テレビのメイキング的な番組を観てこれは面白いに違いないと思い、
まんまとハマりました(笑)。
ジャズになどまったく縁のない女子高生が、
ひょんなことからビッグバンドを結成して、晴れ舞台に立ってしまうという。
ラストも絵に描いたようなサクセス・ストーリーになるわけだが(ネタバレ?)、
バンド作成の顛末や楽器調達のどんでん返しが面白い。
二時間弱というなかで彼女(彼)らの成長を描くわけだが、
汗や涙よりも、時に滑って転んで寒くなるようなギャグを優先、
あくまでもコミカルにテンポ良く仕上げてあるのが良かった。
努力も楽しみながら、(スウィングしながら)やらないことには意味がない。
女優(俳優ひとり)さんたちは三ヶ月の合宿練習で、
吹き替えなしの演奏、サントラ作成までできるレベルにまでなったそうだ。
スクリーンを飛び出して、各地でライヴ活動、果ては紅白出場の野望も抱いているとか。
学生たちを演じる若手(よくぞ集めた!)も脇を固めるベテラン陣もハズレのない人選。
また、竹中直人か〜と思いきや、いつもながらお見事。
音楽学校教師に谷啓が出ているのも涙物です。
一番地味なメガネっ子のメンバーが街の信号機で鳴る「故郷の空」
(ドリフで有名な誰かさんと誰かさんが麦畑〜♪ってヤツの原曲)
を指して「これってジャズ?」という場面からリズムに目覚めるシーンが象徴的。
裏拍でリズムをとる事でスウィングすることに目覚め、世界が広がってゆく。
ジャズに限らずリズムに乗れるか乗れないかでまるで楽しさが違ってくる。
渋さよりもノリが第一。「スウィングしなけりゃ意味がない」のだ。
おじさん好みの、もはや絶滅危惧種に近いとも思われる黒髪女子高生が主役で、
あくまでもジャズ映画を楽しむんだ!というカムフラージュ(?)で、
気軽に観にいけるというのも大ヒットの重要な要素であろう。
日経からCD&ピンナップつきの関連本も出ているくらいだし(笑)。
矢口監督は僕と同世代であるし、アートワーク、王道のキャラクター設定、
心憎いほどツボをついてくる。
基本的に悪人が出てこないのもポイントで、
気弱なヤンキー風青年が携帯灰皿を持っていたり、
軟弱なフォーク・デュオだったりするところに細やかさを感じた。
久しぶりにお茶の間で安心して観られる日本映画を観たのだが(笑)、
女子高生がキャーキャー騒ぐ健康的な雰囲気のなかで、
ドキリとさせるシーンが挿入されている(個人的にですが・・・)。
男の描くファンタジー映画としても機能する。
いやあ映画って、本当にいいですね(笑)。
選曲は「A列車で行こう」や「シング・シング・シング」など、
誰でも十二回は聞いたことあるであろう、スタンダード・ナンバーが中心。
これらは実際にスウィングガールズが演奏している。
その他のオリジナル曲はミッキー吉野らが手がけている。
なぜか山でイノシシに追われるシーンで流れるのはルイ・アームストロングの「この素晴らしき世界」で、
かなりベタなんだけど、名曲は名曲。もう何でも許せる。
金曜の夜、仕事帰りに立ち寄った札幌駅JRタワーの映画館の大スクリーンは最高。
客は十数人(本当に大ヒット?)の貸切状態で落ち着いて見られた。
こんなシチュエーションも非常にラッキー(これは大事)。
ヤクザ映画は見たあと、肩で風切って凄んで歩く(笑)というけど、
雨の中の帰り道はスウィングしながら、すがすがしい気分だった。

0