YAHOOニュースの一覧を見ていると、「田辺三菱」の文字、続いて「データ改竄」!え、またか!と思ったら、僕が「たくらだ堂」の111、114、131、132で書いた、昨年の3月に「田辺三菱」が起こした事件に対する厚生省の判断が出たというニュースだった。25日間の業務停止という決して重くない行政処分。
またか、と思った僕の早とちりではあったが、1年後って、やっぱり日本の裁判ではないけど、公的なシステムって、何かと時間かかり過ぎですよね。刑事犯ならその間、拘置所か刑務所に入れらて自由は取り上げられるのだが、「田辺三菱」はその間、研究もし、新薬も作り、勿論普通に営業・販売してたわけで、それってどう?
ともかく、事件のその後を追った報道ではあるが、残念ながら満足のいく答えではなく、金持ちに篤い判断でしかない。神は、仏はいるのか!
以下、新聞記事より抜粋。
田辺三菱を業務停止…子会社データ改ざんで
4月13日21時30分配信 読売新聞
人血清アルブミン製剤「メドウェイ注」
田辺三菱製薬(大阪市)の子会社が新薬の試験データを改ざんした問題を調査していた厚生労働省は13日、薬事法に基づき、田辺三菱を今月17日から25日間の一部業務停止とする行政処分を発表した。
大手製薬会社の業務停止は異例。データを改ざんした子会社は、薬害エイズ事件などの血液製剤を作った旧ミドリ十字が設立しているが、同省によると、旧ミドリ十字出身者ら約20人が組織的に不正にかかわっていたという。
発表によると、同社は1999年から2008年にかけて、世界初の遺伝子組み換え技術による人血清アルブミン製剤「メドウェイ注」の試験データなどを改ざん。不純物の濃度を実際より低く見せかけたり、アレルギーの陽性反応を陰性のデータに差し替えたり、16件の不正を行っていた。
不正には全社員の約4分の1にあたる計約20人がかかわっており、このうち同製剤の開発の責任者である幹部3人は旧ミドリ十字出身者だったという。
厚労省は「遺伝子組み換えという新しい技術による新薬の開発で不正があったことは、医薬品の承認申請を棄損する重大な違反だ」と指摘した。田辺三菱については「不正を漫然と見逃した」と判断した。
同製剤は、重いやけどや出血性ショックの患者に使われる。07年10月に承認を受け、08年5月に販売を開始したが、田辺三菱は昨年3月に不正を公表し、すでに自主回収している。現在、製造・販売はストップしており、健康被害は報告されていない。
旧ミドリ十字は合併の末、現在は田辺三菱に吸収されている。バイファは同製剤を開発するため、旧ミドリ十字が96年に設立した。薬害エイズ事件で旧ミドリ十字では、エイズウイルスが混入した非加熱血液製剤の販売を続け、患者が死亡したとして、歴代社長2人について業務上過失致死罪での実刑判決が確定している。
◆田辺三菱社長が謝罪◆
田辺三菱製薬の土屋裕弘社長は13日夜、都内でバイファの藤井武彦社長らと記者会見し、「人の生命にかかわる製薬企業として、あってはならないこと。深くおわびしたい」と述べ、深々と頭を下げた。
薬害エイズ事件などの問題を引き起こした旧ミドリ十字。その体質を払拭(ふっしょく)できなかったことについて、土屋社長は「もう少し、人事交流を行っていれば、違った展開があったかも知れない」と苦渋の表情を見せた。
同社に先立ち会見に臨んだ社外調査委員会委員長の郷原信郎弁護士は、「バイファは旧ミドリ十字の経営が厳しい時に設立された会社で、同社の利益重視、安全性軽視の企業姿勢が表れている」と問題点を指摘した。
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さて、今回の本題へ。
NHKに『新日本風土記』という番組がある。
3月17日、その番組が‘富士山’を扱った。
題して、「富士山〜千年の美 一瞬の夢〜」
その構成骨子は、
「標高3776m、日本の最高峰、富士山。
日本人を虜にする美しさ。
千年以上注がれてきた、富士山への眼差し。
数々の美の発見。
畏れ、祈り。
時代を超えて語り継がれてきた富士山の魅力を、
アルファベットAからZ、26の物語で紐解いていきます」 というものだった。
実は、僕はこう言う多角的、多面的攻勢によるアプローチが好きで、これは面白そうと、録画し、見た。
が、たちまちにして不満と疑問が!
