではと推察します。
【2】 日刊ナンセンス(吉本興業)
〜敢えて言おう、去年までのネタ。ショートコントをかましてお
いて、その最後に「やや受け〜」「大受け〜」「ややすべり〜」(※大受け〜は無かったかも)と、自らのネタに判定を下し(茶化す)て、笑いへ繋いでいたが、本当にお笑いが好きなら、或は自分たちのお笑いを自負するなら、ショートコントのオチで終るべきで、その判定で笑いを取ると言うのは、ごまかしに近いものを感じてしまう。拠って僕は全く評価しなかったネタだ。
そして今年。それは無くなり、普通になった。え?普通になっちゃダメでしょ。僕は評価しないと言ったが、自分たちのやり方を発見、発明したんだから、今年はそれを超えて、更に自分たちのやり方を追究してくれないと!もう1回言う。普通に戻っちゃダメ。
【3】 デニッシュ(山中企画)
〜フランス人監督と岸恵子は僕らの年代には、つかみとして面白かった。ネタは「じゃ、やってみよう」と「ヒーロー」⇒「野坂昭如と大島渚」⇒「ゾウリムシ」⇒「大相撲」⇒「フレンドパーク」⇒・・・この通りではなかったかもしれないが、ドンドン飛び火していく!つなぎ方も深浅があって、笑いが起きる。敢えて言うなら足らないものは・・・‘衝撃’だろうか。
【4】 プラスマイナス(吉本興業)
〜3回戦で初めて、彼らの面白いネタを見た。その同じネタで挑戦したが、通じなかった。気になったのは、準決勝では岩橋(ボケ?)がボケた後、何も言わないで‘間’で演技をした事だ。受けなければならないその間がことごとく客席に通じていなかった。だが実は僕には、間を取っていると言うより、客に、或は準決勝と言う空気に気圧されたと見えたのだが。
【5】 スマイル(吉本興業)
〜「何でも上手く言い換える」ネタだ。このところ彼らのネタはこれだ。そのせいか、やり過ぎでテンポが良過ぎて、あっさりと終ってしまった感があった。例えば、吉高が人生は「人それぞれ」と言うのだが、それに対する瀬戸の突っ込みの早いこと。吉高が言い終わってないのにもう入って来てた。(VTRがあれば見ておいてください、スマイルさん)漫才に限らず、そう、勝負も、いじめも、セックスも、国会議員も馴れは禁物です。
そして、このコンビの場合、それは即、吉高のパワーダウンに繋がるということだ。初心に戻って明日から!いや、今日から!
【6】 藤崎マーケット(吉本興業)
〜「ラララ体操」だが・・・あのラッキー池田にお墨付きを貰った動きだそうだが、それならもっと見せ付けて欲しい。
そして、ネタだが、それぞれの小ネタが行き切っていない。どこかこれでいいだろうみたいな匂いがする。敢えて言うなら、そこが藤原的なのかもしれないが、一考を願う。
【7】 カルパチーノ(吉本興業)
〜「事故とか・・・減るし」が最大だった。動きはもっと、もっと要勉強。ヘタウマなんか要らないし、今はそれでは売れません!プラス、轢かれそうになった子供を救ける・・・そこから、次へは行けないのか!言わば、この組もネタフリだけで終っている気がするのだが。観客を、審査員を驚かす展開を考えても、損はしないし、誰も反対はしない。
【8】 ギャロップ(吉本興業)
〜「外国版テレビショップのアフレコ」ネタ。悪くは無いがこのコンビもそのアフレコ遊びで終っている。例えば「車に傷が付いた」というフレーズはこのネタを膨らますキーワードなのだ。「傷付く」のは車だけではない。人も、動物も、地球も傷付く。もう一歩踏み出せば、ネタは大きさと深さを増すのだ。それは、ネタに対し‘これでいい’と言わないことだ。ネタへの執念、それが無いと上へは、決勝へは行けない。
【9】 天竺鼠(吉本興業)
〜皮ジャンにサングラスの川原が勝手に別の話へ転換するという十八番ネタ。だが、それはどんな話に飛んでも、どんなレベルに飛ばしてもいいからハードルは高い。下手をすれば、その人(川原)の勝手と思われる部分もあるので笑いは爆発しない。やはり(○○○が来るぞ、来るぞ、来るぞ)と言うネタフリは重要で有効なのだ。今後もそれを承知でやると言うなら、川原の個性しか答えは無いのでは。
【10】天津(吉本興業)
〜向井のあのキャラは本当に有効なのか!今はそう思うのみだ。
【11】とろサーモン(吉本興業)
〜「(女の子に)もてる方法教えたる」というネタ。久保田というキャラだからなのだろうが、ストレート過ぎてネタの幅が狭い。ネタ選択が安易だ。(女の子にもてたい)、そんな普通の若者の日常会話のようなネタを彼らに限らず、芸人ならば、やるべきでない。やって欲しくない。視点、発想、切り口、何か一点でいい、観る人の度肝を抜いて欲しい。それが、芸人の醍醐味のはずだ。
【12】なすなかにし(松竹芸能)
