昨日、夫が病院に泊まり、私は肉類はほとんど食べないので、牛肉のおかずが残っていた。
レンジで温めるというので、お酒を振りかけて・・と言ったら、
「飲もうかな?」
と言う。
「疲れてるからやめたら?」
と止める。
コップのビール一杯で真っ赤になる人なのだ。
「飲みたい」
そう言う。
私「ちょこっとやで。おちょこにちょこっと。私、コップ酒したけど」
夫「キッチンドリンカーしたんか。大酒飲みの家系やからなぁ」
父は酒一升飲んでも酔わない人で、
「もったいないから飲ますな」
そう言われた人だ。
お酒が好きだったわけではない。
母は、弱いくせに深酒して、酒に飲まれる人だった。
若い人に担がれて帰って来たことがある。
たびたびだったし、失禁して迷惑をかけた。
家の中でも酔いつぶれて、吐いていた。
よく父に怒られていた。
兄は毎日ほどお酒を飲む。
女きょうだいは、お酒が好きなわけではないがそこそこ飲む。
母の醜態を見ているので、酔いつぶれるまで飲むことはない。
私は一人暮らししていたころは、一晩でウイスキーのボトル三分の二、ストレートで空けたこともある。
飲まなければやってられなかったわけではなく、「大人」「自立の悦び」みたいな愉しみで飲んでいたように思う。
しかも、安月給で一人暮らし、実家への仕送りもあったので、お酒を飲んでいられる経済的余裕もなかった。
(仕送りは別にしなくてもよかったのだが、自分の意地でしていた)
それで、お酒はなかったらないでどうということはないし、むしろお酒に飲まれて醜態をさらすことへの恐怖のほうが強い。
母の末路は糖尿病で痴呆になり、最後は寝たきりになった。
兄は母のことを悪くは言わない。
ストレスがあったからお酒を飲み、ストレスがあったから糖尿病になったと言う。
ストレスがあったから。
そのストレスの元は私らしい。
一番上の姉は、自分が子どもの頃から枕元に水の入ったやかんが置いてあったから、若いときから糖尿病だったかも、と言う。
まだ私は産まれていない。
兄が私をそう言うのも、姉が私をかばうのも、どちらも真実だと思う。
親と子、葛藤の多い、不幸な出会い方だったというふうに今は思えるから、何だかんだときょうだいには言わせておける。
私も図太くなったものだ。
そうして、母の生き方のほとんどを私は取り込まなかった。
お酒の飲み方も。
夫に大酒飲みの家系と言われても、私自身はちっとも恥ずかしくない。
むしろ、飲めない人のやっかみくらいに思える。
夫は、私に「おちょこにちょこっと」と言われて、ぐい飲みにお酒を注いだ。
おちょこでなく、コップ酒でもなく。
楽しい人だ。

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