3月20日、火曜日午後7時、今年のR−1の決勝がスタートした。
僕はそれを、僕のマンションで嘗てのM−1決勝で恒例だったように、塾生たちと酒と肴でワイワイ言いながら、観戦した。
残念だがM−1程は盛り上がらなかったが、色々と思わせられた2時間ではあった。
3612人の中から数回の予選を勝ち抜いて来た12人が4人ずつ3ブロックに別れ、各ブロックの最高得点者3人が更に決勝戦を戦うというシステムだった。
司会は今年も雨上がり決死隊とフジテレビの女子アナ。
12人の顔ぶれは、ブロック毎に、
≪Aブロック≫
○友近
(吉本・38歳・12年)
○野生爆弾・川島
(吉本・36歳・17年)
○AMEMIYA
(SMA NEET・33歳・15年)
○COWCOW多田
(吉本・37歳・19年)
≪Bブロック≫
○サイクロンZ
(太田・34歳・15年)
○いなだなおき(アインシュタイン)
(吉本・27歳・7年)
○徳井義美(チュートリアル)
(吉本・36歳・14年)
○キャプテン渡辺
(SMA NEET・36歳・16年)
≪Cブロック≫
○千鳥・大悟
(吉本・32歳・12年)
○ヤナギブソン(ザ・プラン9)
(吉本・35歳・15年)
○ヒューマン中村
(吉本・28歳・9年)
○スギちゃん
(サン・38歳・14年)
※( )内は(所属事務所・年齢・芸歴)で、芸や芸人を見る時の参考にと示したが、芸歴に関してはNSC(吉本の芸人育成機関)以前からアマチュア的に活動していた人もおり、芸歴のスタートを何処にするかなど本人の認識とは違う可能性もあり、飽くまでも目安です。
そして、その12人のネタの審査は以下の7人の芸人、タレントが行った。
桂三枝
関根勤
天野ひろゆき
木村祐一
ラサール石井
板尾創路
高田純次
では、相も変わらず傲慢と愛に満ちた僕のR−1評である。
■友近■〜変幻自在のキャラ女王〜
・今夜は彼女の最近の得意ネタ、「芸能生活40年の演歌歌手・水谷千恵子」である。
・ひとりで喋って、ひとりで落として、自分で突っ込む。それに慣れたベテラン演歌歌手。そのネタのしんどさ(通用しなさ)を知ってか知らずか、お客の反応に影響されることなく、淡々と何年も使っている用意されたネタを繰りす、ややもすると侘しさの漂う演歌歌手である。
・彼女の中では余り濃いキャラクターではないという気がする。でも、彼女はスベリ気味のネタを委細構わずにやるベテラン演歌歌手、その拗ねたところと、いや違うのだ毎回必死なのだという相反する思いの間で開き直るしかない苦悩、或いは覚悟。そしてそこに生じる世離れ感、これを気に入っているのだと僕は推察する。だが、僕はもっと濃いものを期待していたのだ。
・ところが、登場してすぐこんなセリフが入った。「いやぁ、R−1ぐらんぷりということでね、二人じゃなくてひとりで闘って行く大会・・・」。つまり、水谷千恵子のある日のステージを演じるコントではなく、彼女がR−1に乗り込んで来たという設定なのだ。
・それをどう生かすのかと思っていたが、最後まで別段そういうことでの仕掛けや笑いは無かった。僕にすれば不可解。彼女にすれば意味がないことになっていた。何故、そうしたのか?