端的にいえば、選ばれた「AからZ」に納得がいかないのだ。無論、全部ではない。しかし、それは敢えて言うなら撰者のセンスだ。つまりはディレクターのそれだ。
では、申し訳ないが、そこんところを大雑把にだが、ザクッと探ってみる。先ずはAから。
※「――と――」の間が番組における、その項目に関する内容。
※「⇒」は僕の意見、感想、批判。
【A】Appeal=魅力
――富士山の魅力に取り付かれ、写真を撮り続けるある高校の地理の教師と彼の撮った写真。そして、富士山に飽きず、何句も詠んだ山部赤人の句――
⇒スタート早々、申し訳ないが「魅力」って括りは無い。「魅力」は富士山そのものなのだ。この後、アルファベットの度に登場する人達も「魅力」故に富士山に魅かれ、関わっているのだから。番組全体が富士山の「魅力」に支えられて出来ていると言えるわけで、これを一視点として取り上げることは富士山の「魅力」を理解していないことになる!
【B】Beauty=変幻自在の美
――富士山の魅力、それは刻一刻と変わる美しさ。そのひとつが雲が織りなすハーモニー。笠雲。つるし雲――
⇒ナレーションンがいきなり「魅力」と言ってる。語るに落ちるとはこの事なり!「魅力」と「美」はつまりイコールなんです。その二つを冒頭で続ける、その見事な定見の欠如!
⇒しかも、Beautyを「変幻自在の美」などと条件付けている。だったら、最初っからChange(変化)か流行りのTransform(変形)で行くべきだ。
【C】Completion=まんまる
――月と富士山の様々な写真を撮り続けるアマチュアカメラマンとその作品。パール富士、赤富士――
⇒このことは続出するのだが、選んだ英語が特殊過ぎる嫌いがある。「A〜Z」で富士山を語るなら、そこに出てくる英単語は出来るだけ皆が知っていることが必要ではないだろうか。もし殆どの人が知らない英語を持ち出したとしたら、日本語の対訳が無ければその英語は意味をなさないことになる。
⇒その上で、ではCompletionが「まんまる」だなんて、みんな知ってることだろうか。しかも、英和辞典で調べてみたらCompletionは「完成・完了・卒業」でせいぜい丸くても「満期」だった。ひょっとして俗語にあるかもしれないが、しかし、俗語では結局、知っている人は少ない訳だから、またしても意味をなさないわけだ。
【D】Daybreak=暁の行列
――富士山に登る人は年間20万人。中でも夏の夜を徹して山頂を目指す行列。それは室町時代にもあった日本の精神図絵ともいえるもの。現代の人びとも御来光を仰ぎ感激の言葉を口にする――
⇒厳密にいえば暁=朝方ではなく、深夜の行列である。番組自身も夜中に連なる美しく、神妙なその行列を撮っている。この単純な間違いは何故?
