ジャパニーズ・ロックンロールの巨星が夜空へ旅立って、
呆然とした日々が続いている。
清志郎が旅立ったのをきいた夜。
その日の昼間にタワーレコードで手に入れたアルバムは、
エレファントカシマシの新しいアルバム「昇れる太陽」だった。
二週間後の日曜日は彼らのツアーの札幌公演。
仕事はオフ。なにか強い運命のようなものを感じて出掛けた。

ススキノを横切って、久しぶりのZeppだぜ。
先日の武道館は即日完売だったというが、
札幌はまあまあの入り。
このホールは後ろの方が一段高くなったフロアになっていて、
私はここで会場全体を見ながらのライヴ観戦。
オープニングはなんと宮本がエレキ・ギターをボトルネックで弾きながら歌う。
出来立ての最新アルバムの一曲目もこのナンバーで、
宮本が自らブルージーなスライド・ギターを弾いている。
タイトルは「Sky is Blue」。
偉大なブルースマン、エルモア・ジェイムスを連想させずにいられない。
これがかなりかっこよい、ブルース・ロック。
相変わらずギター、ロックへのこだわりが感じられてほっとする。
宮本の第一声を聴いた瞬間からもう胸いっぱいの愛。
すかさず2曲目は、ファースト・アルバムのあの曲。
これは、盛り上がらずにはいられない。
ツアー中なので、詳しいセット・リストは書かない。
(メモもしていないけど・・・)
あの声、シャウトは健在。
私と同い年で、40半ばに近づこうというのに体型も風貌も変わっていない。
最近はCHABOと同じステージに立ってRCのカバーも披露したというので、
何かあるかなと思っていたが、宮本からは最後まで何のコメントもなかった。
デビュー前はRCのコピーをやっていたという彼らだから、
いろいろな思いはきっとあるだろう。
しかし今夜も完全オリジナル、宮本浩次ワールドのステージ。
曲の合い間に宮本のトークが挟まれるのだが、
相変わらず頭で整理されておらずしゃべりっぱなしの支離滅裂な感じ。
たわいのない話も長々と熱く語る。それが宮本。
話がこんがらがるごとに爆笑し、励まされるというか、癒されるというか、
なんだかわからないが実によい気分になってくる。
ずっと一緒の同級生四人に加えて、
いまはキーボードとギターのサポート・メンバーが参加している。
この二人は札幌出身。
バンドの音、表現力はとんでもない域に達している。
大好きなツェッペリンの香りも充満している。
宮本はトークごとに「あふれる熱い涙」という言葉を何度も使っていた。
RCサクセションの曲にも同じタイトルがあったなと思っていたら、
アンコールで演奏されたのは「今宵の月のように」。
そうだ、このエレカシの大ヒット曲の歌詞のフレーズだった。
でも、ほんとうに夜空に届くかのようなシャウトだったな。
アンコールでは、彼らのハードナンバーのなかでもとびきり過激な、
「ガストロンジャー」も飛び出して盛り上げてくれた。
映画やCMなどのタイアップ曲も増え、
とうとう「桜」をテーマにした歌まで作ってしまった。
どれも歌謡シーンにも耐えうるメロディの名曲揃いであるが、
それと同時にロックの荒唐無稽さも常に持ち続けている。
昔のアングラ色はかなり薄まってしまったが、
こんなにドラマチックなロックンロール道を歩んでいるバンドは、
そういないのではないか。
月並みな言い方だけど、彼らと同じ時代を生きていることに感動を覚える。
これからのロックンロールの未来がいっぱい詰まったライヴだった。
ぽっかりと空いたマイ・ロックンロールの真ん中を埋めてくれた、
彼らに感謝!

雨上がりの夜空(小雨少々)の下で

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