日曜日。天気は良いけど、昼間もかなり冷え込んでいる。雪まつり最終日という事で、甘酒などを飲みながら大通り会場を一巡。雪まつりの雰囲気は嫌いではない。カレー屋「リトルスプーン」で遅い昼食をとってから、ライブ・バー「くう」へ向かった。すでに十数人のお客が寒空の下、ビルの前で開場を待っていた。
向こうから黒い革ジャン着た山口氏が歩いてきた。コンビニで買い物でもしてきたのだろうか。顔見知りのファンとあいさつを交わしてお店に入っていった。ライヴハウスならではの光景。いつかのベッシーホールでの憂歌団、ススキノの泉谷しげるもこんな感じだった。
細長いこじんまりとお店に椅子はほとんど埋まり、ちょうど良い感じ客の入り。
私は運良くステージまん前の椅子に座ることが出来た。
そして、目の前を通り過ぎて山口洋登場。ステージを観る客席が横に長くて、変な感じだといいながら、一本だけのエレアコを肩にかけ、ハーモニカをホルダーに装着。
ツアーは昨夜の苫小牧からスタート、初日から異常にテンションが高かったようで、今夜は店の雰囲気(普段はジャズのライヴも多い)から大人っぽくやりたいと言って笑わせていた。オープニングのイントロは指先巧みな雰囲気満点のフレーズで始まったのだが、歌に入る前のハーモニカの第一声、キーが思いっきり違って・・・やむなく中断(笑)。どっと会場が湧くなか、そそくさとハープを換える。これは、ネタなのか?
気をとり直して、ハープのイントロから。そして、あの声だ。底から響きわたる、独特の節回しのヴォーカル。イントロの笑いでリラックスしたのが良いのか、肩の力が抜け、自然に彼の世界に誘われていった。
ヒートウェイヴに関しては私は熱心なファンではない(悪いけど)。アルバムとシングル数枚を聴いているだけなので、今夜のライヴの曲で知っているのは3曲だけだった。
今回のライヴはひとり弾き語りの自由なツアーで、全国二十数か所を周るのだけど、一ヶ所として同じセットリストにはしないという。曲が終わるたびに「なんか聴きたい曲ない?」、「静かなのと、激しいのどっちがいい?」というやりとりが交わされる。悪ガキ風の風貌ながら、素朴でシャイな面を持っているのがこの人の魅力のひとつだろう。ステージの中で少しづつ、トークがこなれていくのが面白い。ファンもおとなしい人ばかりなのだが。
ある女性客がとおりの悪い小さな声で叫んだ。
「どこから声出しているの?」と無視したようにギターのチューニングして、山口が歌いだしたのが、ほかでもなくこの女性のリクエスト曲「33(サーティースリー)」だった。この男らしい、意地悪で暖かいというか、シャイでクールな計らい。歌詞カードを用意していないので、間奏を鳴らしながら思い出し、客の手拍子と歓声に支えられながらまた歌いだすという楽しい雰囲気に。そして、この「33」は私の好きな歌でもあった。30代の微妙な時期を歌ったナンバー。
青年とオヤジの谷間 抗いながら歩いてる 彼は「33」
山口の書く詞はひとりの男が悩みながら生きてゆくというような個に訴えかけていく歌が多いようだ。この日はスマップの例のヒット曲を引き合いに出しながら、「あんな歌は俺書けないし、聴きたくもない」と言っていた(私も同じだ)。「暗い曲ばかりですみません」といいながら。
ソロ・ツアーは、新しいニュー・アルバム製作プロジェクトの宣伝も兼ねている。事前にCD代を納めてもらい、レコーディング費用に当てるシステムで、彼らの盟友でもあるザ・グルーヴァーズが昨年同じような方法で素晴らしいアルバムを届けてくれた。
アルバムに納める予定の未完成ナンバーも、このツアーで歌いながら詰めていくという事で後半はその日の気分で決めた?仮タイトルがついた数曲が披露された。
先日のブログにも書いた、「ポッドキャスティング」での佐野元春兄貴との対談の話もしていた。やはりあの、「元春口調」の物まねを交えて笑わせた。
言葉が一つ一つ耳に届く弾き語りライヴだったが、ラストはやはりパンクを通ってきた男のワイルドなギター掻き毟りが炸裂した。ジョー・ストラマーに会って話した体験から生まれたナンバーもやってくれた。
一本だけ抱えてきた小ぶりのエレアコを低めに構えながら、フォーキーな指弾きの甘いトーン、トキッキーなブルース&ロックンロールのリック、弦が切れそうな(切れなかったけど)パンクなカッティングなど多彩のプレイ。オープン・チューニングの響きも、魅力的だった。
個人的勝手な印象では、ワン・アンド・オンリーなミュージシャンというのが強かったが、長いキャリアの過程でギターと一体化した表現力は計り知れないものを感じた。
途中、トイレタイム?を挟んで二時間半ちょいのステージが終わった。来る途中、ヘッドフォンで聴いてきたアルバム「月に吠える」(1998)の盤にサインをもらって、店を出た。あのあと残った人たちを囲んで、またひと盛り上がりあったのかも知れないが。
■ライヴハウス恒例?サイン会&一瞬トーク
コ「お疲れ様でした!」
山「どうもありがとう」(元春アニキ風?)
コ「去年のライジングサン、最高でした!」
山「えー、雨がひどかったしかおぼえてないなあ・・・」
コ「また、夏来てください」
山「うぃーっス!」
まったく、イメージどおりのクールさだったぜ(笑)。
※文中の発言等は、大体の記憶で正確ではありません。
毎度の事ですが、悪しからず。
山口洋ソロツアー “on the road, again”
http://www.five-d.co.jp/heatwave/ontheroadagain/

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