【E】Energy=活力
――フィリピンのマヨン山。400年で50回も噴火している活火山。嘗ては富士山も活火山だった。古文書に記された平安時代の噴火。その時、溶岩による自然の造形、船津胎内樹形が作られた――
⇒Energy?富士山のエネルギー、つまり「活力」を「船津胎内樹形」=「大木が溶岩で燃えて出来たその大木の大きさと長さ分の洞窟」だけで表せるものか?それよりはいっそ「溶岩」か「爪痕」だろう。しかし、その英語はやや難しいものになる。ま、この項目自体が無い。
【F】Farming=開拓者
――嘗て冷涼な気候と痩せた大地が稲作に不向きだと言われた富士北麓。36年前、その逆境の溶岩台地を開墾し、改良し、今や日本一のコメが獲れる実りの土地にした武藤傳太郎さん――
⇒ま、農地開拓だからFarmなんだろうけど、普通にPioneerでいいと思う。
【G】Generating Goodwill=富士山のきずな
――江戸時代に大流行した富士山信仰の富士講。今も東京新宿で続けられている富士講に集う人々。その中で富士登山の度にリーダーの役目を果たす先達と言われる人――
⇒Generating Goodwill!またややこしい言葉を持って来たものだ。例えばGenerating Plantsは発電所である。つまり、このGeneratingは世代というより、発生、産出といった意味合いが強く、直訳すれば「生産される好意」?判りにくっ!そこを製作者の意図を尊重して意訳するなら、「生み続けられている厚情」→「世代を通じて今もある意欲」→「受けつがれている信仰」!しんど!
⇒しかも、「富士山のきずな」って、そこに富士山使っちゃダメでしょ。だから、もう「Fuji−Ko」でいいんじゃない。それかストレートに「Belive」か。
【H】Harmony=四季
――富士山の四季を追う。
春、5月 遅い雪解け
夏、急激な天候の変化
秋、短い秋は駆け足でやって来る
冬、「O」までお待ちください――
⇒え!?因みに「O」は
⇒にしても、「四季」をHarmonyとするか。意訳というか、違訳ではないのか。にしても、「Harmony」=調和を持って来たんだから、四季が揃ってないと成立しないだろ!冬、後回してっ!我がままにも程がある。
【I】Inheritance=遺産
――富士登山の季節が終わる8月末、富士吉田市(山梨県)で行われる火祭り。富士山に模ったお神輿を地面に3回叩きつけ、噴火が二度と起こらないよう願う。それは、美しい山の永遠を願う儀式――
――その富士吉田市は江戸時代、ひと夏で8000人もの富士講の人びとが押し寄せた信仰の町である。その人々の為の宿場町としても繁栄し、御師の家(おしのいえ)といわれる旅館が、明治の最盛期には80軒を超えた。その御師の家も今は10数軒となった――
⇒??? 祭りと御師の家が富士山の遺産ってこと?いやいや、富士山の遺産はまだ他に何千とあるでしょう。しかも、Inheritanceが遺産だなんて知らない・・・・もういいか。
【J】Journey=長い道のり
――富士山を様々な形で表現してきた日本人。中でもカメラでそれを試みた先駆者、岡田紅陽(1895〜1972)。撮影した富士山は38万枚に及ぶ――
――千円札の裏、富士山と湖面に映る富士山。その元になった写真が岡田紅陽の代表作「湖畔の春」(1935)――
――紅陽の撮影は命がけだった。冬、カメラを背負ったまま滑落。凍死寸前で救助されたことも――
――親交のあった作家・川端康成は彼を「古来の画人、文人にも50年を富士ひと山にのみ取り組み、打ち込んだ者はあるまい。その信念は信仰に深まっているだろう」と評する――
――紅陽は言う、「〜富士山の美の深さは、私個人の力の及ぶ所ではない、無限大にひとしいからだ」と――
⇒敢えて言うが、「長い」は要らないだろう。Journeyでいいが、「道のり」もしくは「道程」でいい。というか、大仰に言いたいだけのような気がする。岡田紅陽の足跡は認めるとして、内容的には「Camera」のほうが、「富士山」へのアルファベットによる解説の項目としては当を得ている気がする。「道のり」では、語り過ぎ。紅陽さんも辟易では。
