この冬、一番面白かったドラマ。
原作・久住昌之、作画・谷口ジローによるコミックの実写化。

「孤独のグルメ」
主人公は井之頭五郎という独身の中年男性。
ひとりで輸入雑貨の貿易商をやっている。
彼のひそかな楽しみが仕事で訪れた街で、
ふらりと立ち寄る食べ物屋さん。
どこへ入ろうか、そこで何を食べようか。
限られた自由な時間の中で、
いつも迷っている。
同じようなコミック原作の深夜ドラマに「深夜食堂」があるが、
「孤独のグルメ」の面白いところは、
主人公が酒が飲めないという設定にある。
あくまでも「食べること」だけにこだわる。
居酒屋のような店に行っても、
ご飯がほしくなる。
コミックも面白かったが、
マンガとはちょっと違った風貌の五郎演じる、
松重豊氏の淡々とした演技がいい。
店を探して街をうろうろする姿。
メニューに迷ってやっと決めたあとに、
常連客が注文したものと同じものを注文してしまう、
優柔不断なところが笑える。
五郎の「過去」や仕事の苦悩が語れることもあるが、
あくまでも、ひとりで食べることの自由さを引き立てる
アイテムでしかないのだ。ここでは。
そして、原作者の久住氏が自ら手掛けた、
アコースティックでジャジーな音楽がいい。
メニューが出された時の期待感、
口にしてうまいとわかった時のご飯の進みっぷりなど、
五郎の心の揺らぎを忠実(笑)に表現。
毎回、同じ曲が使われるのがミソ。
料理の撮り方もじつにうまくて、
これが深夜番組というのは一種の拷問だと思う。
Twitterなどでもそんな「叫び」がちらほら。
脇役も味のある役者、渋いところが揃っていて、
これは実際に観てのお楽しみなんだろう。
個人的には、第11話の美保純さんが素晴らしかった(笑)。
番組の最後には原作者の久住氏が実際に物語のモデルになったお店
(ロケ地にもなっている)へ出かけてゆくコーナーが設けられている。
しっかりビールや日本酒などを飲みながら、
看板メニューを食べ、お店の人との語らい。
ここで私を含めた酒飲みの視聴者も、
大満足の番組ということで落ち着くわけだ(笑)。
原作・久住昌之氏は弟の泉晴紀氏とのコンビで「泉昌之」を名乗っている。
私が愛読している「ダンドリくん」、「新さん」の主人公などは、
井之頭五郎の流れをくむ孤高のこだわり男なんじゃないかな。
久住氏の作品との最初のお付き合いは高校時代にさかのぼる。
あの頃読んでいた音楽雑誌「ジャズ・ライフ」に四コマを連載されていた。
ギタリストの男性が主人公ですごく面白かった。
作画・谷口ジロー氏は「犬を飼う」という作品が感動作だった。
この「孤独のグルメ」を観ている(読んでいる)と、
東京へ行ったときにひとりで食堂を探して彷徨ったことを思い出す。
また、東京へ遊びに行きたいな。

孤独のグルメ DVD-BOX

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