〜若いのに、あの喋り、口調、間。どこかイライラさせらるコンビだったが、今年の後半ぐらいからだろうか、ネタへの冒険心、開拓心が感じられて、それがもともと持っている技術力と重なり、面白さが増大した感がある。勿論、僕のイライラも消滅した。今回も健闘だった。さて、次の段階へは・・・年間最低でも20本の漫才を作れば、その中に光明を得られるのでは。つまり、後やる事は面白いネタを作るだけなのだ。そこまで来たコンビだと言うことだ。
【13】にのうらご(吉本興業)
〜このところ一押しの「トイレ」ネタ。常識人みたいなことを言うが、賞レースには不向きなネタではないだろうか。いきなり嫌悪感を抱く人がいるということだ。あのネタの馬鹿さ加減、あの徹底具合で、もっと爆発を呼ぶ他のテーマはきっとある。言っておくが僕は嫌いではない。
【14】NON STYLE(吉本興業)
〜井上の「いきり」を石田が馬鹿にする。比較論だが、今年のMBS漫才アワードの時ほどのパワーは出ていなかった。そして、基本的な疑問をひとつ。井上は「いきっ」ているだろうか?僕は、井上はちょっと格好をつけているだけのような気がするのだが。要するに中途半端だ。演技が上手くなくても構わないが、本気で「いきっ」たらどうだろう。ただ、いつまでこのパターンで行くのかという課題もある。
【15】ジャルジャル(吉本興業)
〜「This is a pen」の大冒険ネタである。徹頭徹尾「ディス イズ ア ペン」と言えない。或は言わないネタ。しかし、これも僕に言わせればフリだけで終っている。では福徳は他の英語はどうなのだ?I am a boyもやはりああなるのか?或は、ひょっとして、たったひとつだけちゃんと発音できる英単語があったりして!或は、体の一部をどうにかすると突然正しく、しかも物凄く流暢に発音できたりして!或は、内容が罵倒、悪口的なものは完璧な英語だったりして・・・あれだけで4分を戦い抜き、そして勝利しようとするのは安直だ。
【16】アジアン(吉本興業)
〜「演歌」だった。ちょっと新鮮なアジアンだった・・・が、あの歌の笑いどころが散漫だった。(よお出来とる!)と言うネタの作りではなかった。ラストへ向かって、笑いが殺到するような形と勢いが見たかった。
【17】鎌鼬(吉本興業)
〜「言葉は力」というフレーズは好きだ。山内のキャラ作り、こなし(演技)も好きだ・・・が、それがこじんまりしている。味はあるのだが、そしてそれは大切にするべきなのだが・・・いっそ、もっと内面へ、山内ワールドへ客を引き込むかだ。
【18】ダイアン(吉本興業)
〜「カリスマ美容師」なのだが・・・もっと考えてみよう。西澤のカリスマ美容師はあんな事では済まないはずだ。客を拉致するか、龍宮城へ案内するか、過去へ送り込むか、憑依するか・・・それぐらいはしそうではないか。あれでは僕は不満だ。
【19】千鳥(吉本興業)
〜ある男が僕に言った「千鳥が漫才の凄いやり方を発見しました」それが今回のネタだった。「桃太郎」 敢えて「凄いネタが出来た」と振って、落とす。当たり前だがハードルが上がる。そして、そのハードルを千鳥自身も越えられないで、逃げた。つまり‘すかした’。そういうネタでしかなかった。「虫取り」にしろ「中世ヨーロッパの騎士」にしろ「あなた子供ができたみたい」にしろ、特に「橋龍」にしろ、千鳥は、なかんずく大吾は攻める。すかす大吾は見たくない。
【20】りあるキッズ(吉本興業)
〜嘗て無く、散漫な彼らのネタだった。なんだか稽古不足のようにも見えた。彼らもM−1これがラストチャンスだったらしい。きっと、ものすごい悔やみを残したのでは。力まない、普通のネタで十分な笑いが取れる希有なコンビなのに、だが、M−1が全てではない。
【21】ロザン(吉本興業)
〜ネタにおいて試行錯誤を繰り返しているコンビだ。そこには高学歴のふたり、なかでも宇治原が京大卒ということが大きく横たわっている。そして、ラストチャンスの彼らが今回選んだネタが菅ちゃんの「なんで君」。健闘だった。そして、彼らの試行錯誤はまだまだ続けられねばならない。学歴に煩わされる事無く、結局やりたいネタは何かということではないのか。
ふう、やっと終った。一週間も経って、大阪大会の中には記憶が薄れて書くのを諦めたコンビも出てしまった。僕自身が残念だ。
そして、決勝進出者については敢えて書かなかったが、彼らについては24日の決勝を見てからにしようと思う。その24日は、今年もまた塾生と一緒に、この部屋で鍋を囲みながら見ることになる。
今年は30人近くなるようだ。
ともかく、遅ればせながら、準決勝、ご苦労様でした。
今からレンタルしてきた「パイレーツ オブ カリビアン〜デッドマンズチェスト」を観る12月16日の夜十時なり。

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