『コント衛門』2が大詰めだ。今は、10月4日の午後1時半。4時半からは、その技術打ち合わせがあり、18時からは稽古だ。今日は出演者7人全員が揃う。
コント数は10本になった。大忙しなのは「帽子屋お松」と「松本時代」と「原井」。それぞれが6本に出る。
因みに、僕は4本。
しかし、何より心配なのは、お客様の入り。申し訳ないが、名前だけで客を呼べる芸人さんはいない。売れっ子も、人気タレントもいない。チケットは基本、手売りで頑張っているが、果たして、蓋を開けてみなければどれぐらいのお客様に来て頂けるか分からない。
会場も知られていない。そしてやや辺鄙だ。
昨日の天気予報には雨マークは無かった。せめてもの安心材料だ。
皆さんのお越しを切に願っているのであります!
と、今日も宣伝から始まったが、お目当ては『キング オブ コント』だ。
そのエントリー数はあの「M−1を」追っかけ、追いつくかのように、2008年第1回、2148組。続く去年の第2回が2584組。そして、2010年の今年は更に増大して3009組!
その中の一組はエントリーナンバー1690番「WHYNOT」、僕たちである。
そこから、2回戦へ585組が進出。その中には僕たちも入っていたのです!
そして、3回戦に勝ち進んだのは152組。はい、ここで僕たちは消えました。
次が準決勝。駒を進めたのは68組!
そして、決勝へ8組!
2回戦敗退の不甲斐ない者ですが、可能性はさておき、飽くまでも決勝を目指す者として、キング・オブ・コントという場に登場する作品と演者が、少しでも才気と発想と意欲に溢れ、大胆で、しかし細緻で、奇抜かと思えば必然に抜かりは無く、果たして或いはせめても空前絶後であるようにと願い、非力を顧みず仮借の無い意見を、勝手に書かせて頂く!
更に、僕はそうした仮借ない意見を芸人憎しで書くのではない。「罪を憎んで人を憎まず」という聖人君子でなくては成し得ない諺があるが、僕はそんな高尚ではありえないが、笑いに対しては「笑いを憎んで芸人を憎まず」という態度である。この場合の‘笑い’はダメな笑い、出来の悪い笑いという程の事であるが、よって、その笑いの方法の悪しき、足りざりき、低きを嘆いているのであって、決して芸人を否定しているのではないことを明らかにしておく。
さて、決勝に挑んだ8組は、当日の出番順にこういう顔ぶれだ!
■TKO(木本武宏・木下隆行)
〜松竹芸能〜
■ロッチ(コカドケンタロウ・中岡創一)
〜ワタナベエンターテインメント〜
■ピース(又吉直樹・綾部祐二)
〜よしもとCA〜
■キングオブコメディ(高橋健一・今野浩喜)
〜人力舎〜
■ジャルジャル(後藤淳平・福徳秀介)
〜よしもとCA〜
■エレキコミック(やついいちろう・今立進)
〜トゥインクルコーポレーション〜
■ラバーガール(飛永翼・大水洋介)
〜人力舎〜
■しずる(池田一真・村上純)
〜よしもとCA〜
では、そのコントを讃美賞賛し、且つ指弾追及する!
とその前に、一応採点方法とルールを。
審査員は準決勝進出者の中から100人。ひとり10点満点で採点。最高点は1000点。
先ず、8組が予めクジで決められた(上記の)順に1本目のネタをやり、その都度採点、そして発表。2本目はその得点の低い組から演じ、2本の合計点の最も多い組がキングとなる。
ネタ時間は4分。
では!
【1】TKO
――木本が電話をしている。「タロやんのお母さんの葬式がもう始まる」と。電話の相手は木下。遅れているらしい。「黒いネクタイと数珠は持って来てくれるな」と確認。直後に木下現れる。
――木下、ズラをかぶって登場。服がおかしい。モーニングである。木本が服につっこむ。「黒い服はこれしか持ってない。おれ葬式初めてやから教えろ言うたやろ」と木下。
――以下、葬式を知らない木下の失敗に木本がツッコム形に終始する。
▼黒いネクタイなのに黒い蝶タイをもって来る!
▼数珠を聞きちがえて鈴をもって来る!
▼胸のハンカチが白!
