ついさっき、巨人が負けた。今年のプロ野球日本一は西武ライオンズに決まった。
長嶋茂雄ファン故に、今日まで巨人ファンである僕は、彼がユニフォームを脱いでから年毎に熱は冷め、今はもうそんなに悔しくない。
それが痩せ我慢でも、皮肉でもなく、ホントなのがちょっと悲しい。
という訳で、今日は11月9日、日曜日。大阪公演は二日前に終わっている。
やはり少しは弛緩したと感じる体と心であるが、日記は公演1週間前、ラストスパートの真っ最中だ。
ところが現状は混沌の中だ!
■10月27日(月)■
「明石家電視台」の収録日。
カオルコさんが着物を着るので、髪と着替えの時間短縮の為メイクさんが必要になった。
カオルコさん本人も、知り合いのメイクさんと連絡を取ったが、これまた何せ直前でNGが続く。
中村(壮)君も知り合いどころか、飛び込みで美容院を当たってくれたが埒が明かない。
で、僕は「明石家電視台」のメイクさんにお願いしてみたのだが、ここはギャラの面で折り合いませんでした。
ホント、一度、お金を気にしないで芝居を作ってみたいものだ!
で、ふと思い立って、と言うか、最初から彼女に頼めば良かったのだが、20年近く前から同じ番組でご一緒している‘さよこ’さんところ――現在はMOREと言う会社で、大阪の多くの番組にメイクさんを送り込んでいる。彼女はそこの社長なのだ――にお願いしてみる。
ところが、彼女となかなか連絡が取れない。
しかし、結局は、彼女が既にスケジュールが埋まっていた人の仕事を何とかやりくりして、メイクさんをひとり都合付けてくれたのだ。感謝、感謝、感謝!
因みに、それが決まったのが3日後の30日。少し風の強い日、新宿の大ガード近くの横断歩道を渡りながら、その電話を取った。
着ぐるみはギリギリ間に合う感じだ。
それを着ての稽古は前日(11月3日)のみになりそう。そして、今回の芝居でこれが一番金が掛かっている。でも岡崎さんが何とか20万円以内にしてくれるそうだ。破格と言ってよい!
その岡崎さんと、ニュースを読んでくれた松井麻衣子アナに招待券を渡す。と言っても1枚づつだ。うう、みみっちくてスイマセン。
■10月29日(水)■
12時、東京です。
中野、ポケット。
さあ、今日は音効、照明さんが初めて来てくれる日だ。
本番まで、あと6日。芝居の常識として遅過ぎることは重々承知。そこは、集中力を高めて、少しでも奪回を心掛けるしかない。
しかし、哲ちゃんが欠席で、ノブシコブシは途中からの参加である。
塾生は城田、塚腰、ゴッド、竹村と必要最少メンバーだ。
無論、そこは代役を立てて、プロローグから終幕まで、芝居の全容を大塚(照明)さんと、増田(音効)さんに、僕のイメージや意図を伝えながら見て貰う。
途中、7時頃、食事の為の休憩を挟む。
中野での食事はみんなで揃って近くのセブンイレブンへ買い出しに行く。
それぞれが棚から好きなモノを取って、次々とカゴに入れる。
「何にしようかなぁ!」
「これこの前も食べたし」
「塚腰はまたこれ食っとけ!」
「これ美味しいと思う?」
ワイワイと楽しい時間だ。
最後に毎回僕が「ビール、飲んでもいいよ!」と叫んで、数人が缶ビールを手に取る。
スタッフも入れて毎度10数人分。ざっと1万円強だ。無論、これも製作費から。
稽古場へ戻り、稽古場のあちこちで思い思いに食事。
「ごちそうさま」の後、ラストまで行って、21時、今日は終わり。
大塚さんも、増田さんも、芝居については何も言ってくれなかったが、少しは「面白い」とか思って貰えたのだろうか・・・?
その後は、ゴッド、竹村と今夜もゴールデン街。
阪神岡田監督がよく来たというオカマバーに入る。ママは若い時北島三郎の弟子だったそうだ。
小腹がすいたので、帰りがけに「ポプラ」という居酒屋兼めし屋に入る。何と言う料理だったか忘れたが美味かった。また行こう。
■10月30日(木)■
昨日と同じ中野、ポケット。
今日は哲ちゃんが久しぶりの参加。しかし、ノブシコブシは欠席なのだ!