【K】Kaleidoscope of Color
=一瞬の表情
――夏、様々な気象条件が偶然に重なった時にしか見られない絶景、赤富士。葛飾北斎が描いたこの奇跡をカメラが捉えた――
――赤富士の条件は3つ。
@雨で山肌の赤みが増す
A雨雲が晴れる
B太陽の光がさしこむ
――僅か5分で消える赤富士――
⇒英文の直訳は「色の万華鏡」。万?赤一色にこだわった末のことではないのか、赤富士!むうう、融通無碍なる境地か。
【L】Listen=耳をすませば
――「あなたは歌詞を覚えていますか」
富士のふもとの小学校の児童達が歌う
『ふじ山』 巌谷小波・作詞 文部省唱歌
あたまを雲の上に出し
四方の山を見下ろして
雷様を下に聞く
富士は日本一の山
⇒絶対、「Song」でいい!いちいち狙い過ぎ。ま、感性だし、好みなんだから、僕が言うのが正しいわけでは決してないが・・・・・
【M】Magnificence=気高き山
――漱石と太宰の富士山。漱石は『三四郎』で、富士山を日本の近代と対峙する古き日本の象徴として描く。方や太宰は『冨獄百景』で、「富士には月見草がよく似合う」と評した――
⇒漱石も太宰も富士を「気高き山」として賞賛、或いは承諾しているかというと、どうもそうではない。漱石はその後の部分で、日本の近代を「亡びる」と言い放ったが、かと言って、それに対抗するように亡びることなく在り続ける「富士」を讃美しているわけではない。太宰にいたっては、問題は富士より、月見草であった。
「三千七百七十八メートルの富士の山と立派に相対峙し、微塵も揺るがず、なんというのか金剛力草とでも言いたいくらい、健気にすっくと立っていたあの月見草は良かった。富士には月見草がよく似合う」
と言い、己の理想を月見草に投影しているのみである。
共に、富士を「気高い」とは書いていない。
【N】Noh Drama=能 富士山
――数百あるという能の演目の中に世阿弥作の「富士山」がある。
「富士に降り立つかぐや姫。中国からの使者が不老不死の薬を求めてやって来る。富士の山神・火の御子がその願いを聞き入れる」という物語――
――その「富士山」は能五流派のうち二つにしか伝わっていない。そのひとつが金春流(こんぱるりゅう)――
⇒能は英語でも「ノウ」ではあるが・・・・ま、他に「N」は無かったのか。センス、勘、努力、執念です。はい。
【O】Ominous Area=魔境
――冬の富士山は風雪の魔境と化す。風速は時に秒速40メートル。雪解けまで半年、富士山は白い闇に閉ざされる――
⇒四季からこれひとつだけを別にした理由がわからない。予測の範囲の富士山の冬の映像と語りだ。因みにOminousは「不吉な、縁起の悪い」といった程の意味で、「魔」とまで言えるような凄味は無さそうだ。
【P】Point to Point=富士見
――富士山は遠く離れた色んなところから見ることができる。池袋の高層ビルからの富士。そこは現代の富士見茶屋――
――富士山は20の都府県から見える。中でも一番遠い地点は和歌山県那智勝浦町。距離にしてざっと323km。そこからの富士の姿――
⇒これは意訳でも、異訳でもない。別の言葉だ。つまり英語と日本語のタイトルを付けたことになる。こうなると、殆どの日本人には、最早英語のタイトルは意味が無くなってしまっている。日本語の判る人なら、「P」の項目を「富士見」と理解するからだ。
【Q】Quest=追求
――定点観測の富士山の姿1年分をまとめ、150分にした映像――
――それを作ったふたりの男性は、富士の麓に13個のカメラを設置、24時間年中無休で稼働させ、刻々と変わる富士の姿をホームページで公開している。1日の平均アクセス数は5万。世界中が見ている――
※「富士五湖TV 富士山ライブカメラ」で見られます。
