「女の人はよくしゃべる」
送別会から帰った夫が言いました。
「ほんとや。今日なぁ・・」
以下、下へ。
大阪からの帰り、とても疲れていて
大回りだけど確実に座れる電車を選んで乗りました。
途中、どどどっと人が乗り込んでくる駅で、息を切らした人が私の横に座りました。
座るなり、
「今の若い人、どう思います?人前で手をつないでベタベタ」
と、私に話しかけてきました。
声をかけられたので横を見ると、おばさんの横顔が間近にありました。
目に入ったのは、白髪まじりのストレートのおかっぱと、赤い紅を引いた口と、鼻の下に生えた白いまばらなヒゲでした。
見ず知らずの人がいきなり話しかけてきたのと紅の赤さに、私は警戒しました。
けれども、無視するわけにもいかず、言葉を探しました。
「うらやましいですね〜」と、私。
「うらやましいなんてことじゃなくて。
人が一列に並んでるのに、二人が手をつないで。人が動き出してもさっさと動かへん」と、おばさん。
「場合によりますよね〜。まわりが目に入らないのでしょう」と、私。
場合による、という言葉で勢いづいたおばさんは、それからしゃべるしゃべる。
私は「ふんふん」のみ。
若い母親が電車の中で子どもを注意しないこと。
同じアパートに住む若者が大音量で音楽を流すので迷惑なこと。
それを注意された若者が逆ギレして、そのうち引っ越してしまったこと。
仕事場の営業の若い男が、事務の女に理不尽な文句をつけること。
若い人の礼儀がなってないこと。
おばさんは、それらを息荒くまくしたてる。
若い人への憤懣を聴きながら、おばさんが腹立たしく感じる若い人の代表が、仕事場の若い男ということがわかってきた。
私はそこで初めて質問した。
「その人はいくつくらいですか?」
「27歳」
「まだ子どもを引きずっているんですね〜。大人になりきれてない人が増えてるようで。親たちはどうしてたんでしょうね〜」
と、若者の親の世代に視点をそらせてみる。
おばさんはそこで親の自分を意識する。
「息子がね・・・。もう少し働くつもり」
などと、私的な事を初対面の相手なのに話し出す。
そしてだんだん息も気持ちも落ち着いてきた様子。。。
さらにうまい具合におばさんの降りる駅が近づいたらしい。
「見ず知らずのあんたに、こんなにいっぱい話して」と、おばさん。
「ストレスたまりますよね〜」と、私。
「だあっはっはっー」と豪快に笑うおばさん。
「お元気で」と、見送る私。
以上、私から夫に話した内容です。
よくしゃべるおばさんの話でしたが、私もよくしゃべる女になってました。

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