ところで26日の日記には書き忘れていたのだが、あの日は結局稽古時間が来てしまって、医者には行けなかったのです。で、今日、ノドの痛みに耐えられず、稽古前に中野駅前の内科に行く。でも、医者へ行くと往々にしてそうなのだが、こちらが期待していたような返事と治療を受けられず、薬だけを貰って稽古に向かう。
保険証の期限は明日。ギリギリでした。
さて稽古開始。
今日は、照明の大塚さんと音効の増田さんは舞監(ぶかん・舞台監督のこと)の城田と一緒に東京公演の会場である、大田区民ホールに下見に行ってくれたのだ。大塚さんはそのまま大阪へ戻り、増田さんだけが再び稽古場に来てくれた。
恐らく、入れなければならない音や曲が意外と多くて、急遽そうしてくれたのだ。予定外の日程になってしまって、スイマセン。勿論、アリガトウでもある。
舞台転換や、着替えや、音楽のタイミングなど、芝居の各所を出来るだけ本番に忠実に実演しながら、芝居全部の時間を計った。2時間8分。
だが、これは舞台転換にしても、着替えにしても本番と同じには行っていない。大道具がなかったり、着替えもこれぐらいで行けるだろうと言う試算だ。更に役者自身の間も変わってくる。
これよりは伸びる見通しだ。大阪はいいが、東京はまずい。何故か・・・それはいずれ。
この日、稽古の合間に途中で挟み込む映像を監督城田、カメラマン上田で撮影する。
撮影時間、10分。2テイクでクランクアップ!
カオルコさん、ごくろうさま。
17時、僕は「ダウンタウンDX」の収録に行く。
隔週木曜日2本撮りというのが基本のスケジュール。今日は1本目途中から参加。
終わって、今夜はひとり新宿の夜。
■10月31日(金)■
16時から、ポケット。
その前に、愛宕山へ出向いて、芝居の小道具(ぼく用)を受け取る。それは何でしょう!
ヒント=それを僕に貸してくれたのは女性です。
本日も哲ちゃん、ノブシコブシが休み。
実はノブシコブシは前日(3日)の大阪での稽古にも参加できないスケジュールで、本番当日のゲネが最後の稽古になるのだ!なかなか厳しい事ではある。
因みにゲネは芝居用語、
「ドイツ語のGeneralprobe(ゲネラールプローべ)の略で、本番と全く同じように舞台上で行う稽古の総仕上げ。尚、英語では衣装を付けるのでドレスリハーサルといい、日本の演劇界でも最近はこっちらしい」※殆どをウィキぺディアより
そして、本日の稽古は「早や台詞」
そう言う言葉があるかも、そう言う稽古があるかも知らないが、僕は頭にそれなり入った台詞を更に確実なものにするためにやる。その効果は人に依るかもしれないが、僕の場合はこれで自分の台詞をより完璧に出来るので、時に応じて試みる。
台詞を早く言うだけなのだが、間や抑揚も取ってしまう。棒読みをひたすら早くするわけだ。そう言ってもすぐ出来ない人もいる。今回上手かったのは中村譲くんだった。
実は彼は今回台詞量が多く、しかも説明的な個所が多いのできっと役に立ったと思うのだが。どうだろうか?
その「早や台詞」で終幕までやり、「3日、大阪で!」「お願いします!」「よろしく!」と、皆で言い合って、20時50分ののぞみに乗った。
さて、これで東京の稽古は全て終わった。9月の10日、御徒町に全員が集合して初稽古をやって以来、25日を費やした。
不安は、芝居の中身や役者の台詞覚えなどではない。それらに自信があると言う事ではないが、そこを問うている時間はもう無いと言うだけの事だ。
現実の不安は、音効、照明のきっかけと舞台転換、そして客の入りだ!
だが、どれも出来る限りやってきた・・・はずだ・・・と思うしかない。
そう言った当日への不安とは別に、役者やスタッフは台本を面白いと思ってくれているのだろうか。そして、僕の演出にどの程度満足して、いや、どう評価しているのだろうか。稽古の進め方とか、食事とか、連絡のとり方とか、色んな事が合格ラインに達しているのだろうか。などと、反芻し反省しなければならないことが当然ある。
だが、今はそれらを後回しにして、大阪へ攻め帰るだけなのだ。
■11月1日(土)■
本番直前。本来なら、今日明日などは絶対稽古の筈だ。だが、メンバーが揃わなくて、今更部分稽古でもなくて、泣く泣く、稽古を無くした。
夜になって、塾へ。
オープニングタイトルVTRが出来上がっていた。選曲は僕。映像は城田と、お手伝い頂いた時本伸一氏。相当良い出来だ!