⇒「追求」か、僕なら「道楽」にするな。皮肉ではなく。
【R】Rivals=北斎と広重
――富士山人気が過熱した江戸時代、浮世絵にも富士山は登場した。中でも、葛飾北斎(1760〜1849)と歌川広重(1797〜1858)。ふたりの画風は対照的だった――
――北斎の代表作「冨嶽三十六景」。北斎は虚構の中に富士を置き、「不二三十六景」を描いた広重は現地を訪れ、その眼で写生をした。言わば北斎の心の風景と広重の自然の風景である――
⇒これは、問題ありません。
【S】Streams=地下水の流れ
――富士山麓は360度、至る所から水が湧き出ている。西、「白糸の滝」。南東、「柿田川」。北東、「忍野八海」。
――源泉は雨水。溶岩台地は雨水の凡そ八割を地下水として蓄える。御殿場にあるウイスキーの蒸留所。そこの地下水は標高2000m付近の雨が50年を経て流れ込んで来たものであった。富士山は天然の濾過器であったのだ――
⇒続けて、問題無し。
【T】Translucence=透き通った雲
――冬、太陽の光が雲を通過することで稀に見られる雲の光景、「富士のオーロラ」。それは僅か20分で消える富士山の夢――
⇒単語については言わずもがな。意味は「半透明」。で、これもまたこの雲だけを別扱いしているが・・・・「Clouds」=雲で富士山の特徴的で個性的で不思議な全ての雲を扱えばいいだけだ。
【U】Uncontrollable=ゆれる心
――富士山に様々な思いを託してきた日本人、その例をふたりの歌人の作品に見る。
藤原忠行(??〜906)
「君といへば 見まれ見ずまれ富士の嶺の
めづらしげなく燃ゆるわが恋」
西行(1118〜1190)
「かぜになびく 富士のけぶりの空に消えて
ゆくへも知らぬわが思ひかな」
――煙を立ち昇らせている富士山と落ち着いた富士山。人々は時代ごとに富士山に心を投影してきた――
⇒ここはUncontrollableを直訳し、「抑えきれない心」で良かったのでは。そして、この二首に限定しないで、時代ごとにもっと多くの富士を詠った歌を紹介すればよいのにと、ここは軽い不満で。
【V】Vertigo=高山病
――標高3100mにある八合目救護所。医師や看護師のボランティアが夏の1カ月ほど常駐している――
――そこには、「お婆さんでも登れる山」、「仕事終わりで徹夜で登山」と富士山を甘く見た人たちが担ぎ込まれてくる。患者の数はこの5年で1・5倍に。その7割が高山病。酸素の量は平地の3分の2程度。医師は言う、「身近な山に見えるが、やっぱり3000メートル山なんです。一歩間違えば死にます」と――
⇒高山病は英語では「Altitude Sickness」または「Mountain Sickness」でVirtigoではない。Virtigoは「目まい」のみを言う。
⇒更に高山病とは、「概ね2400m 以上の高山に登り酸欠状態に陥った場合に、さまざまな症状が現れる。 主な症状は、頭痛、吐気、眠気(めまい)。他に、手足のむくみ、睡眠障害、運動失調などが現れることもある。低酸素状態において数時間で発症し、一般には1日後〜数日後には自然消失する。しかし、重症の場合は高地脳浮腫や高地肺水腫を起こし、死に至ることもある」
何故、Virtigo?でも、ひょっとしたら「Virtical」が「垂直方向の」という意味だから、俗語、乃至は専門用語であるかも。
⇒ただ、こういうアルファベットでという構成をした場合。Aから順に埋まっていくとは限らなくて、Bが埋まった。Dも、Kも、Nも、と言ってるうちに、「V」がまだです。となり、じゃ、「V」で高山病を扱うことにして、Virtigoで行くか、などとなることはままあることではあるのだ。
【W】Wall to Wall=壁絵
――身近な富士山と言えば銭湯の壁絵。末広がりの形が縁起が良いと大正時代に広まった。今でも東京の銭湯の3割にそれがあると言われている――
