「あと54回」と銘打った『コント衛門』の第一回が近付いてきた!
現実に、今は木曜日の午前3時半。明日、明後日、その次の日だ!
モノを作ることは消耗することでもある。今回も齟齬や、軋轢や、衝突があって、沈澱し、鬱積し、積み残した課題が生まれた。それらがどんなことかは日曜日の本番が終わって後書く事にしたい。
で、今回は、そうした経過の中で没になったコントの鎮魂、供養の為に、その台本をここに載せることにした。
吉本の担当社員から「重い、暗い」と言われたものだ。しかし、今回はダメであっても、いつか、或いは他の場所で必ず上演するつもりではいる。だから、台本にとっての鎮魂、供養ではなく、僕の悔しさと不甲斐なさと・・・・いろんな気持の鎮魂ということになるのかもしれない。
ま、お楽しみいただけたら幸いです。
では、先ず『意外な一面』です。
◆◆◆『コント衛門』@〜痛み知らず〜◆◆◆
〔意外な一面〕
SE=海の音が聞こえる
L=明転
▼旅館の一室。中央に茶卓。その上にお茶のセット。
▼ふたりの男が寛いでいる。明らかに年上の男が西浦、若い方が北内。同じ会
社に働くふたりだが、西浦は係長だ。
▼テレビが付いており、見るともなく見ている北内、西浦は窓から外を見ている。
北内「うそお!何このCM!」(やや馬鹿にしてる)
西浦「どうした?」
北内「LaLaLaですよ。たむけんですよ。だいぶ前に解散してますよ」
西浦「(話題を変える感じで)北内はここは何回目だ」
北内「え?初めてです」
西浦「そうか」
北内「え、係長は初めてじゃないんですか?」
西浦「3回目だな。そうか、お前は初めてか」
北内「前は何で来たんですか?」
西浦「同じだよ。会社の慰安旅行」
北内「なるほど」
西浦「考えたら、会社が儲かってない時はここだな」
北内「そうですか」(さほど気の無い返事)
西浦「ま、この不景気な時に慰安旅行に来れるだけでも有難いと思えってとこか」
北内「・・・・・」(返事が無い)
――それを何となく咎める風の西浦。しかし、何か言う訳ではない。
▼と、別の男が入ってくる。旅館の浴衣を着ている。北内と同輩の四方田である。
四方田「ああ、気持ち良かったぁ!」
西浦「風呂は良いだろ。ここの風呂は悪くない」
北内「(確かめるように)四方田、成分は何だ?」
四方田「成分?」
北内「効能は?」
四方田「さ、さあ?」
北内「(やっぱりという感じで)こういうやつですよ」
西浦「北内も入ってきたらどうだ」
北内「あ、僕は飯の後でいいです」
四方田「係長こそ、どうです」
西浦「そうだな、そうするか」
▼西浦、浴衣やタオルを用意しようと動く。
▼と、テレビのニュースに目が行く西浦。
西浦「北内、テレビちょっと大きくしてくれ」
北内「はい」
▼リモコンを操作する北内。
【SE】=テレビの音が聞こえてくる
アナ「(死刑判決のニュースを伝える)」
▼真剣に見る西浦。それを興味本位に見る北内。四方田は関心無さそう。
▼ひととおり、そのニュースが伝えられる。
西浦「北内、もういい、有難う」
――西浦、明らかに気分を害している。ふたりはそれに気が付かない。
北内「でも、今のは死刑で当然だよな」
四方田「(軽く)当然、当然」
北内「一人しか殺してないからとか言うけど、一人でも殺したら死刑。それが法治国家ってもんだろ」
四方田「そうです。日本は法治国家です!」
北内「ね、係長もそう思うでしょ」(何気なく)
西浦「(十分な間を持って)・・・・・俺は、死刑には反対だ」
▼部屋の空気が一挙に変わる。気まずい北内と四方田・・・・それを逃れるように
四方田「お、おれも、もう一回、風呂行こ」
▼四方田、何故か浴衣とタオルを持ち入口へ行こうとする。
西浦「いい、俺が行く!」
▼西浦、四方田の浴衣とタオルを奪って出て行く!