続いて、城田、北村、河内らとミナミのドンキホーテへ小道具の買い出しに。そうなのだ、この段階で、まだこんなことを!
買ったものはほぼ衣装関係。僕はあのシーンのアレを購入した。意外と良い感じのものが手に入った。上下で5千円ほどでした。
その後は、ひとり「en」(馴染みのラウンジ)へ行き、ママに許可を貰って女の子に付き添って貰い、その手の店へ行って、もう一着購入。こちらは4千円也。こっちも良い感じだ。
朝まで飲みました。
■11月3日(月)■
14時、大阪南森町の貸しスタジオ。
寄席・繁盛亭の近く、天神橋筋商店街の中の一軒だ。
役者全員、と言いたいところだが、ノブシコブシは、確かM−1の予選で、出番次第では途中参加が可能と言う状況。ひとまずは欠席。
スタッフは勿論総出。
中村譲くんと亀谷さんところは藤井マネージャーが一緒だ。
そして音効・増田郁子待ちで稽古開始。
今日は、役者の演技に注文をつけると言うようなことはない。
それよりは停滞や中断なく芝居全部を台本通りに再現できるか、それが先決だ。役者自身の着替えの手際、時間と言う事もあるが、何よりは舞監を初めとする裏方の問題だ。同時に、音効のタイミングも重要だ。
音効さんが選んできた音や曲を初めて入れての通し稽古だ。
音効は、これが入ることにより芝居が更に色を増し、その場面の意図や流れを判り易くする。
だが本日最大の課題は舞台転換。この幕が終わったら、これとあれを引っ込めて、それとそれを出す。あれは誰が引っ込めるのか、それは誰が出すのか。そしてそれは上手(かみて)なのか下手(しもて)なのか。確認をしつつ、何度もやり直し、繰り返しが続く。
役者や僕(演出)はそれ(舞台転換)が出来て当然、出来るものと思って、稽古を進めていくが、後で聞くと、裏方さんは大変だったそうだ。なんせ、漫才、コントライブでの椅子や机の出しはけはやったことがあるが、これだけ(?)の本格的(?)な芝居は舞台監督も含め全員が初体験!
それでひとつの芝居をやろうとする根性を馬鹿と言うか、勇気あると言うかはお任せするが、いずれあまり賢い事ではない事は確かだ。
でも、そう決めてやりだしたことだし、明日が初日だ。やるしかない。
転換のやり直しが何度も続く、くじけそうな顔のスタッフもいた。
そんな中、一番お金のかかった着ぐるみが初登場。イー☆リャンがそれを着こんで、歩いたり、走ったりと先ずは体に馴染ませることが第一だ。
その他、初めての衣装や小道具が続々登場。役者の気分は盛り上がる一方だが、スタッフはそれどころではないようだ。
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閑話休題
稽古の合間にふと商店街へ出ると、斜め向かいの居酒屋の前から知った男が声を掛けて来た。旧名・白尾城。嘗て、かれこれ20年近く前、僕と同じ構成作家だった男だ。
彼は今、その居酒屋「天一」(てんいち)の主人だ。
その日の稽古終わりは早速、その天一だ。
浜浜、カオルコさん、ゴッド、確かもうひとりいたと思ったが・・・
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さて、舞台転換を最大課題にした最後の稽古は4時間ほどで終了。予定が大幅に縮んだが、本日はこれまで!
明日、よろしく!とそれぞれの帰路に就いた。
ま、大人しく帰った者が何に居るかは知らないが。
僕は天一を出て浜口浜村、ゴッドと扇町あたりのバーへ。
その後、浜浜は大阪では僕の家に泊まる。これも宿泊代を少しでも減らそうという経済的理由による。
ただ、三人ともバタンキュー(古っ)だった。(-_-)zzz
さあ、明日からだ!
客の入り、舞台転換、そして、少しだが自分の台詞も今になって心配になって来た。
賽は投げられた。
『牛馬頭のゲーム』果たして目は何と出る!
4,987字!
思いがけず字数を費やした。大阪本番は次回になる。

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