――ここからは葬式の実地。何も分からない木下に「(俺のを)見てたら分かる」と木本が言うが、真後ろに立った木の下には聞こえなかったり、見えなかったりで木下が失敗=ボケを連発することになる!
▼親族への挨拶が変!「この度は、可哀そうに」
▼お焼香を知らなくて護摩を顔に塗る!
▼鐘を叩かないで、声で鐘の音を真似る!
▼合掌が忍者のドロンになっている!
▼最後に親族に「お疲れした」と業界口調で挨拶!
――「セーフ!」という木の下に「アウトじゃ!」と木本がツッコム。
〜もう、言いたいことがいっぱいある!不満ばっかりだ!個性はあるし、きっとお笑いの力もあるコンビだ。なのにネタが悪い!
■先ず、冒頭の木本のひとり台詞。実はこういう形で始まるコントは多い。先ず状況や人物の設定の説明台詞から入るのだ。絶対に必要な場合もあろうが、このTKOの場合は、殆ど要らない。
■元々、僕はこういう形のコントのスタートに疑問を持っている。例えば先に登場した人物が言う。「確か、あいつの言った公園がこのあたりに?お、これか。しかし、あいつとは高校以来やな。10年になるか。むっちゃヤンキーやったけど、今はどんな奴になってるんやろ?あ、来た!」。無論、これをネタフリに今はきっちり七・三分けの背広姿のあいつが現れるんだろうが、今や、そんなフリとボケは見破られるし、だいいち、そんな事を屋外で言う奴がいるかぁ?ま、コントだから言うんだろうけど。都合だけでひとり説明台詞を使うのはお笑いへの意識が低いと僕は看做す!
■その10年ぶりの再開と過去の人物像、そしてふたりの関係をコントの肉付けにして、コントを味わい深いモノにして欲しいのである!制限時間もあろうが安易な説明台詞はお笑いの吟味が足りないだけだと断ずる!
■で、TKOの場合。ふたり一緒に、「遅れるな言うたやろ。ほらもう始まってる」と木下が木本に怒られながら登場すればいいだけだ。
■そして、「黒いネクタイ」も「数珠」も何も前もって振っておかなくても何の支障もないネタだ。何故、わざわざ、電話で確認したのか解せない!
■更に、舞台上、木本はお焼香台の横で電話をしている。勿論、葬儀場の外で木下を待ちながらと言う設定であろうが、舞台の使い方としては下手だと言われても仕方がないところだ。計算不足である。
〜しかし、問題は更にここからだ!
■「挨拶ができない」・「焼香が出来ない」・「葬式を知らない」男。その古典落語のような手垢の付いた、「サンコン護摩を食べて御馳走さまと言う」キング・オブ・面白お焼香話より面白くない設定を何故選んだか!である。
■「これで行こう!これでキング・オブ・コントだ!」とふたりが思ったのか、それとも横にいる作家がそう叫んだのか!或いはマネージャーか!誰かが、この選択に疑問の余地を持ち得なかったのだろうか。残念だ!
〜更に!
■木本の焼香を見るが、後ろからなので見えない木下が失敗をしてしまうのだが!では、次に、ふたりが交代すると、木下の失敗は木本に見えるようで、そのボケにちゃんと突っ込めるのだ!別段、木本には見える特別な説明や段取りは無い。これは見ている人たちの100%近くがそう思ったに違いないがおかしい。不合理だ。御都合だ。僕は破綻しているとさえ思った。
〜以上、僕が指摘したことは、横にひとり作家、或いは演出家がいれば直ぐにも判断できるし、是正できることだ。彼らがどういう状況でネタを作っているかは情報不足だが、もし作家がいるなら、その作家は直ぐに変えた方がいい。お笑いが見えていないか、見えているとしても、それをふたりに伝える責任感を持っていない。
※僕は600点台かと思ったが、意外や、820点も出た!100人の芸人審査員は何処を評価したのだろうか?‘さらば青春の光’に聞いてみたい気がする。
【2】 ロッチ
――中岡が催眠術の先生(師匠)、コカドがその弟子になって半年の若者。場所は喫茶店。
――弟子が「人を犬にする催眠術教えてください」と言うが、「それは30年掛かったんや」と師匠は言い、「じゃ、人を眠らす催眠術でいいんで」と言うと、「あれも5年掛かった」と、なかなか教えてくれない。
――そんな安易な弟子に、「お前みたいな生意気な奴は、寝ろ!起きろ!」と師匠が指を鳴らして術を掛けると、あっという間に寝て、すぐさま目覚める弟子。
――簡単に寝かされたことに大いに感心しながら、更に興味を増した弟子が「どうやったんですか?こうやったんですか。寝ろ!」と指を鳴らすと、師匠が眠り始めたではないか!ところが、目を剥きながら寸でのところで術に掛かるのをのがれる師匠。
――弟子が「寝かけましたやん」と責めるが、「寝てない」と否定する師匠。ここからは、師匠と次々に技を覚える弟子との術の掛けあいである!