【SE】=ピシャン!(戸の閉まる音)
▼暫く、動けないふたり・・・・だが、
北内「うぅわはぁ〜!びっくりしたぁ!」
四方田「俺もぉ・・・」
北内「まさかね、俺は死刑には反対だ(真似る)」
四方田「はははは!先輩上手い」
北内「死刑はありだろ!」
四方田「あり。あり」
北内「え、何、(西浦が出て行った方を指して)俺たちが悪いの?」
四方田「悪くない、悪くない」
北内「そりゃ、日本に死刑反対って言う人がいることは知ってるけど、まさか、こんな近くにいるとは!」
四方田「それも、あの西浦係長が!」
北内「そうそう。至って普通の人だよ。酒もゴルフも適度にやるし。出世だって早くもなし、遅くもなし、5年目で係長」
四方田「家庭も奥さんと子供一人。確か新婚旅行はハワイ」
北内「浮気もしない。いや、これは判らんか」
四方田「係長も男だから。はははは」
北内「それにしても、四方田。お前、お風呂もう一回はないだろ」
四方田「すいません」
▼その時、バタバタと音をたてて西浦が入ってくる!
▼そのまま、奥まで行き、窓の外を見ている。大きく息をしている。緊張するふたり。これから何が起こるんだろう!
北内「係長、お湯は・・・?」
▼と、西浦、浴衣とタオルを叩きつけて!ふたりの方に向き直り、
西浦「入って無い!お前達にどうしても言いたい事があって戻ってきた!」
四方田・北内「・・・はい」
西浦「どうして私が死刑に反対かだ。聞くか!」
ふたり「あ、ああの・・・(戸惑っている)」
西浦「聞くな」
ふたり「ハ、ハイ!」
西浦「僕が何故死刑に反対か。先ず、冤罪だ。冤罪の可能性がある以上、死刑はあってはならない。なんならそれだけで死刑はあってはならないものだ。だから、以下は敢えてだ。死刑を執行するのは拘置所の刑務官だ。刑務官は公務員だ。憲法第36条は「公務員による拷問及び残虐な刑罰は絶対にこれを禁ずる」としている。死刑は残虐な刑罰だ。故に、死刑は憲法違反であり、あってはならないものだ。更に、死刑賛成派は死刑は犯罪を抑止しする効果があるというが、世界の死刑を無くした国で、統計上、死刑を無くして犯罪が増えたという報告はない。つまり、死刑があることで犯罪を思いとどまる人は殆どいないということだ。そして、私が死刑に反対する最大の理由は、人間には「この人間は死んでもいい人間だ」と判断する力はないし、その権利も無いということだ。――間――わが師親鸞は言う、「全ての衆生は根源的な悪人であるが故に、阿弥陀仏の救済の対象は悪人であると、つまり悪人であると気づかされた者こそ真実に目覚めさせられる者だと。だからこそ親鸞は言う。善人なほもて往生す、いはんや悪人をやと。この知恵故に私は死刑に反対する!南無阿弥陀仏」
四方田「な、なるほど」(勢いに負けて納得)
――しかし、北内は反感さえ覚えたようで、
北内「(四方田に)判ったのか、お前!」
▼四方田、小さくなる。
北内「いや。死刑は要りますよ」
▼黙って、北内を睨む西浦。
北内「要ります・・・・じゃ、被害者の家族はどうなるんです。殺された人の家族の気持ちは!」
西浦「よくある質問だ。答えよう。死刑が執行されたとする。家族がそれを知る。犯人が死んだ。じゃ、次の日から何もなかったように家族に幸せが戻り、元気に会社や学校へ出かけられるのかね?」
北内「・・・・・」
西浦「そりゃ少しは気が治まるかもしれん。だが100%じゃない。何故なら死んだ人は戻ってこないからだ。決して家族は元通りにはならない。つまり、犯人が死刑になっても、家族は救われないのだ。死刑の限界だよ」
四方田「あの、慰安旅行なんですから・・・」
▼北内と西浦、ふたりで四方田を睨む。四方田、引き下がる。
西浦「更に悪いことに、死刑は殺人だ。つまり、死刑を執行することでもうひとつ殺人が繰り返されることになる。これ以上の悲劇はない」
北内「あんたは、被害者の遺族のことを判って無い・・・」
西浦「そうは思わん」
北内「それは、・・・・僕の気持が判って無いということだ」
――部屋の空気が、再び・・・・変な感じに
四方田「北内、お前・・・・」
北内「そうだ、僕の父は通りすがりの男に理由もなく殺された。僕は殺人事件の被害者の家族なんだ」
――物凄い空気。唾を飲み込む西浦。そして、沈黙・・・そして
北内「ウソだけど」
西浦「この野郎―っ!」
▼西浦、烈火の如く怒って北内に殴りかかる。四方田、必死でそれを止める!
