今日は9月28日だ。二日前の金曜日、魁塾八期生の卒業公演『ロケットエンンピツ』が無事(?)終わった。
「ワッハ上方」だった会場を、収容人数五分の一程の道頓堀「えびす座」に移しての公演だった。
小屋を変えた理由に橋本府政の財政緊縮政策は関係していない。
お笑い作家を目指して半年の若者にはあの大きさと、芸人さんとの勝負=台本提供はきついと判断したからだ。
その為、今回の出演者は塾生の友達ふたり(浅原徳くん、神谷悠貴くん)の助けを得て、後は全部塾生が担った。
課題=【二カ月で、お金を取って人に見せられる自分の作品を作る】
それが叶った者、叶わなかった者。それぞれに反省し、何かを得て前進したはず。そして何よりも、不束な公演を見に来て下さったお客さんに感謝である。
勿論、塾長の僕もである。有難うございました。
さあ、これで今年の僕は年内芝居一本、一直線、一心不乱である!
■9月4日(木)■
塾生の最終稿を元に僕の書き直しが始まった。同時に、塾生も再度自分の作品の書き直しだ。果たして、どっちが採用になるか。只、それを決めるのは僕なので、相当僕が有利だ。
今日の改稿は平成ノブシコブシのWキャストの役。その男が何故ロシアンルーレットをやるはめになったのかが本人の口から語られる場面である。
三期生・塚腰祐介の作品だが、如何せん、大人しい。登場人物の顔、体、言葉、そして対立関係、上下関係、位置関係・・・どこにも計算も企てもない。客に何を見せようとしているのか判らない。客を楽しませようとしているとは思えない。書いている本人は楽しかったのだろうか!
これは、今回どの生徒の作品にも言える事だった。
この日から、五日連続で書き直したのだが、どれもそうであった。
僕の書いたものが百点でも、答えでもないが、もう少し書けてないと・・・
台本もだが、スタッフも大変だ。「照明」「音効」さんがまだ決まってない!
早く決めて、チラシに名前を載せなければならない。実はチラシ製作も遅れているのだが、こちらは既に発進しているのでまだいい。「照明」「音効」は候補さえ上がっていない。
またまた二重発注になるが、この日イーに僕の芝居に参加して貰える「照明さん」と「音効(音響効果)さん」を知らないかと連絡、相談。
「探してみます」という返事。はてさて!
■9月5日(金)■
今日の書き直しは帽子屋お松くんの役どころ。
僕が書いたものは結構好きな芝居になった。ふざけと仕方なさが漂う空間だ。
果たして、五期・上野大輔はどんなふうに書き上げてくるのか!
■9月6日(土)■
今日は今里哲ちゃんの役どころだ。
シャンソンが歌える五十がらみのゲイ。
七期生・河内愛理がここ二カ月ほど苦闘している。彼女は中世ヨーロッパを背景にしてゲイの愛と苦悩を書こうとしている。僕は、単純に人数で勝負することにした。
■9月7日(日)■
贅沢な事だ。木曜日から今日まで、マンションに籠りっきりで芝居の台本を書いている。
あ、土曜日のレギュラー番組会議は出ました。
一日に平均で7時間ほど芝居の中身を考えている。お蔭で、脳にアドレナリンか、エンドルフィンか、ドーパミンか知らないが、そんなものが常に無く分泌されて、興奮が収まりきっていないのだろう、いざ布団に入って寝ようとすると全く眠れない。
でも眠くない。恐らく五十八の体には相当良くないだろう。
で、今日はキスノカオルコさんの役だ。
四期・北方克幸の原案をヒントに、大幅改稿!カオルコさんを随分悪者に仕立て上げた。
■9月8日(月)■
カオルコさんを改稿に次ぐ改稿。
この間、生徒達からも更に書き直したものが送られてくるが、納得も合点も満足も行かない!
結局は、生徒の発想を出来るだけ生かしながら、殆どを僕の書いたもので行くことにし、明日の塾に持っていけるよう、パソコンからコピー。
ただ、まだ最後までは書けていない。この段階で全体の六割。文字数で約39,000。
原稿用紙ざっと100枚!大過ぎる!これでは、二時間半を超える芝居になってしまう!
だが、そんなものだ、ここから稽古をしながら、演出しながら、カットして行くのだ。
その作業が、いよいよ明後日から始まる!