・構成は3段階。先ずは紹介がてらのひとりしゃべり。そして、JITTERIN‘JINNの『夏祭り』のWhiteberryバージョンを演歌で唄い、但し冒頭部分だけ。最後は「えちごぜん舞踊」
・面白かったのはラストの「えちごぜん舞踊」。本人の説明(台詞)によると、「えちごぜんのある物を使って踊る」というのだが、「えちごぜん」とは何か?それ自体が聞きとりにくかったから「えちごぜん」とは言っていないかもしれないのだが、そんな名前のモノは無い。恐らく、「越後(えちご)」と「御膳(ごぜん)」を合体させた彼女のオリジナルなのか?それはさておき、「えちごぜん」の中のあるもの、それは「焼き豆腐」なのだが、それを持ち、「エンディング ストーリー」をBGMに瞬時の踊り。最後は「焼き豆腐」を割って、「どうも有り難う御座いました。水谷千恵子でした!」で終わる。
・「焼き豆腐」はウケた。結果で言うのではあるが、ならば構成は、「夏祭り」→「しゃべり」→「焼き豆腐」が正解ではなかったか。いや、いっそ「焼き豆腐」がアタマかもしれない。そのくらい突拍子がなくても今の彼女なら客も審査員も受け入れてくれるはずだ。しかも、そんなものを冒頭に持ってきたら続きが「ひとりしゃべり」や「夏祭り」で済むはずがない。もっとバカな、もっと非常な友近ワールドが喚起されたのではと思うのだ。
・但し、トップバッターということを考えると大火傷の危険もないではない。だが、それこそ友近ではないのか!と、期待は弾むしかないのだ。今後も。
■野生爆弾・川島■〜予測不能のやんちゃ芸人〜
・冒頭のナレーションは聞きづらかったが、「万博の頃、ゲーム時代に生まれたそれゆけ大松くん」が登場。「皆々様が喜ぶために、今日は」「絵描き歌」をやるという。
・大松くんとは勿論、ニチボー貝塚女子バレーボール部監督であり、東洋の魔女を率いて1964の年東京オリンピックにおいて金メダルを獲得した「黙って俺についてこい!」大松博文である。
・さて「絵描き歌」スタート。♪階段4段ありまして〜後は可愛い滑り台〜下はちゃんと足付けて〜細胞分裂始まった〜胡麻、胡麻。胡麻、胡麻。〜あっという間に、交尾するドッグ!
・そしてパート2!♪階段2段ありまして〜後は可愛い滑り台〜よく見りゃ長い風船だ〜細胞分裂始まった〜ギザ、ギザ。胡麻、胡麻〜耳を書いたら、ハイ、シャチが犬を食べているぅ!
・そこからネタが変調する。思わせぶりな謎めいたBGMが聞こえ、本人も軍帽を被り、軍刀を持ち、彼自身のナレーションが入る。アブナイ!
「うはっはっはっはっは!奥さん、笑うと歯が随分黄色うございますな。ならばこちらをお使いください。これは舶来ものの歯磨きでございます。くすんだ歯が乳歯の如くまぁっ白になりますぞ。いえいえ、お代は結構。ボランティアでござんすよ。え?おたくは何者だって、気になりますか?私の正体。そう、あたしは!宇宙!宇宙!宇宙ぅ!(照明赤くなって、音楽盛り上がる!その中で仁王立ちの川島・・・もう一回)あたしは・・・宇宙」
・ネタ直前に流れたVTRの中で川島は言っていた「ゴールデンでネタやったことない」。元々ゴールデンに招かれるようなネタはやっていなかったのだから、川島の面目躍如たる3分10秒ではなかったろうか。
・しかし、これとても彼にしたら放送時間に合わせたネタではなかったかと斟酌するのだ。彼の完全面目躍如はこんなものではない。「絵描き歌」などもっての外だ。今回はせめてにも「交尾」を描いたが、本意ではあるまい。敢えて言うなら川島はテレビに譲歩してしまった。と、判ったような事を書いておく。それは取りも直さず、もっと過激な(安易な言い方だが)ネタを期待したのにということだ。
■AMEMIYA■〜シンガーソング芸人の叫び〜
・今日も、「街で色んな言葉を目にすると、つい歌が降りてきます」。今日は「赤ちゃんが乗っています」。その言葉の裏にある物語を謳う。