四方田「係長!ダメです!北内は冗談が好きなんです。ここは堪えて下さい!」
西浦「言っていい冗談と、違う冗談がある!」
▼揉めているふたりを尻目に、
北内「なんか、ものすごいスッキリした。はははは!」
西浦「お前ってやつは!」
▼また北内に跳びかかろうとする西浦。それを必死で止める四方田。
▼と、そこへ着物姿の仲居さんが入ってくる。四方田、手を放す。
仲居「あらあら、お元気だ事。修学旅行ですか?」
西浦「違うよ!」
仲居「宴会の用意ができました。二階の大広間へどうぞ。今からお布団の準備をさせて頂きます」
▼そう言いながら、茶卓を部屋の隅にやろうとする仲居さん。手伝う四方田。
北内「いや、僕は、係長の意外な一面に驚いただけですよ」
西浦「ほお、僕が意外だったと。じゃ北内は僕の事を判っているとでも言うのか」
▼茶卓を片づけ、布団を敷きたいが、北内と西浦を見守る仲居と四方田。
北内「そうは言いませんが・・・・・」
西浦「君たちは多分、僕の事を普通の人間のように思っているのだろうが、君たちは本当の僕を知らない。良い機会だ、僕の意外なところを教えてあげるよ。仲居さんも入ってくれますか。四方田もだ」
仲居「あら、何かしら」
▼四方田と仲居、前へ。
西浦「僕の云う事に、自分もそうだったら、手を上げてくれ」
▼怪訝な3人だが、抵抗するような気配はない。
西浦「死刑に反対の人!ハイ!」
▼と言いつつ、西浦自身が手を挙げる。以下、全部同じ。西浦以外に手を挙げる者は
いない。
西浦「原発反対の人!ハイ!」
〃「アメリカは敵だという人!ハイ!」
〃「水俣は終わってないという人!ハイ!」
〃「教育基本法の復活を望む人!ハイ!」
〃「自衛隊は軍隊だという人!ハイ!」
〃「天皇は要らないという人!ハイ!」
〃「差別はなくならないという人!ハイ!」
〃「人類は滅びるという人!ハイ!」
・・・・まだまだ続く!
――圧倒される三人。
西浦「どうだ、これが本当の僕だ。意外だっただろう」
四方田「(額の汗を拭いながら)は、はい。とっても」
仲居「何よ今の、私、何もしてないわよ。じゃ、お布団敷かせ貰っていいかしら」
▼仲居、動こうとする。と、北内、それを制して、
北内「それほど意外ですかね?」(挑戦的だ)
西浦「何っ!」
北内「じゃ、今度は僕です。係長、僕を見くびらないで下さいね。僕も、あなたに負けず意外な人間なんですよ」
四方田「いや人間、皆結構意外なとこを持ってるもんです」(頑張って偉そうに言う)
北内「(即、否定)お前は違う!」
四方田「ひっ」(小さくなって、仲居に甘える)
仲居「よしよし」(四方田を抱きかかえ、頭を撫でる)
【SE】=(途中より溶暗)
【M】=(恐怖・・・・)
北内「同じです。私もそうだという人は手を上げて。行きます!
今まで一度も笑ったことが無い!ハイ!
殺したい奴が一〇〇人はいる!ハイ!
鹿を素手で殺したことがある!ハイ!
マクドを食べると必ず吐く!ハイ!
同じ夢を見れる!ハイ!
自殺を手伝ってみたい!ハイ!
冬眠に挑戦したことがある!ハイ!
上半身Mだ!ハイ!
私の部屋には何かいる!ハイ!
自分は悪くない!ハイ!
漫才は簡単だ!ハイ!
どちらかと言えば左より右、上より下だ!ハイ!
・・・・・・・・まだまだ続く
▼舞台が暗くなっていく中、西浦、四方田、仲居の3人は、北内の告白に恐怖を覚え、段々と後ずさり・・・・舞台から消える。ひとり残された北内の声に海の音が重な
って行く・・・・
幕
2009・5・26(火)
如何でしたか!
※「台本」をそのまま切り取って貼ったので、見にくいかも知れませんが。
ま、確かに「重い」「暗い」と言えばそうですが。そして、過激かも。勿論、
僕はそうは思ってませんが。
発想の発端は、職場とか、学校とかに限らず、普段、結構会話を交わしたり、
時には飲みにも行ったりする人がいて、何かの拍子にその人の思わぬ一面、予
期しない一面が出たら、人は結構困ったりするのではないか。その時のその場
の空気も何やら取り返しのつかないようなものになるのでは・・・・・と思っ
たことからである。
その意外な一面を今回は「死刑反対」にしたのだが、あなた方の周りの誰が
「死刑反対」で、だれが「死刑賛成」か、結構判っていないのではとおもうの
だが、如何?