不安は決まっていないスタッフと、客の入り!
■9月9日(火)■
塾の日。
八期、卒業公演に向けての台本検討が続く!
授業終わりで芸人さん(半分アマチュア的な)がネタを見せにやって来てくれた。有難いことに魁塾にはこういう関係が以前からある。お笑いライブ「キタイカン」との繋がりがあるからでもあるが、今回はちょっと別ルートだ。
彼らからすると、ネタを見て貰いにやって来たのだが、生徒も勉強なのでお互い様だ。勿論、僕も見せて貰って感想を言う。
因みに、今日来てくれた芸人さんは、
▼横山くん(芸名ではないハズ)
▼コンフィング
▼もやしめじ
の3組。
こういう交流を経て、芸人と作家が互いに認め合い、それが台本に結びついたりするのだ。もの作りに人間関係は相当重要です。ま、今更ですが。
書き上げた台本をスタッフの織田さんに渡し、明日の為に20人分コピー!
■9月10日(水)■
とうとうやって来た!芝居の稽古の初日!
場所は東京、御徒町!中村(壮)くんが必死で探してくれた。
『東京魂源堂』といういかめしい名の稽古場だ。
ホームページによると、2005年に結成されたCHANBARA Projectの専用稽古場として2007年に開設されたものだ。
二階建ての建物内には三つの稽古場があり、今日はその中の一番広い部屋に全員集合だ!
因みに料金は一時間二千円。本日は17時から21時までなので、計八千円也。
さて、大阪からは僕と中村(壮)くんと、塾生(城田、塚腰、河内、上野、池本)が五名。彼等はワゴン車で夜っ引いてやって来たのだ。これもすべて経費節減の為。そしてもうひとり帽子屋お松くん。
哲ちゃんは岐阜から。
そして、東京陣は中村譲、キスノカオルコ、リットン調査団のふたり、平成ノブシコブシ、イー☆リャン、亀谷さやかという顔ぶれ。
なんと、今日は、出演者14名中、一番忙しくないであろう浜口浜村だけがお休みなのだ。但し遅れて参加。
三々五々集まってくる。生徒は慣れない場所と空気で緊張している。役者陣は早々と到着次第配られた台本に目を通している。
台本を書いた者としてはその反応が気にはなるが、まだ台本はマイナス地点だ。ここから、読んで読んで、演って演って、台本に血が通い出す。しかも、台本はそれぞれの役者の腕、或いは体、或いは頭の中で別々に成長していく。同じ台本だが、違う生き物(?)になって行くのだ。そのスピードと変化の在り様は、そのまま役者の中の役の成長と軌を一にする。
そこは期待しつつも、成否の全責任は僕にある。身が引き締まる時間だ。
やがて、リットンの藤原くんが最後に到着して全員集合!
稽古場の中央に椅子を円状に並べ、思い思いに座って貰い、先ずは僕の御挨拶なりーっ!
以下、かいつまんで。
「今回はよく僕の芝居にOKを下さいました。色んな関係の中から、こんな面白そうなメンバーに集まって頂いて感謝しています。台本はまだ半分ほどですが、今から三カ月、みっちりと稽古して、今までに無かった芝居にしたいと思います。頑張りましょう!」
んな感じだったかな。
続いて、役者自身の自己紹介とスタッフ紹介。
中では、いきなり哲ちゃんがショーマンぶりを発揮、女訛りの大阪弁で、ひとり五分ぐらいは喋っていたのではないだろうか。好対照だったのが、帽子屋お松くん、芸人にあろうことか自己紹介が大の苦手(らしい)。真っ赤になりながら、さっさと終わった。
続いて、台本を手に、その位置のまま、第一回台本読み合わせ!
ざっと九〇枚。
プロローグから、一幕、二幕、三幕・・・・今日用意した全部を読み終えて、時間はと中村(壮)くんに聞けば「100分!」
ええ!唖然!まだ台本の量からすれば半分なのに100分て!
どれだけ割愛しなければならないのか!先が思いやられる!自分のせいだけど・・・
そして、この読み合わせで出てきた課題は二つ。ここには書かないが、それを本番までに何とかするのが僕の役目だ。
本日は以上。予定よりは早いが今日は読み合わせもさることながら、顔合わせが第一の目的!
カオルコさんが知っているという近くの居酒屋へ、行ける人は参加してくださーい!と言ったら、マネージャーも含めて、全員参加!
