帰省ドライヴの行き帰りにカーステレオで聴いたアルバム。

泉谷しげる/家族(1976)
アコギ一本で歌う、フォーク歌手のイメージもいまだ強い
(と思われる)泉谷しげるだが、
アコースティックなスタジオ盤は意外に少ない。
だからというわけではないけど、
言葉と声が直接突き刺さってくるような裸の歌が詰まっている。
一曲目の「野良犬」はいまでもステージの
アコースティック・セットの定番。
昨年唯一の北海道でのライヴ(岩見沢フォークジャンボリー)
のしょっぱなでも歌っていた。
いまのイズミヤは吠えまくりだが、
このスタジオ盤では、ぼそっとつぶやくように歌っている。
薄汚れた野良犬が街を徘徊し、
庶民の生活を垣間見るような風景。
いま歌詞を読むとわたしの勘違いもあるかも知れないけど、
アルバム全体にもそんな人間の素、
素朴な生活から生まれるドラマを感じる。
有山淳司のギター、中西康晴のピアノも絶妙にマッチ。
でも、「超人」という曲の詞はファンタジー的な世界かな。
ザクザクしたアコギのカッティング、
デモ・テープのようなラフさもかっこいい。
のちの『RealTime』(1984)というライヴ盤では、
きらびやかなキーボードのバンド・サウンドでよみがえっていた。
「少年A」は実際に取材を行って作ったというドキュメンタリー作品。
恋人たちの行く末を描いた「彼氏と彼女」もリアルな物語。
ほかにも女性寄りの視点、夜の男と女、
伴奏なしの独唱など、
ほかではあまり聴けないアプローチ、スタイルも。
『家族』というタイトルにどこか甘美なイメージを抱いてしまうが、
そこは泉谷しげるだから。推して知るべしか?
シンプルさゆえに長く味わえるアルバム。
現在廃盤らしいので、もし手にする機会があったら、
それは運命だ!(笑)と思ってぜひ聴いていただきたい。

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