――全国で二人しかいない銭湯絵師のひとり中島盛夫さん。キャリア45年。描いた富士山は1万枚以上。古い絵の上に新しい絵を描き、2時間で仕上げる。その名人技。お客さんも納得である――
⇒「Wall to Wall」が、即、壁絵でないことは明白だ。ではそれにどのような意味、含意があるのであろう。申し訳ないが、不見識で知り得ない。それとも、壁の上に壁を塗り重ねるからそうしたぐらいの事であろうか。もし、成語として何かあるならお教え願いたい。
【X】X−Factor=謎
――富士山は何故「富士山」と言うか?「かぐや姫」にまつわる話の中にも登場するが、諸説あって、定かでない――
⇒これこそ、きっと「X」が無くての「X−Factor」だろう。もともと「X」は単語数が少ないから、ま、仕方ないか。
【Y】Yearning=あこがれの山
――富士山にあやかる故郷富士という存在。
▲鹿児島県 開聞岳〜薩摩富士
▲福島県 磐梯山〜会津富士
▲青森県 岩木山〜津軽富士
▲アメリカ・シアトル レイニア山〜タコマ富士
日本人の富士への思いは日本全国へ、そして世界へと広がっている――
⇒「あこがれの山」か、富士山を表現するには安易、というか広すぎる言葉だと思うのだが。それにYearningて、知ってる人どの位いるのだろう?僕ならアレにするな。アレが何かは後で。
【Z】Zenith=富士への情熱
――埼玉県所沢市にある「荒幡富士」という富士塚。人の手で作った小さな山に集まる地元の老若男女。この日は富士塚の清掃の日――
――富士塚は富士山を身近に感じたいと言う庶民の願いから江戸時代より関東で増え続け、今も、70か所以上が残っている――
――そのひとつ。東京中央区にある「鉄砲洲富士」。200年以上前、富士山の溶岩で作られた。新宿歌舞伎町の「西大久保富士」は昭和5年。「荒幡富士」は明治の中ごろ。それぞれに時代と土地に応じた願いが込められている。故郷に富士山はなくてはならない宝物です――
⇒そう締めるのなら、ここは「宝物」=Treasureでいいのでは。どうも何か意味を付加しようとして――情熱――聞きなれない言葉――Zenith――を持って来てしまっている嫌いがある。だから無理をしないで、ここは判り易く「Minuter」でいいのに。
そして番組は、最後に万葉の歌人・山部赤人の、
「富士山は天地開闢以来神々しく聳え立つ尊い山、その素晴らしさを語り継いでいこう」という言葉を伝え、夕日に輝く富士山の姿を映しつつ、「日本一の山、富士山です」と結ぶ。
撮影 渡辺泰山
音響 細見浩三
編集 首藤実三
ディレクター 佐川豪
製作統括 中島木祖也
製作・著作 NHK甲府
今回は文句ばっかり。
でも、絶対「富士山」は美しい。
確かに、文句ばかりを連ねたが、それは富士に対してではない。
富士は、常に圧倒的だ。
ここ15年間ほどは、多い時で週に3回、少ない時で月に2回、大阪と東京を往復し、新幹線からではあるが独立峰・富士山を見て来た。
だが、実は富士山全部が見えることは稀だ。3割と言っていいだろう。3回に2回は全く見えなかったり、半分雲に隠れていたりする。しかし、10年以上もそう言う目に遭っていると、それが富士山なのだと、なかなか見えないのが富士山なのだと思うようになる。
そして、何回かに一回しか見られないからではなく、何度見ても飽きないし、会えたら嬉しいし、驚かされるのだ。
僕は、電車を降りて、近くへ行ったり、登ったりするわけではなく、いつも同じ距離から、当然同じ方向から、同じ大きさで、そして同じ速さで現れ消えて行く富士山しか見ないのだが、その季節による変化、天候による変貌、時間による変幻に目を奪われるのだ。
四方周縁を圧倒し、天に向かって立つ冨嶽、富士!
古来、人心を畏敬させ、万象を流転させ、歴史を達観して来た富士!
富士山は日本一の山ではなく、富士山は日本一なのだ!
NHKに代わって、今度はその富士山に、僕が僕のA〜Zで挑む!

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