――弟子が店員さんを呼ぶ為に指を鳴らすとまた寝かける師匠。
――再び師匠が弟子に掛けるが、今度は耐えることを覚えてしまう弟子。
――その攻撃のやり合いの中、自分で指を鳴らして目覚めるという「師匠しか出来ない」高度な技を使って対抗する師匠だったが、弟子は意外と直ぐにその技を体得してしまう。
――更に、その技の応酬中、不覚にも自分で自分に指を鳴らして寝てしまう師匠だった。
――これ幸いと、「犬になれ」と弟子が指を鳴らすと、案外簡単に師匠は犬に。「やったぁ!30年かかるやつ出来た!」と喜ぶ弟子。
――最後は完全に師匠を寝かして勝利した弟子が、「こんなん無理かな」と思いついて「象になれ!」とやると、簡単に師匠は象に。そして、妙に弟子になついて来る。鬱陶しくなってそれを解こうと弟子が指を鳴らすが、それが解けない。困った弟子が「象の解き方教えてぇ!」と叫んで、暗転。
〜「コントは作り続ける」とコメントしていただけはある、オリジナリティに溢れた、新奇で、リズムもあり、稽古の量も偲ばれる卓越したコントである。
■何より、弟子の催眠術に耐える師匠・中岡の顔が笑える。容貌を生かしたコントだと言える。カメラはもっとアップしてあげればと思ったぐらいだ。
■弟子が、意外と簡単に技をマスターしてしまうのも、催眠術への我々の不信感や懐疑をくすぐってストーリーにリアリティを与えている。
■途中からの術の応酬は、稽古の程が見える出来だったが、そのやり合いの中でもっと舞台を大きく使うことができたのにと、少しだが残念に思った。これは敢えてである。
■ひとつ疑問を呈するなら、喫茶店という場所設定だ。そうしたのはネタの中で催眠術ではなくて指を鳴らすことが必要なために、店員を呼ぶ時に指を鳴らせばとその場所にしたのだろうが、それでは余りに狙いが見え透いていて、コントの出来としては一段下がってしまう。催眠術教室の先生と弟子というふたりなら、何とかその教室で頑張ってほしかった。だから、指を鳴らすのではなく、両手で柏手を打つように術を掛けることにすれば、蚊でも登場させればその場面は作れる。更に、そうすると片手の指パッチンより動きが大きくなり、全体に躍動感がでるというものだ。
〜とは言え、発想とそれを生かした手応えのあるコントでした。
※で、826点!もっと高いはずだ!
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さてさて、冒頭の日付は10月4日。今ここを書いているのは10月17日早暁。
その間、『コント衛門・2』に時間も体も取られて、たくらだ堂に手も心も及びませんでした。
しかし、お陰さまで『コント衛門・2』は終わりました。
曇りだった天気予報は前日8日から雨70%に代わり、当日、開場時間はしっかりと雨。それでも、予想を上回った130人近くのお客さんに来て頂けました。舞台上からも言わせていただきましたが、「足もとの悪い中を、本当にありがとうございました」
そして、小運と言えども運は幾らか残っていたようで、終演頃には雨が殆ど止み、お客さんの帰途は少しは楽だったのではと推察するのであります。
次回、『コント衛門・3』は来年4月を予定しております!!!
勿論、今回とは違う、予測を上回った、いや、当の僕らも予測できない面白(?)コントを用意してお待ちしております!是非、おいで下さいますよう、来年の事ながら、心よりお願いするものであります!
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と言う訳で、今回はここまで!
「KOC」は16本のコント中、まだ2本を消化したのみ。長くなりそうですが、頑張ります!!!!!

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