この雰囲気と言うか、早過ぎる連帯感。きっと良い出だしに違いない!と僕は思ったものだ。
結局20名を超す打ち上げ!あちこちでいろんな会話が弾んでました!
で、僕は数名の塾生と朝8時頃まで飲んでました!
■9月11日(木)■
今日は12時から16時まで、昨日と同じ稽古場を借りていたのだが、役者の揃う率が低いので、急遽、取り止め。
で、朝まで飲んだ後、早めにチェックインしたホテルで、台本など書きながら(パソコン)も、ゆっくり過ごして、17時、番組収録(ダウンタウンDX)に向かう。
ついでに大阪から来た塾生の内、明日も参加するふたり(城田、塚腰)が番組見学。
この日、厳格で陰鬱な事が起きた。お笑い作家の根本を問われたような出来事だった。青天の霹靂でもあったが、僕は58歳であるが十分な答えを用意できなかった。しかし、相手への疑問も多く湧きあがった。
ここにこれを書くことさへ、その相手は非難するかもしれない。
たまたまこれを読んだ方は、何のことか全く判らないでしょうが、せめてこう書くしか今の僕には対処法がない。
これを書いている今日は実は9月29日。その日から18日も経ったというのに、これを書いている僕の心は恥辱と煩悶と憎悪にさへ溢れ血を流す。
いつの日か、きっとどちらかが「やはり、あれは間違っていた」と思うのだ。
■9月12日(金)■
14時より、「ダウンタウンDX」レギュラー会議。
続いて本日の稽古は16時〜20時。場所は同じく「魂源堂」
参加者は「リットン調査団、亀谷、イー☆リャン、浜口浜村、そしてかわら長介」
このメンバーで出来るのは六幕となんとか二幕。
代役を作家が勤めながら、4時間の稽古開始!
まだまだ演出と云う訳には行かない。誰もが本を手に、自分の役と他の人の役とを探りながらの稽古だ。
途中から、立ち稽古。動きを決めることで、台詞を覚え、その意味が明確になってくる。と言っても、動きでさえまだ流動的で、模索的なものだ。
さて、一回目とは別の課題が浮上した。浜口浜村の歌だ。それはボーイソプラノ的な高音を望むシーン。勿論、20歳を超えた彼らに土台無理な注文なのだが、ふたりの歌声、発声にはその雰囲気すら覚束ない。
本番まで二ヶ月ある。今はまだ楽観視しておこう。
稽古終わりは城田と新幹線で大阪へ。もう一人の塾生・塚越は夜行バスで帰ったのだったっけ?いや、運転して来た車か?
車中は睡眠が主。
■9月13(土)、14(日)、15(月)■
この間は大阪へ戻り、初めての稽古の感触や反省を踏まえて、台本の手直しを毎日!
でも、これが楽しい作業なのだ。芝居にどんどん肉が付いて行く感じで、イメージが広がり、いろんな遊びや演出が頭に浮かぶ。次回にそれを伝え、芝居が具体化していく。
■9月16日(火)■
塾の日。
19時開講だが、その前に今日はもりしたじゅんや君が出来上がったチラシを持って来てくれた。
彼が遠慮がちに出したその作品は、シンプルで高貴なデザインだった。紫のバックの中央に明朝の縦書きで、「牛馬頭のゲーム」とある以外、殆ど文字は目に入ってこない。大胆ではある。その文字の後ろに重なるように二丁の旧式の拳銃が彫ってある(感じ)。
彼は、色んなチラシに混じった時、「何これ?」と手に取って貰えることを意識したという。その目論見は成功していると見た。
ありがとう。そして御苦労さま。
だが、やや大人しい気もした。それで、後ろの拳銃をもう少し浮き上がらせて欲しいとだけ伝えて、最終出来上がりをお任せした。
日時、場所、料金、出演者、スタッフ、などは全部裏面である。
しかしだ、まだスタッフが未定の個所がある!「音効」「照明」そして、なんと「舞台監督」!
それらを決定してチラシが出来上がる。早くせねば!
さて、明日は東京!三回目の稽古だ。
参加者は、リットン、イー、浜口浜村、亀谷・・・少なっ!
不安、焦燥、疑念、後悔、邪推、妄執、断念、殺意、妥協、逡巡、そして希望!

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