だから、「死刑」に限ることではない。「南京大虐殺」でも、「和歌山カレー毒殺事件」でも、「創価学会」でも、「君が代」でも、「売春」でも、「臓器移植」でも構わない。ただ、空気が停滞する為には、やはり上記のような微妙で、生き方や考え方が問われる事柄のほうが威力を発揮するとは言えるはずだ。
それか、「体位」とか、「草なぎくん」(本来の漢字を使うと投稿した際に、そこから以降が文字化けするので、平仮名です)とか、「シートベルト」とか、「ペット」とか、「AV」とか、「街角カメラ」とか多少軽い事柄でもよいが、その場合は当事者(登場人物)が相当偏った、過激な考えの持ち主である必要がある。
こう書きながら、やはり「死刑」はストレートかなという思いがしてきた。はははは!
それに、職場や学校もいいけど、やはり家族の中での「ある日突然の意外な一面」の方が面白いのではとも思えてきた。
もし、次の機会に――勿論『コント衛門』が第一候補なのだが――同じ魂胆でやるなら、この台本は大分変っていることと思います。我田引水ですが、成長していると云う事になりましょうか?????
是非、次回『コント衛門』にもご期待下さい!
あ、でも、必ずしもこの改稿コントが次回とは限りませんが・・・・・
だったら、今回、台本を載せるのはどうなんだろう・・・・・と云う事になりそうですが、そうなったら、余計に台本の供養と云う事で、載せます!
ま、かわら長介のブログなんで。
さて、今回の書き出しは木曜の朝でしたが、今は土曜日の午後4時。今日は天神祭。で、今年も僕のマンションのベランダで恒例の花火宴会だ!
でも、夜10時から『コント衛門』のリハーサルが京橋花月であるので、いつものようにグイグイとビールを飲むことはしません。そして、いつもは鍋などを用意するのですが、今回はやや小規模で行きます。
参加される皆さん、御容赦と御理解を!
ところで、最後に許せない話をひとつ!
つい先日、7月21日の衆議院本会議。憲法7条に基づく麻生総理の決断で衆議院の解散が決まった。それはいい、自民党がどういう勝算があって解散に踏み切ったのか、或いは対する野党は何を国民に誓い、何を証明しようとするのか、それはいずれ答えが出ることだが、僕が許せなかったのは、解散が決まったその途端、出席していた議員達が一斉に「万歳」をした事だった!
テレビで見ていたから参加議員の全員だったかどうか、ある政党の議員達はしてなかったかもしれないが、画面で見た感じでは殆ど全員であった!
そこだ!
言わせて貰う。「解散」は実質的に政治の停滞だ。政治家たちは本来の職務を放棄する!
放棄して何をするかと言えば、その間、先生方は自分の勝利の為に全国を、或いは選挙区を走り回る。普段は下げない頭をこの時ばかりは地面に着くほど低くし、受けの良い公約を掲げ、にこにこ顔で、8月の太陽も清き一票さえ頂ければなんのその、己の子孫と財産の為に奮闘する!
これが職場放棄でなくてなんであろう!
ひょっとすると野党側からすれば次の段階に向かって駒を進めたことになるかもしれないが、政治を停滞させたことは、謙虚に国民に頭を下げるべきことである。増してや責任政党の与党・自民党に至っては、政治の失敗の表面化であり、自らの力の無さの表れでしかない。
それが挙って「万歳」である!
つまり、わーい選挙が出来る!やったぁ議員を増やせる!ようし今度は勝つぞ!よっしゃ取り敢えず相手(自民党)を追い込んだ!
そう言いながらも、その頭に国民の事が無いとは言わないが、そう言う思いがあるなら、決して「解散」に「万歳」は出来ない筈である!
どう考えても、「すいませんが、選挙をやらせてもらいます」でなくては!
国民を馬鹿にするのもええ加減にせえ!
と、天国の人生幸朗師匠もきっと怒っておられるはず!
そして、生恵幸子師匠は、
「たまには、ええこと言う。このドロガメ!」
と、突っ込んでおられるに違いない。
今年は人生師匠が亡くなられて29年、幸子師匠が亡くなられて3年になる。
そして、あれから64回目の夏だ。

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