札幌駅のシネコンで、
小林政広監督、仲代達矢主演の「春との旅」をみた。
仲代演じるのは元ニシン漁師だった老人忠男。
いまは訳あって孫娘の春と二人だけで暮らしている。
春が職を失ったのをきっかけに、
忠男は春をつれて兄弟を訪ねる旅に出る。
二人の住む北海道増毛町から宮城県へ。
そして、再び北海道苫小牧、静内へ。
ゆったりとした流れのロードムービーで、
いつもなら眠気が襲ってきそうだけど、
二時間以上あきさせないほどの力が入っていた。
忠男の男兄弟、大滝秀治、柄本明、姉の淡島千景との、
やりとりのシーンが味わい深かった。
田中裕子は忠男の弟の内縁の妻で、
ドラマ「Mother」の母親に通じるような寂しさをたたえた女性を好演。
忠男はいまは足を悪くして孫娘に世話になっているが、
「女をはべらす」ほどの勢いだった若い頃の自己中心さが抜けきれず、
兄弟たちには冷たい目(本当はそうでもないが)であしらわれている。
春もその「被害者」の一人だが、
忠男のわがままにいらだちながらも面倒を見てしまう。
その絆は、この旅によってさらに深まってゆく。
春を演じる徳永えりはおかっぱ頭、
リュックサックに手作り風の赤い上着を着た冴えない19歳の少女。
ドタドタと大股で早歩きする姿がなんともいえない。
その佇まいに彼女のこれまでの生活が滲み出ているよう。
忠男のいまの姿は自業自得ともいえるが、
春の未来はいったい・・・。
ラストでいっきにその答えらしいものが噴出する。
思わず、うなってしまった。


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