・その物語。「結婚10年目に出来た赤ちゃん〜ただ妊娠日が腑に落ちてないけど、赤ちゃんが乗っています!(※この後、要所要所でこのフレーズを繰り返す)〜妻はその日同窓会だった〜息子の誕生日には差出人不明のプレゼント〜妻の卒アルに息子に似たクラスメイトが〜けれど息子は健やかに成長しています。だが夫婦のどちらの家系ににもない天然パーマが息子に〜息子の授業参観に帽子とマスクの男性。息子が発言する度に彼のほほに涙〜声を掛けると逃げ出した彼、追い掛けて帽子を取ると天然パー(※ここから叫びは‘天パーが乗っています’に変わる)〜果てしなく続くこの問題。でも知ってるかい、宇宙から地球を見た時、国境線なんて無いんだよ!〜結婚して20年、僕たちに新しい家族が増えました。妻がまた同窓会に言った十月十日後に生まれました!赤ちゃんが乗っています!赤ちゃんが乗っています!」
・この「歌が降りてくる」バージョンが彼の売りのネタのようで、他には、
「東京ウォーカーに載りました」※
「冷やし中華始めました」※
「この売り場から一等が出ました」
「東大合格者3名出ました」
「サッカー中継放映中」
「バンドメンバー募集中」
「カバの赤ちゃんが生まれました」
などがあるらしい。既に前回のR−1で披露したネタ(※印)もあるが、それ以来では今日のネタが一番ということであろうか。僕は寡聞にも不勉強でその他のネタを知らないが、今日のネタで言うなら、状況説明ばかりで世界の作り方=視点が冷静で、(客が)情況に引き込まれる度合いが小さいのではと案じる。登場人物の声を聞かす。登場人物になって物を言う、歌うという方法は如何だろうかと提案する次第だ。勿論他のネタではそれをやっていて、このネタはこれが良いのだと試行錯誤の結果であるならその限りではないが。折角の世界感、視点を生かすなら写実をもっと誇張したらと言うお節介だ。
・同時に思うのは、物語が想定内であることだ。今回、一瞬「国境」の話が出て来て、僕はおっと思ったのだが、そこから大胆な展開に行くこともなく、薬味で終わった感だ。荒唐無稽に飛ばせばいいという訳ではないが、予測を超えた人間ドラマを期待したい。
・街には色んな言葉が溢れている。
「女性車両」「関係者以外立ち入り禁止」「老人ホーム建設反対」「この犬知りませんか」「田村家葬儀場⇒」「25日に帰ってきます」「本日の交通死亡者2名」「大阪拘置所正門」「平日終日1000円」「右折禁止」「STOP」・・・
如何にもドラマがありそうなモノと全くそうでないモノ。そして中間物。どこから何を抽出するか、面白い作業に違いない!
■COWCOW多田■〜ほほえみギャグマシーン〜
・「五十音ボックス」というネタだ。五十音がひとつずつ書かれたボールの入った箱から一個ずつランダムにボールを取り出し、その「音」で始まるギャグ(?)を言っていくネタである。
・持ち時間4分の間に「ま、あ、り、ね、ふ、こ、れ、な、て、も、ら、か、い、む、そ、た、せ、に、ぬ、へ、き」と21個を消化。だが、それだけだった。
・アドリブではない。覚えて来たネタを発表するだけだ。勿論それは各音で厳選されたネタ
のはずだ。だがそれだけだ。
・覚えて来たものを発表するのは他の出場者も同じだ。だが、そこには人物がいたり、物語があったりする。どんな世界を構築し、それが何を表し、何が見ている人に届くかだ。「五十音ボックス」にはそれがない。
・勿論それが狙いではあろう。連関の無い、乾いたとでもいうべき羅列の世界。だが僕はその上で自己表現を願う。が、それは無かった!
・このネタが一番受けるのはどんなところだろう。どんなネタでも受けるといわれる刑務所ではどうだろう?八方ふさがりの民主党のお座敷ではどうだろう?或いは何処かの新興宗教?精神病院?ガン病棟?軍隊?右翼?絵が浮かばない。ただこれは言えるだろう、テレビや漫画や歌をよく見る人、よく聞く人には受けるだろうと。それらをそこにあるモノとして問題視しない人たちにはうけるだろうと。閉塞感!
さて、これでAブロックは終わった。
審査方法は各審査員が3票を持ち、それを誰に入れるかだ。1票ずつ3人に入れてもいいし、3票をひとりに入れてもいい。果たして!
【友近】 4票(関根2・天野・石井・板尾)
【川島】 1票(三枝)
【AM】 2票(木村・高田)
【多田】13票(三枝2・関根・天野2・木村2・
石井2・板尾2・高田2)
ノーコメントで・・・・
続きはなるべく早く、急いで、します。

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